森浅間神社。
別に有名だからってわけじゃない。
別に綺麗ってわけじゃない。
家から近い。
磯子駅にある。
お父さんと来たことある。
……楓くんを案内できるのは、ここしかない
「……結構、長くない?」
「平気平気。すぐ着くよ」
「せっかく来たから……。上ろうか」
(……楓くん、この前のわたしみたい)
石段を上っていく。
お父さんと来た時と違って、少しジメジメする。……暑い。
こんな時に誘っちゃって……運がないのか?わたしは……。
「湿気すごくない?」
(……あー……同じこと思ってたんだ)
「ね。……暑っつい」
「でも、ちょっとひんやりするよね。気のせいかもだけど」
「そう言ってもらえて、良かったよ」
「……ゆっくり行こう」
多少、調子は良いものの
目まいが、目の奥に残ってる。
(……ちょっと気を付けないとなぁ……もたないぞこれ)
省エネ気味に、上り続ける。
「……そういえばさ」
「何?」
「この神社、結城さん、良く来るの?」
「……そんな来ないよ。何回か来たことあるくらい」
なぜだろう?小さいな嘘が口から出てしまった。ほんとは1回しか来たことはない。
「そうなんだ」
「……うん」
「引越してきたばかりだから、まだ慣れてないんじゃない? 色々」
「……うん。全然分かんない」
ゆっくりではあるけど、やっぱり疲れる。
呼吸が少し乱れてきた。
「ちょっと休もうよ」
楓くんは、そんな私に気付いたのか……休憩しようと言ってくれた。
ちょうど前回、休憩した場所と同じ所で。
ゴォー……ッ……ゴォー……ッ……
ここの車の音、意外と心地よい。
「……何、結城さんって神社マニアなの?」
「……えっ? あははっ!!」
「え……? 何」
「違うよ。そういうわけじゃないよ」
「……じゃあ何で笑うのさ」
「いや……前にお父さんと来た時、わたしも同じこと言ったなぁって」
「そうなんだ」
「うん。……あーおもしろっ……」
笑い過ぎてちょっと涙が出た。
「あ、でも久し振りに笑ったかも」
「そうなんだ。良かった」
楓くんも笑ってる。……良かった。
「マニアってわけじゃないんだ」
「うん。そういうわけじゃないよ」
「散歩ルートで来たってこと?」
「……うーん。まぁ、それはそうだけど」
「何?」
「……今日は内緒」
「教えてくんないのかよ」
「うん。今日はね」
楓くんと一緒に涼しいとこに行きたかったのもある。
でも茜に向けて手を合わせたかったのもあった。
「もうさ、面倒くさいからさ、楓くんも下の名前で呼んでよ」
「え?」
「その方が楽だから」
「……あ、うん。……分かった」
……今日の私、どうした?
やっとの思いで境内までたどり着いた。
前に来た時と同じ。「あー……古いなぁ」って思う。
「……趣、あるね」
「良いとこ見つけ、楓くん上手だね」
「もっとピッカピカなのかと思ってた」
「……正直だな」
細かい作法は置いておいて、5円玉をお賽銭箱に投げ入れる。
チャリン、カララン……と音がした。
「見ててよ」
2回おじぎをして、パンッ……パンッ……と2回手を鳴らす。
(……茜―……元気にしてる?)
(……私と、お父さんと出会ってくれてありがとう)
(……一緒に暮らしてくれてありがとう)
(……楓くんと一緒に来させてくれて、ありがとう――)
「……」
ゆっくり目を開け、最後に1回おじぎをする。
「……こんな感じだよ」
くるっと楓くんの方に振り向き、私は言った。
「じゃ、私、その辺にいるね」
お父さんの真似をした。
(……なるほど、これが大人の振舞いか……)
私は絵馬の方を歩いたり、裏手に周ったりした。
「……美咲ちゃん。終わったよ」
後ろから楓くんが私を呼ぶ。
ちょっと恥ずかしそうに……下の名前で呼んでくれた。
「……どうだった?」
「どうだったって……ただ手を合わせてお願いしただけだよ」
「ふーん。お願いしたんだ」
「うん」
「……何を? 何をお願いしたの?」
「……別にいいじゃん」
「教えてよ」
「いやいや、教えないって」
「ま、いいけどね」
「……何それ」
「ふふん。楓くんと同じ。内緒だよ」
「……教えてよ」
「やだよ」
「何それ……」
「ま、また今後教えてあげるよ」
お父さんの真似をした。
この前と同じ。
帰りの石段は、ほんと楽。
ゆっくりゆっくり、下りていく。
「……ねえ、楓くん」
「何?」
「今日はありがと」
「……いや、俺も楽しかったから」
「……優しいね。ありがと」
「……いや、まぁ」
「あっ、そうだ」
「何?」
「今度さ、定期演奏会があるんだよね。来てよ」
「定演?」
「うん」
「へぇ……行くよ」
「ほんと?」
私達はインスタを交換して、駅前で別れた。
