……わたしはここに何しに来たんだっけ。
そうだ。
逃げてきたんだ。
全然知らない場所に。
慣れない。
来ない方が良かったかな……
一緒に来たかったな。
高校から横浜に来て、クラスに馴染むことができないまま4月を終えようとしていた。
まぁ……学校にあんま来れてないからな。
仕方ない。
……キツいけど、慣れていかないと。
「……お前、部活何すんの?」
「ん? ハンド部」
「えぇー……お前、陸上やって無かったっけ?」
机に伏せて寝ていると、教室のいたる所から楽しげな声が聞こえる。
その中に、わたしの名前が出ることはない。
(……みんな、新しく友達作るの頑張ってるんだよね……)
すでにきっかけを失った私は、突っ伏して寝ているか、本を読んで過ごすくらいしかない。「……しまったなぁ」と思うこともある。
(……あれ? 熊本の時と、あんま変わってないかも)
……いや。いじめられていないだけ、100倍マシか。
「美咲ちゃんってさ、熊本のどこにいたの?」
「えっ? ……わたし? 熊本市」
「へぇー。やっぱ九州って暑い?」
「うん……そうだねー……」
「……大丈夫? 体調悪い?」
「いやっ、大丈夫。ごめん」
心に穴が空くって、こういうことなんだ。
朝ベッドから起き上がることができない。
体をベッドがへばりついているみたい……
たまに体調が良い時は、できるだけ学校に行くようにはしている。
部活の時は、同じ部屋で練習していることがほとんどだから話かけてくれる友達は何人かできた。
「はーい! オーボエパートはこっちで練習ね」私は中学からオーボエを吹いている。
「この学校、景色がやばいよね」
「分かる! C組とか、マジでやばいもんね」
別のパート練習をしている人達。
話をしているのが耳に入る。
みんな明るい。
「あれでしょ? ベイブリッジ見えるんでしょ?」
「マジ? 良いなぁー……。2階からじゃ何にも見えないし」
「……あっ、美咲ちゃんてC組じゃなかったっけ?」
チラチラ見ていたのがばれたのかな?と、少しびくっとしてしまう。
「……あっ、うん。C組」
「どう? 景色やばくない?」
「どうかな……私、通路側なんだよね」
「……あっ、そうなんだ」
「……うん」
「今度、見てみて! たぶん、やばいと思うよー」
確かに、そう言われてみれば……窓から外を覗いたことなんて、無かったな。
そもそもベイブリッジって何だろ?
たぶん橋なんだろうけど。
休み時間。
いつも読んでいる本から目を離して、窓側を見てみる。
あんまりジロジロ見ると、後で面倒くさそうだから……ちょっとだけ。
(……さすがに人がいると無理かぁ)
部活に行く前に、窓の外を見てみようかなと思った。
(あー……あの後ろの席。風が入ってきて、気持ち良さそう……)
そういえば、あの男子……授業中良く寝てる。
名前、何だっけ……?
吹部の皆の言う通り、C組の窓側は人気があるみたいだった。いつも人が集まってる。
特に、一番後ろの席。
そうだ。
逃げてきたんだ。
全然知らない場所に。
慣れない。
来ない方が良かったかな……
一緒に来たかったな。
高校から横浜に来て、クラスに馴染むことができないまま4月を終えようとしていた。
まぁ……学校にあんま来れてないからな。
仕方ない。
……キツいけど、慣れていかないと。
「……お前、部活何すんの?」
「ん? ハンド部」
「えぇー……お前、陸上やって無かったっけ?」
机に伏せて寝ていると、教室のいたる所から楽しげな声が聞こえる。
その中に、わたしの名前が出ることはない。
(……みんな、新しく友達作るの頑張ってるんだよね……)
すでにきっかけを失った私は、突っ伏して寝ているか、本を読んで過ごすくらいしかない。「……しまったなぁ」と思うこともある。
(……あれ? 熊本の時と、あんま変わってないかも)
……いや。いじめられていないだけ、100倍マシか。
「美咲ちゃんってさ、熊本のどこにいたの?」
「えっ? ……わたし? 熊本市」
「へぇー。やっぱ九州って暑い?」
「うん……そうだねー……」
「……大丈夫? 体調悪い?」
「いやっ、大丈夫。ごめん」
心に穴が空くって、こういうことなんだ。
朝ベッドから起き上がることができない。
体をベッドがへばりついているみたい……
たまに体調が良い時は、できるだけ学校に行くようにはしている。
部活の時は、同じ部屋で練習していることがほとんどだから話かけてくれる友達は何人かできた。
「はーい! オーボエパートはこっちで練習ね」私は中学からオーボエを吹いている。
「この学校、景色がやばいよね」
「分かる! C組とか、マジでやばいもんね」
別のパート練習をしている人達。
話をしているのが耳に入る。
みんな明るい。
「あれでしょ? ベイブリッジ見えるんでしょ?」
「マジ? 良いなぁー……。2階からじゃ何にも見えないし」
「……あっ、美咲ちゃんてC組じゃなかったっけ?」
チラチラ見ていたのがばれたのかな?と、少しびくっとしてしまう。
「……あっ、うん。C組」
「どう? 景色やばくない?」
「どうかな……私、通路側なんだよね」
「……あっ、そうなんだ」
「……うん」
「今度、見てみて! たぶん、やばいと思うよー」
確かに、そう言われてみれば……窓から外を覗いたことなんて、無かったな。
そもそもベイブリッジって何だろ?
たぶん橋なんだろうけど。
休み時間。
いつも読んでいる本から目を離して、窓側を見てみる。
あんまりジロジロ見ると、後で面倒くさそうだから……ちょっとだけ。
(……さすがに人がいると無理かぁ)
部活に行く前に、窓の外を見てみようかなと思った。
(あー……あの後ろの席。風が入ってきて、気持ち良さそう……)
そういえば、あの男子……授業中良く寝てる。
名前、何だっけ……?
吹部の皆の言う通り、C組の窓側は人気があるみたいだった。いつも人が集まってる。
特に、一番後ろの席。



