さいかい

今木秋絵は人にぶつかり我に返った。慌てて謝りながら再び歩き出した。人混みの中で実妹の姿を探したがもう見当たらない。秋絵は失笑した。当たり前だ。祖父の葬式に参列しなければこんな場所は地名すら知らなかった。もう訪れる事は無い。彼は先程の自分勝手な気持ちが少し居なくなっている事に驚きながら着慣れないスーツ姿で雑踏に紛れて消えた。