水野雅紀。
その名前は文系クラスで中の下の成績を貫いている依田でさえも知っていた。
依田碧は文系クラスにおいては顔が広い方だ。生まれつきの茶髪のせいで一見軽薄な男に見られがちだが、バレーボール部の主将を務める根は真面目な男で、交友関係も広い。そのお陰もあって文系クラスの男子生徒の顔と名前は網羅しているつもりだった。しかし理系クラスに関しては別だ。依田が理系クラスで名前を知っているのは水野だけだった。
ざわざわと落ち着きのない文系クラスの一番後ろ、窓際の席。そこに水野は座っていた。短い黒髪に少し日に焼けた肌。背筋をピンと伸ばした彼はいかにも優等生という姿をしていた。元サッカー部の彼の長い脚は狭い机の下からはみ出して前の椅子にぶつかっている。
彼があまりにもクラスメイト達の視線を集めるので気になって依田も後ろを振り返って彼を見ていた。
その時、ばちっと依田と水野の目が合った
二年生に学年が上がるときに文系理系のクラス分けがあった。
早くも一年の時点で数学に音を上げていた依田は二年に上がる際のクラス分けで文系以外に選択肢がなかった。
文理クラス分けのアンケート用紙に悩む間もなく、親に相談することもなく文系クラスに丸を付けて提出した。親には、一度相談しろ、とどやされはしたが元々理系の成績ではないと知っていたので家族間の大きな問題になることはなかった。
しかし文系の科目も特別得意なものがあるわけではないので依田の成績はずっと中の下だ。
進学先は都内の文系私立大学を希望している。高望みしなければ、と担任に釘を刺されてはいるがぎりぎりB判定は貰っている。このまま予備校に通いつつ、成績を落とさなければ四月にはなんとか大学生にはなれそうで依田は早くも安心していた。
三年次にクラス替えはないのでクラスメイトは見慣れた顔ぶれだ。
教室の入口に張り出されていた席順を見て依田は自分の席へと向かう。あいうえお順で当然廊下側一番前の席。席替えするまでの我慢だ。
その時一気に周囲が騒めいた。周りを見るとそれぞれグループになって話していたクラスメイト達が一斉に教室の入口の方を向いていた。
三年一組。文系クラスの教室に入ってきたのは見覚えのない男子生徒だった。
先述の通り三年次にクラス替えはないためクラスメイトは皆見知った人だけのはずだ。しかしたった今教室に入ってきた男子生徒に依田は見覚えがなかった。
交友関係の広さに多少の自信はあるものの、さすがの依田も全クラス全員が友人というわけではない。文系クラスは全部で五クラスある。依田の友人は多くても三クラス分だ。
もしかしたらただ単に自分の教室と間違えただけなのかもしれない、と依田は思った
「水野くん、どうしたの?」
クラスメイトの一人が彼に声を掛ける。
「なんで水野がここにいるんだ?」
見知らぬ彼に周囲も困惑しているようだった。
水野、は依田も聞いたことがある名前だ。
依田の知っている水野は理系クラスでトップ――それだけではない。
クラス分けは理系文系の中でも細分化され、普通クラスと特進クラスに分かれている。その中でも水野は理系の特進クラスでトップの成績を収めている男だ。
依田は水野の名前は知っていたが顔までは把握していなかった。一年次はクラスが分かれていた上に二年次からも理系と文系で分かれていた。更に部活動も異なるとなると彼と依田に接点は一切なかったのだ。
理系の彼が文系クラスにいるはずがない。きっとただの同姓同名なのだろう。そう思いつつ依田は水野と呼ばれた男をじっと眺めていた。
その時、教室に入ってきた彼――水野と依田の目が合った。
「お前ら席に座れー」
水野に続いて教室に入ってきた担任の芥川が騒がしい教室内を急かす。担任さえも去年と変わらず同じメンバーだ。
