神社ってね、感謝をするところなんだよ

「……茜、いじめられてるってほんと?」
「うん……。半年くらい前からって。先生言ってたよ」
「えぇ……そうなの? 全然知らなかった。わたし」
「……お父さんだって、今日初めて知ったからな……きつかったろうに……」
「……」
「休みが多いですねって話かと思ってたからな……」
「……うん。わたしも」

お父さんが学校から呼び出された時
「茜が学校を休みがちだからなのかな……」と私も思っていた。

でも、学校の先生から告げられたのは思いもよらない内容だった。

「理由は先生も分からないみたいだったよ」
「……えーっ? 何それ……」
「何かされてるって訳じゃ無いみたいだけどね」
「どういうこと?」
「物を取られたりとか……捨てられたりとか。そういうのじゃ無いらしい」
「……無視されてたら、もう十分『何か』されてるって……」
「……」
「だってさ……学校に行けてないんだよ? それだけで十分だって……」
「そうだな……」
「お父さんは甘いよ。……女子は怖いんだから」
「……そうだね。ごめん」
「マジ、陰湿なんだって。茜、だから休んでたんだ……」

私にもお父さんにも相談せずに、ずっと悩んでいたんだろう。熱を出すようになってからは、部屋からもあまり出なくなっていた。

「……茜?」
「……」
「……入るよ?」
電気は消え、布団がこんもりと盛り上がっている。

「……いじめられてたんだ」
「……」
「ごめんね。気付けなかった。わたし」
「……ううん」
「体調は? どう?」
「……熱は無いけど……」
「そう」
「……頭はずっと痛いかなぁ」
「……大丈夫なの?」
「結構、痛いよ……?」
茜は吐き捨てるように言った。

意を決して、お父さんのところへと向かう。
ずっと言いたいけど、言えなかったことがあった。

「……ねぇ、お父さん」
「うん? 何? 茜、どうだった」
「……」
「……どうした?」
「……引越したい。無理?」
「えっ?」
「できるなら、引越したい! ……別のとこに行きたい」
「……」
「もうやだ! こんなとこ!!」
私も茜も、限界だった。

新しいところで、もう一度やり直したい。
強く、そう思った。

「……引越し? 美咲は引越したいのか?」
「……うん……もう嫌だ」
頬を流れる涙を拭いながら、私は頷いた。

「誰も知らないとこ、行きたい……」
お父さんは私に近づき
そっと頭に手を乗せてくれた。

……守られてる感じがした。