あやかし図書館の管理人

時は同じく。
 薄暗い裏路地を一人の少年が歩いていた。
 茶髪の髪に全身黒一色の服装。黒で統一された服のためか,その髪は特別明るく見えまるで一つの光源のようだった。
 少年は時折舌打ちをしながら,薄暗い裏路地を早足で歩いていく。
 その腰には立派な日本刀が一振り。怪しく,けれど静かなそれは彼を普通から変えている原因のようでもあった。
 彼の太陽のように輝く黄金色の瞳は,月のように冷たく光っている。

 「祓い屋の人手不足がこんなにも深刻になってるなんて思ってもなかったな」

 少年は―――俺は憎らしげにそう呟くと最近,無駄に眩しいと感じる星空を見上げた。
 暗闇に光る星達は,やっぱり俺には眩しすぎた。

 「図書館の管理人」

 顔もどこにいるかも知らない相手を憎く思いながら,俺は顔を歪ませる。
 暗闇の中そっと息を吐くと,再び歩き始めた。
 そうして何度思い出したかわからない任務内容をもう一度思い出すのだ。

 (数ヶ月前から始まった祓い屋の行方不明事件。原因は――図書館の管理人の仕業と思われる。見つけ次第,拘束し本家へと連れて帰る)

 図書館の管理人などと呼ばれるあやかしを,実際に俺は見たことはない。しかし祓い屋として任務が与えられたからには遂行するしかない。
 顔も本当の名前も知らない相手を,この世から消し去る行為はいつまでたっても慣れはしない。
 しかし俺は祓い屋である限りあやかし達を葬っていくしかないのだ。
 そうしなければ,多少の事は飲み込んでいかなければ,この世界は生きていけない。
 あいつも守ってやれない。
 俺は耳についたピアスに触れる。これに触れると俺は祓い屋になれる。
 先輩達のような血も涙もない祓い屋に。

 「待ってろよ」

 何も受け入れようとはしない暗闇の中,俺はそっとそう呟いた。