水野が窓際一番後ろの席につく。彼の席があるということはどうやら教室を間違えたわけではないらしい。
去年と何も変わらないクラスで彼だけが異端だ。
教卓に手をついた芥川が話し始める。といってもメンバーは昨年度と変わらないので自己紹介も必要ない。春休み中のくだらない冗談話をすればクラスメイトたちが慣れたようにツッコミを入れ、朝のホームルームは和やかに始まった。
最初に場を温めた後、いよいよ本題に入る。芥川は視線を窓際一番後ろの席へと向けた。その視線に気付いてクラスメイト一同が一斉にそちらに視線を向けた。
「今年から水野が理系から編入してきた。文系棟は初めてで移動教室の位置も分からないだろうから色々教えてやってくれ」
そこで、ようやく依田は見慣れない顔をした彼が噂の水野だと知った。
名前はよく聞く。理系の特進クラス――普通の進学を目標とした普通クラスではない、中でも難関大学を目標とするクラス――で常に一位を貫いている男。
彼があの水野雅紀らしい。
受験本番の三年という大事な時期に、なぜ水野は理系特進クラスから文系普通クラスに編入してきたのだろうか。
依田が振り返る。廊下側一番前に座る依田と窓際一番後ろに座る水野はちょうど対角線上にいる。
二人の間に挟まるクラスメイト達を掻い潜ると依田は水野を見た。そしてびくりと身体を跳ねた。依田が水野に視線を向ける前から水野が依田を見ていたのだ。
また依田と水野の目が合った。水野はじっと依田を見つめていた。
依田はなぜ水野が自分を見てくるのか分からなかった。依田は慌てて水野から視線を外すと教卓に身体を向け直してピンと姿勢を正した。
依田は水野とすれ違ったこともなければ、当然話したこともなかった。もしかしたら気付かぬうちにどこかで無礼を働いてしまっていたのかもしれない。
今度は身体の向きを変えず、視線をそちらへと向ける。するとまだ水野は依田を見ていた。
やっぱり俺、何かしたのか!?
目線を前に戻すとだらだらと冷や汗が流れる。担任の話は全く耳に入ってきていなかった。背中には変わらず水野の視線が刺さっているように感じた。
朝のホームルームが終わるとすぐ、水野の席の周囲にクラスメイト達が集まっていた。それは主に女子生徒だ。
「水野くん、文系棟の案内してあげようか?」
「私も行きたい!」
「ずるい! 私も私も!」
女子生徒たちは皆水野という存在に湧いていた。
今まで全く接点のなかった理系男子。しかも学内一位の成績を持つ秀才だ。
受験勉強を理由に早々に退部をしているがサッカー部だったこともあり、運動神経もある。
黒髪短髪は清潔感があり、程よく焼けた肌も健康的だ。きりっとした形の良い眉とすっと通った鼻筋に薄い唇、顔の造形も整っている。身長は依田よりも少し高い一八〇センチというところか。
しかし、文系棟の案内をかって出る彼女たちに水野は丁重に首を横に振って見せた。
「ありがとう。でもごめん」
そう言って水野は集まる女子たちの隙間を縫って、依田の方へ視線を送った。女子たちがこぞってその視線の先を追う。
水野と女子たち。たくさんの視線を浴びて依田は恐る恐る顔を上げた。
「依田くん、お願いしてもいいかな」
水野による名指しの指名に周囲はしんと静まり返り、そして一気に湧いた。
「俺ぇ!?」
依田は自分を指差すと大声を上げた。
なんで、どうして、意味わかんない。女子たちから非難轟轟を浴びながらも結局依田は水野を案内することになってしまった。
幸い今日の午前授業では移動教室はなかったが、午後イチで視聴覚室での移動がある。となると昼休みの内に校舎案内をせざるを得なかった。
教室でさっさと昼食を取ると二人は次の授業の準備を持って早々に教室を後にした。水野に付いていきたいと騒いでいた女子たちは未だ昼食を取っている最中で、依田たちを追いかけることはできなかった。
