無気力少女の異世界旅行

人間は誰もが大なり小なり失敗する時ぐらいはあると思う、ただそれが大きすぎた失敗の場合は?それこそ自分のせいで自分の大切な人を失ったら人はどうすればいいんだろう私にはそれが分からないまま一年以上時間が過ぎていた


合わせる顔なんてない、そんな事は分かっているのに私は今日も親友の見舞いに来ていた、もしかしたら目を覚ましているんじゃないかっていうそんな淡い期待を抱きながら私は意味の無い毎日を過ごしていた、はずなのに私は一体どんな世界に来てしまったんだろう
「ここは…?」
辺りを見渡しても深い森が広がってるだけだった
確かに見舞い帰り寄り道せずいつも通り帰路に着いていたはずだ
「あれ…?そういえば病院から出てから私帰ろうとしてそのまま…」
ダメだそこからの記憶が完全に途絶えているもしかして私は死んだのか…?
「まあそれならそれで……」
いや、せめて両親にだけは感謝を伝えたいこんな私の面倒を見てくれてるんだ
「お前は死んでなんかないぞ」
そう紫髪(合間に赤色のメッシュ?が入っている)の片側を三つ編みにした人が声をかけてくるかなり派手な見た目だ
「うわっ!?誰!?」
「俺はスピネルだ」
「スピネル…?あっ!宝石の名前だった気が…?」
引きこもり始めた時暇で宝石に関する本を読んだ時に見た事のある名前だ
「それは知らん、お前の世界だとそうなんじゃないか?」
「やっぱここは別の世界、なのか…まあいいや、とりあえず死んでないなら元の世界に帰してくれない?」
「それは無理だな」
「はぁ…!?なんで…別にこんな世界に用はないんだけど」
「なら、こんな世界に来ないと思うけどな」
「は…?なにそれ、そんなの私がこの世界に望んで来たみたいになるじゃん!?私はそんなの望んでない!」
「本当にか?本当にお前は自分の世界から逃げたいなんて思った事は無いんだな」
「っ……!!」
「図星か」
「うるさい、あんたには関係ないでしょ帰して私の世界に」
「それは無理な願いだな」
「は…?なんで、あんたはこの世界の人間なんでしょ?」
「違うな、俺もお前と一緒だ」
「一緒…?自分の世界から逃げてきたってこと…?なら私とは一緒じゃない、私はそんなこと思ってなんてない…!!」
私はそう森の中を駆け出した
「どうなっても知らないぞ!」
そんな声が聞こえてきたが私には関係ない
どうにかしてこんな世界から出なきゃいけないんだ私は、まだやらなきゃいけないことがある両親に感謝も伝えてないし、あの子…瑠璃が目を覚ますところを見ていないたとえ可能性が低くても少しでも可能性があるなら私はそれを見たい、私にそんな事を考える資格はないけど


「はぁ...はぁ...引きこもりの弊害かも...疲れた...」
相変わらず辺りは緑1面だここはなんかの迷宮なのか?と思わず言いたくなるその時後ろから足音が聞こえた、人にしては少し大きい気がする
「何…?」
咄嗟に振り向くとそこには少なくとも人間には見えない異形が居た
「っ…!何なの…こいつは…」
分からないけどとにかく無意識に走り出したあいつらに言葉は通じないそれだけはたしかに分かった
「ヴァァァァ」
異形は奇声をあげながら私を追いかけてくる
「なんなの…あいつ…!」
訳も分からずひたすらに逃げる
「嘘…行き止まり…」
やっと開けた場所に出たと思ったらそこにあるのは崖だった
こんな所から落ちたら間違いなく死ぬ、けどこのまま目の前の異形に殺されるのは嫌だ、そんな事を考えてるうちに異形は私に襲いかかってくる
「っ…!嫌だ…!!」
私にはまだやらなきゃいけないことがある
私は祈るように目を瞑るが異形が私に襲いかかってくることはなかった
「なんで…?」
恐る恐る目を開けるとそこにはさっきの男…スピネルが異形の腹部を剣で貫いていた
「あ、りがとう…とりあえず礼は言っとく」
「…だから言ったんだどうなっても知らないってな」
そう呆れるように私を見つめる
「あとお前…名前は?人に聞いたくせに自分の名前を言わないのはどうなんだ」
何この言い方…めちゃくちゃ腹立つ…けど自分の名前だけ言わないのは不公平だ
「……柚月琥珀」
「コハク、お前はこれから5つの世界を巡り時空のカケラを集めろ」
「時空のカケラ…?なにそれ…」
「集めたらきっと元の世界に帰れるだろう、いいのか?このままで」
「良くないに決まってるでしょ、集めるよそのカケラってやつを、まだよく分からないけど…それで元の世界に帰れるなら」
「そうか、じゃあまた次の世界でな」
そう崖から落とされる
「は…?」
そんな間抜けた声しか出なくて私はいつの間にか意識を失っていた
最後に見えた景色は崖の上からどこか辛そうな顔をして私を見下ろすスピネルだけだった