水野から告白を受けたのは春だったが、季節は疾うに夏になっていた。依田は未だ水野の告白に返事を返してはいなかった。
水野はクラスに特別馴染むこともなく、かといって周囲を遠ざけることもなく適度な距離感を保っているようだった。
二年次から理系の授業に特化していたにもかかわらず、悔しいことに水野は文系の授業も難なくこなし、優秀な成績を収めていた。いうならば依田よりも彼は成績優秀な生徒だった。
夏休み。あまりの暑さに蝉の鳴き声さえ乏しい。
依田はクーラーのよく効いた予備校の教室にいた。
予備校の夏期講習なしには依田は志望校に合格することは難しい。母親からの脅しを聞いて依田は熱心に夏期講習に通っていた。
このままではただでさえ低い志望校のレベルを更に下げなくてはならなくなる。夏休み前にあった試験の結果を見て依田もさすがに今のままではやばいと自覚していた。
今日の講習は朝から夕方まで。夏期講習が終わり外に出ると外はすっかり夕焼け色に染まっていたがそれでも空気は蒸し暑い。外と中のあまりの温度差に汗が吹き出す。
「依田!」
予備校を出て直ぐ、依田は声を掛けられた。
「……水野? なんでお前がここに」
予備校の出入口の自動ドアの真ん前。ちょうど木陰があるガードレール。そこに腰掛けた水野が依田に向かって手を振っていた。その手には携帯扇風機が握られていて水野の短い髪を僅かに揺らしていたが、それでも水野は酷く汗を掻いていた。
依田は水野の元へと駆け寄ると木陰に入る。いくら木陰に入っても周囲の蒸し暑い空気が変わることはない。
「夏期講習、依田が教室にいるのが見えたから終わるの待ってた」
「お前も講習受けてたっけ?」
依田は必死になって夏期講習のクラスを思い出す。しかしそこに水野の姿があった記憶はない。
「依田と同じクラスじゃないよ。俺は理系特進だから」
「は!?」
水野の言葉に依田は酷く驚く。
学校では文系の授業を受けているというのに水野は予備校では変わらず理系の授業を受けているという。
「受験勉強をするのはここで十分だから。今さら学校で理系の授業を受けても意味はないし」
「頭のいい奴の考えることはやっぱりわからん……」
眉間にしわを寄せ、厳しい表情でそう言った依田を水野は笑う。
「途中コンビニにでも寄ってアイス買って帰ろう」
「賛成」
そう言うと二人は並んで帰路に着いた。
水野はクラスに特別馴染むこともなく、かといって周囲を遠ざけることもなく適度な距離感を保っているようだった。
二年次から理系の授業に特化していたにもかかわらず、悔しいことに水野は文系の授業も難なくこなし、優秀な成績を収めていた。いうならば依田よりも彼は成績優秀な生徒だった。
夏休み。あまりの暑さに蝉の鳴き声さえ乏しい。
依田はクーラーのよく効いた予備校の教室にいた。
予備校の夏期講習なしには依田は志望校に合格することは難しい。母親からの脅しを聞いて依田は熱心に夏期講習に通っていた。
このままではただでさえ低い志望校のレベルを更に下げなくてはならなくなる。夏休み前にあった試験の結果を見て依田もさすがに今のままではやばいと自覚していた。
今日の講習は朝から夕方まで。夏期講習が終わり外に出ると外はすっかり夕焼け色に染まっていたがそれでも空気は蒸し暑い。外と中のあまりの温度差に汗が吹き出す。
「依田!」
予備校を出て直ぐ、依田は声を掛けられた。
「……水野? なんでお前がここに」
予備校の出入口の自動ドアの真ん前。ちょうど木陰があるガードレール。そこに腰掛けた水野が依田に向かって手を振っていた。その手には携帯扇風機が握られていて水野の短い髪を僅かに揺らしていたが、それでも水野は酷く汗を掻いていた。
依田は水野の元へと駆け寄ると木陰に入る。いくら木陰に入っても周囲の蒸し暑い空気が変わることはない。
「夏期講習、依田が教室にいるのが見えたから終わるの待ってた」
「お前も講習受けてたっけ?」
依田は必死になって夏期講習のクラスを思い出す。しかしそこに水野の姿があった記憶はない。
「依田と同じクラスじゃないよ。俺は理系特進だから」
「は!?」
水野の言葉に依田は酷く驚く。
学校では文系の授業を受けているというのに水野は予備校では変わらず理系の授業を受けているという。
「受験勉強をするのはここで十分だから。今さら学校で理系の授業を受けても意味はないし」
「頭のいい奴の考えることはやっぱりわからん……」
眉間にしわを寄せ、厳しい表情でそう言った依田を水野は笑う。
「途中コンビニにでも寄ってアイス買って帰ろう」
「賛成」
そう言うと二人は並んで帰路に着いた。