二人はまず文系棟の四階の廊下を歩く。ここには次の授業で使う視聴覚室の他に美術室がある。他は空き教室で案内する場所はそう多くはない。
「なんで俺が……」
小さい声でそう呟きながらも依田は隣を歩く水野をちらりと盗み見た。
バレーボール部の俺よりも背が高くて羨ましい。
依田も決して背が小さいわけではなかったが、バレーボールは背が高ければ高いほどいいのだ。
形の良い眉は無理に整えたものではない自然のものだ。鼻筋が通っていて輪郭が綺麗。骨格から綺麗だ。
水野は同じ男から見ても格好良いと思う。
「依田?」
「な、なに?」
突然水野に話しかけられ、依田は慌てて意味もなく両手を振って見せる。そんな依田を水野はじっと見つめていた。
「依田」
「え?」
まだ昼休み中の文系棟四階の廊下には依田と水野以外人影はない。教室に移動するには早すぎる時間で、クラスメイト達は皆昼食を取っている最中だ。事前準備をする教師の姿もまだない。
誰もいない廊下で水野は依田の手を引いた。突然のことで体勢を保つこともできず、依田の身体が水野へと傾く。
そしてそのまま水野に抱き締められた。
背中に回された水野の腕がぎゅうぎゅうと力強く依田の身体を抱き締める。
水野からは制汗スプレーの爽やかなシトラスの匂いがした。
「な!?」
突然水野に抱き締められ、意味が分からないと依田は水野の腕の中で暴れ出す。そしてなんとか彼の腕の中から脱出することに成功すると水野から距離を取った。
明らかに水野に対して警戒を見せる依田に対して水野は爽やかな笑みを浮かべていた。
「これから一年間よろしく。依田碧くん」
そう言うと水野はまたにっこりと微笑むと依田に向かって手を差し出した。依田は差し出された手の平と水野の顔を交互に見比べていた。
「な、な、な……」
なんなんだよ!?
その名前は文系クラスで中の下の成績を貫いている依田でさえも知っていた。
依田碧は文系クラスにおいては顔が広い方だ。生まれつきの茶髪のせいで一見軽薄な男に見られがちだが、バレーボール部の主将を務める根は真面目な男で、交友関係も広い。そのお陰もあって文系クラスの男子生徒の顔と名前は網羅しているつもりだった。しかし理系クラスに関しては別だ。依田が理系クラスで名前を知っているのは水野だけだった。
ざわざわと落ち着きのない文系クラスの一番後ろ、窓際の席。そこに水野は座っていた。短い黒髪に少し日に焼けた肌。背筋をピンと伸ばした彼はいかにも優等生という姿をしていた。元サッカー部の彼の長い脚は狭い机の下からはみ出して前の椅子にぶつかっている。
彼があまりにもクラスメイト達の視線を集めるので気になって依田も後ろを振り返って彼を見ていた。
その時、ばちっと依田と水野の目が合った
二年生に学年が上がるときに文系理系のクラス分けがあった。
早くも一年の時点で数学に音を上げていた依田は二年に上がる際のクラス分けで文系以外に選択肢がなかった。
文理クラス分けのアンケート用紙に悩む間もなく、親に相談することもなく文系クラスに丸を付けて提出した。親には、一度相談しろ、とどやされはしたが元々理系の成績ではないと知っていたので家族間の大きな問題になることはなかった。
しかし文系の科目も特別得意なものがあるわけではないので依田の成績はずっと中の下だ。
進学先は都内の文系私立大学を希望している。高望みしなければ、と担任に釘を刺されてはいるがぎりぎりB判定は貰っている。このまま予備校に通いつつ、成績を落とさなければ四月にはなんとか大学生にはなれそうで依田は早くも安心していた。
三年次にクラス替えはないのでクラスメイトは見慣れた顔ぶれだ。
教室の入口に張り出されていた席順を見て依田は自分の席へと向かう。あいうえお順で当然廊下側一番前の席。席替えするまでの我慢だ。
