さいかい

今木航は早足で帰路を急いだ。季節は冬だ。寒い。帰ったら子ども達の為にご飯を作らないといけない。でも親なんて煩わらしい年頃だ。本当に寂しいのはどっちなんだろう。夫は今日も仕事で帰宅が遅い。そこでふと彼女は実兄を思い返した。偶然再会出来た兄は昔と違い目つきは優しくなりそのくせ笑顔で全てを隠す癖はそのままだった。本当は聞きたかった。子供時代と違ってご飯は食べれているの。今は何の仕事に就いていますか。私は結婚してもう三児の母親だよと。再会出来た瞬間は嬉しさの余り夫と話してくれる兄を勝手に想像してしまった。非現実的過ぎる。でも一瞬想像してしまった。その考えも変わらない兄の笑顔を見て直ぐに引っ込んでしまったけど。またあの道を何度か通れば再会出来るだろうか。