神社ってね、感謝をするところなんだよ

磯子駅と違って、根岸駅のバスターミナルは狭くて分かりやすい。

お昼を回ったバスの中は、あまり人が乗っていなくて、一番後ろの席に座ることができた。

「窓側、座ったら?」
楓くんがわたしを奥の方に入るように誘導してくれる。

平坦な道をずっと進んでいたバス。
突然急な坂道を登り出す。

横ではずっと楓くんが「……懐かしいなぁ」とつぶやいている。

坂を登り切ると、そこは根岸森林公園。
あっという間に着いてしまった。

「……すっごい坂だったね」
「でしょ? 俺も初めて来た時、めっちゃ驚いたもん」
「そっか。小さい頃、よく来てたっていってたもんね」
バスを降りて、辺りをきょろきょろする。

「……歩いて来なくてよかった」
もし歩いて来ていたら、あの坂はたぶん上りきれていない。

「歩いてくると、坂じゃないよ」
「……なにそれ」
「階段があるんだよ」
根岸駅から歩いて来る人達は、脇道に階段があって、そこを上るらしい。

「……で、途中から坂道に合流するんだよ」

「でもさぁ……この辺り、空気感が違うよね」

そう。

坂をずーっと登ってきたから……高台なんだろうなと察しはつくけど……ちょっと涼し気な雰囲気。洋風の家もちらほらある。

「この辺、割と最近までアメリカに接収されてたんだよ」
「……どういうこと?」
この地域は第2次世界大戦後、アメリカの管轄下にあったらしい。……なるほど、だから洋風の家も多いんだなと思った。

返還されたのは、結構最近のことらしかった。

「だから……なんかさ、洋風の家も多いなって思ってたんだよね」
「そうそう。結構英語で書かれたの、多いでしょ。ほら」
そういって楓くんは郵便ポストを指さす。

「……ほんとだ! 英語じゃん」
至るところに横文字。空気もやっぱりなんだか違う。とてもふんわりと、軽い感じがする。

「この公園、しかも昔は競馬場だったんだって」
「なにそれ? 色々興味深いじゃん……」

道路に沿って歩いて、森林公園の入口へと向かう。

この前行った、磯子の久良岐公園とちがって……森林公園は「開かれた公園」って感じがする。あまり「森」って感じがしない。

でも、静かで広い。

「……中、結構広いんじゃない?」
「うん。だいぶ広いと思う。でも……久良岐公園と違って、横に広いみたいなイメージかなぁ」
「ちょっと調べてみる」
「……載ってるかなぁ……まぁ、載ってるか」
「ねえ! 凄いじゃん、ここ! ……東京ドームでいうと……約4個分の広さ、だって」
「へぇー……」
「え? そんなに驚かない? 凄くない?」
「……いや、東京ドーム、行ったこと無くて……」
「そういうことじゃないよ」

森林公園は開かれていて、誰でも気軽に入っていいよと言われている気がした。