その時一気に周囲が騒めいた。周りを見るとそれぞれグループになって話していたクラスメイト達が一斉に教室の入口の方を向いていた。
三年一組。文系クラスの教室に入ってきたのは見覚えのない男子生徒だった。
先述の通り三年次にクラス替えはないためクラスメイトは皆見知った人だけのはずだ。しかしたった今教室に入ってきた男子生徒に依田は見覚えがなかった。
交友関係の広さに多少の自信はあるものの、さすがの依田も全クラス全員が友人というわけではない。文系クラスは全部で五クラスある。依田の友人は多くても三クラス分だ。
もしかしたらただ単に自分の教室と間違えただけなのかもしれない、と依田は思った
「水野くん、どうしたの?」
クラスメイトの一人が彼に声を掛ける。
「なんで水野がここにいるんだ?」
見知らぬ彼に周囲も困惑しているようだった。
水野、は依田も聞いたことがある名前だ。
依田の知っている水野は理系クラスでトップ――それだけではない。
クラス分けは理系文系の中でも細分化され、普通クラスと特進クラスに分かれている。その中でも水野は理系の特進クラスでトップの成績を収めている男だ。
依田は水野の名前は知っていたが顔までは把握していなかった。一年次はクラスが分かれていた上に二年次からも理系と文系で分かれていた。更に部活動も異なるとなると彼と依田に接点は一切なかったのだ。
理系の彼が文系クラスにいるはずがない。きっとただの同姓同名なのだろう。そう思いつつ依田は水野と呼ばれた男をじっと眺めていた。
その時、教室に入ってきた彼――水野と依田の目が合った。
「お前ら席に座れー」
水野に続いて教室に入ってきた担任の芥川が騒がしい教室内を急かす。担任さえも去年と変わらず同じメンバーだ。
水野が窓際一番後ろの席につく。彼の席があるということはどうやら教室を間違えたわけではないらしい。
去年と何も変わらないクラスで彼だけが異端だ。
教卓に手をついた芥川が話し始める。といってもメンバーは昨年度と変わらないので自己紹介も必要ない。春休み中のくだらない冗談話をすればクラスメイトたちが慣れたようにツッコミを入れ、朝のホームルームは和やかに始まった。
最初に場を温めた後、いよいよ本題に入る。芥川は視線を窓際一番後ろの席へと向けた。その視線に気付いてクラスメイト一同が一斉にそちらに視線を向けた。
「今年から水野が理系から編入してきた。文系棟は初めてで移動教室の位置も分からないだろうから色々教えてやってくれ」
そこで、ようやく依田は見慣れない顔をした彼が噂の水野だと知った。
名前はよく聞く。理系の特進クラス――普通の進学を目標とした普通クラスではない、中でも難関大学を目標とするクラス――で常に一位を貫いている男。
彼があの水野雅紀らしい。
受験本番の三年という大事な時期に、なぜ水野は理系特進クラスから文系普通クラスに編入してきたのだろうか。
依田が振り返る。廊下側一番前に座る依田と窓際一番後ろに座る水野はちょうど対角線上にいる。
二人の間に挟まるクラスメイト達を掻い潜ると依田は水野を見た。そしてびくりと身体を跳ねた。依田が水野に視線を向ける前から水野が依田を見ていたのだ。
また依田と水野の目が合った。水野はじっと依田を見つめていた。
依田はなぜ水野が自分を見てくるのか分からなかった。依田は慌てて水野から視線を外すと教卓に身体を向け直してピンと姿勢を正した。
依田は水野とすれ違ったこともなければ、当然話したこともなかった。もしかしたら気付かぬうちにどこかで無礼を働いてしまっていたのかもしれない。
今度は身体の向きを変えず、視線をそちらへと向ける。するとまだ水野は依田を見ていた。
やっぱり俺、何かしたのか!?