別に有名だからってわけじゃない。
別に綺麗ってわけじゃない。
家から近い。
磯子駅にある。
お父さんと来たことある。
……楓くんを案内できるのは、ここしかない
「……結構、長くない?」
「平気平気。すぐ着くよ」
「せっかく来たから……。上ろうか」
(……楓くん、この前のわたしみたい)
石段を上っていく。
お父さんと来た時と違って、少しジメジメする。……暑い。
こんな時に誘っちゃって……運がないのか?わたしは……。
「湿気すごくない?」
(……あー……同じこと思ってたんだ)
「ね。……暑っつい」
「でも、ちょっとひんやりするよね。気のせいかもだけど」
「そう言ってもらえて、良かったよ」
「……ゆっくり行こう」
多少、調子は良いものの
目まいが、目の奥に残ってる。
(……ちょっと気を付けないとなぁ……もたないぞこれ)
省エネ気味に、上り続ける。
「……そういえばさ」
「何?」
「この神社、結城さん、良く来るの?」
「……そんな来ないよ。何回か来たことあるくらい」
なぜだろう?小さいな嘘が口から出てしまった。ほんとは1回しか来たことはない。
「そうなんだ」
「……うん」
「引越してきたばかりだから、まだ慣れてないんじゃない? 色々」
「……うん。全然分かんない」
ゆっくりではあるけど、やっぱり疲れる。
呼吸が少し乱れてきた。
「ちょっと休もうよ」
楓くんは、そんな私に気付いたのか……休憩しようと言ってくれた。
ちょうど前回、休憩した場所と同じ所で。
ゴォー……ッ……ゴォー……ッ……
ここの車の音、意外と心地よい。
「……何、結城さんって神社マニアなの?」
「……えっ? あははっ!!」
「え……? 何」
「違うよ。そういうわけじゃないよ」
「……じゃあ何で笑うのさ」
「いや……前にお父さんと来た時、わたしも同じこと言ったなぁって」
「そうなんだ」
「うん。……あーおもしろっ……」
笑い過ぎてちょっと涙が出た。
「あ、でも久し振りに笑ったかも」
「そうなんだ。良かった」
楓くんも笑ってる。……良かった。
「マニアってわけじゃないんだ」
「うん。そういうわけじゃないよ」
「散歩ルートで来たってこと?」
「……うーん。まぁ、それはそうだけど」
「何?」
「……今日は内緒」
「教えてくんないのかよ」
「うん。今日はね」
楓くんと一緒に涼しいとこに行きたかったのもある。
でも茜に向けて手を合わせたかったのもあった。
「もうさ、面倒くさいからさ、楓くんも下の名前で呼んでよ」
「え?」
「その方が楽だから」
「……あ、うん。……分かった」
……今日の私、どうした?
やっとの思いで境内までたどり着いた。
前に来た時と同じ。「あー……古いなぁ」って思う。
「……趣、あるね」
「良いとこ見つけ、楓くん上手だね」
「もっとピッカピカなのかと思ってた」
「……正直だな」
細かい作法は置いておいて、5円玉をお賽銭箱に投げ入れる。
チャリン、カララン……と音がした。
「見ててよ」
2回おじぎをして、パンッ……パンッ……と2回手を鳴らす。
(……茜―……元気にしてる?)
(……私と、お父さんと出会ってくれてありがとう)
(……一緒に暮らしてくれてありがとう)
(……楓くんと一緒に来させてくれて、ありがとう――)
「……」
ゆっくり目を開け、最後に1回おじぎをする。
「……こんな感じだよ」
くるっと楓くんの方に振り向き、私は言った。
「じゃ、私、その辺にいるね」
お父さんの真似をした。
(……なるほど、これが大人の振舞いか……)
私は絵馬の方を歩いたり、裏手に周ったりした。
「……美咲ちゃん。終わったよ」
後ろから楓くんが私を呼ぶ。
ちょっと恥ずかしそうに……下の名前で呼んでくれた。
「……どうだった?」
「どうだったって……ただ手を合わせてお願いしただけだよ」
「ふーん。お願いしたんだ」
「うん」
「……何を? 何をお願いしたの?」
「……別にいいじゃん」
「教えてよ」
「いやいや、教えないって」
「ま、いいけどね」
「……何それ」
「ふふん。楓くんと同じ。内緒だよ」
「……教えてよ」
「やだよ」
「何それ……」
「ま、また今後教えてあげるよ」
お父さんの真似をした。
この前と同じ。
帰りの石段は、ほんと楽。
ゆっくりゆっくり、下りていく。
「……ねえ、楓くん」
「何?」
「今日はありがと」
「……いや、俺も楽しかったから」
「……優しいね。ありがと」
「……いや、まぁ」
「あっ、そうだ」
「何?」
「今度さ、定期演奏会があるんだよね。来てよ」
「定演?」
「うん」
「へぇ……行くよ」
「ほんと?」
私達はインスタを交換して、駅前で別れた。



