神社ってね、感謝をするところなんだよ

静かに穏やかな風が吹いて、木々が揺れる。
8月の暑い日なのに、少し涼しい。

わたし達のまわりだけ……時間が止まる。

穏やかな何かが、わたしを包み込んでくれているような……。

……茜が会いにきた気がした。

(……もう少し、このままでいたい)

楓くんに抱きしめられて、わたしは温かさを感じていた。

(温かい……)

「……美咲ちゃん」
「……うん……」
「話してくれて、ありがとう」
「ううん……ごめんね」
「何で?」
「いや……突然さ……」
「いや」

そっと楓くんから離れ、乱れた髪を整えた。

「……大変だったね」
「……うん。色々ね」
「上手く言えないけどさ……辛い時、もっと頼って。話聞かせてよ」
「うん。ありがとう」
楓くんの優しさが、心に染みる……

「ちょっと手、合わせてくる」
わたしはベンチから立ち上がると、歩みを進めた。

「……俺もやろうかな」
早足で楓くんが、わたしの後に続いた。

賽銭箱の前に立ち、2回礼をする。
そして2回、「パン! パン!」と手を叩く。

(……茜――……元気?)
(わたしの妹でいてくれて……ありがとね)
(ほんと……ありがとう)

(……)
(楓くんと出会わせてくれて……ありがとう)
(本当に、ありがとう――)

ゆっくり目を開けると、楓くんはまだ目を瞑って、手を合わせている。

ちょっぴり微笑ましくなり、足音を立てないように……そばを離れた。

「……美咲ちゃん」
遠くから楓くんの声。
どうやら終わったらしい。

「……長くない?」
「いや。お願い……たくさんあったから」
「……ふぅん」
「何」
「いや? なにをお願いしたのかなーって」
「教えないよ?」
「……なにそれ? 教えてよ!」
「駄目。美咲ちゃんには教えない」
「えー! なにそれ! いいじゃん!」

お昼。
誰もいない神社には、笑い声が響き渡っていた。

「でもさ」
「どうしたの?」
「ん? いや……良かったなって」
「何が?」
「……楓くんが……いてくれて」
「えっ……?」
「どうしていいか……分からなかったもん」
「……照れるじゃん」
「ほんとだよ。ありがとね」
楓くん、顔が真っ赤だ……でも、これがわたしの気持ち。

「……そういうばさ、文化祭の時」
「懐かしいね。もうだいぶ前のような気がするな」
「どうして……わたしに声をかけてくれたの?」
「うーん……」
「ずっと気になってて」
「何でだっけ。……忘れたよ」
「絶対ウソだ! 覚えてないわけ……ないって!」
「……忘れたもんは、忘れたんだって」
「ずるい!」
「ずるいとかじゃないよ」
「……絶対覚えてるもん……」
「ほっぺた、『ぷくー』ってなってるよ?」
「……ちょっと!」
またわたし達は笑った。

……この時間が、永遠に(ずっと)続きますように――

お願いします――