目線を前に戻すとだらだらと冷や汗が流れる。担任の話は全く耳に入ってきていなかった。背中には変わらず水野の視線が刺さっているように感じた。
朝のホームルームが終わるとすぐ、水野の席の周囲にクラスメイト達が集まっていた。それは主に女子生徒だ。
「水野くん、文系棟の案内してあげようか?」
「私も行きたい!」
「ずるい! 私も私も!」
女子生徒たちは皆水野という存在に湧いていた。
今まで全く接点のなかった理系男子。しかも学内一位の成績を持つ秀才だ。
受験勉強を理由に早々に退部をしているがサッカー部だったこともあり、運動神経もある。
黒髪短髪は清潔感があり、程よく焼けた肌も健康的だ。きりっとした形の良い眉とすっと通った鼻筋に薄い唇、顔の造形も整っている。身長は依田よりも少し高い一八〇センチというところか。
しかし、文系棟の案内をかって出る彼女たちに水野は丁重に首を横に振って見せた。
「ありがとう。でもごめん」
そう言って水野は集まる女子たちの隙間を縫って、依田の方へ視線を送った。女子たちがこぞってその視線の先を追う。
水野と女子たち。たくさんの視線を浴びて依田は恐る恐る顔を上げた。
「依田くん、お願いしてもいいかな」
水野による名指しの指名に周囲はしんと静まり返り、そして一気に湧いた。
「俺ぇ!?」
依田は自分を指差すと大声を上げた。
なんで、どうして、意味わかんない。女子たちから非難轟轟を浴びながらも結局依田は水野を案内することになってしまった。
幸い今日の午前授業では移動教室はなかったが、午後イチで視聴覚室での移動がある。となると昼休みの内に校舎案内をせざるを得なかった。
教室でさっさと昼食を取ると二人は次の授業の準備を持って早々に教室を後にした。水野に付いていきたいと騒いでいた女子たちは未だ昼食を取っている最中で、依田たちを追いかけることはできなかった。
二人はまず文系棟の四階の廊下を歩く。ここには次の授業で使う視聴覚室の他に美術室がある。他は空き教室で案内する場所はそう多くはない。
「なんで俺が……」
小さい声でそう呟きながらも依田は隣を歩く水野をちらりと盗み見た。
バレーボール部の俺よりも背が高くて羨ましい。
依田も決して背が小さいわけではなかったが、バレーボールは背が高ければ高いほどいいのだ。
形の良い眉は無理に整えたものではない自然のものだ。鼻筋が通っていて輪郭が綺麗。骨格から綺麗だ。
水野は同じ男から見ても格好良いと思う。
「依田?」
「な、なに?」
突然水野に話しかけられ、依田は慌てて意味もなく両手を振って見せる。そんな依田を水野はじっと見つめていた。
「依田」
「え?」
まだ昼休み中の文系棟四階の廊下には依田と水野以外人影はない。教室に移動するには早すぎる時間で、クラスメイト達は皆昼食を取っている最中だ。事前準備をする教師の姿もまだない。
誰もいない廊下で水野は依田の手を引いた。突然のことで体勢を保つこともできず、依田の身体が水野へと傾く。
そしてそのまま水野に抱き締められた。
背中に回された水野の腕がぎゅうぎゅうと力強く依田の身体を抱き締める。
水野からは制汗スプレーの爽やかなシトラスの匂いがした。
「な!?」
突然水野に抱き締められ、意味が分からないと依田は水野の腕の中で暴れ出す。そしてなんとか彼の腕の中から脱出することに成功すると水野から距離を取った。
明らかに水野に対して警戒を見せる依田に対して水野は爽やかな笑みを浮かべていた。
「これから一年間よろしく。依田碧くん」
そう言うと水野はまたにっこりと微笑むと依田に向かって手を差し出した。依田は差し出された手の平と水野の顔を交互に見比べていた。
「な、な、な……」
なんなんだよ!?



