失われるとわかっていても、君の隣を手放したくない

 合同創作ダンスについての打ち合わせが始まった。
 黒板前の丸椅子に座っていた篤人が立ち、A校案から板書していく。クラス代表でない篤人は、板書係として打ち合わせに参加しているらしい。
 日本三大合戦、百年戦争、集団行動に海外の青春ミュージカル。
 どのクラスもそれなりにダンステーマを挙げてきた。俺の番になる。

「F組案はありません。今回、S女子と合同創作ダンスをすることは難しいと思います」

 S女子の生徒がざわつく。
 篤人が板書する手を止める。
 A校生たちは、やっぱりな、といった反応で溜息をついたり、俺を白い目で見たりしている。

「体育祭の行われる10月には、文化祭も予定されています。体育祭の合同創作ダンスと、文化祭のクラス発表は両立できないと思いました。合同となると、何事もS女子と調整するので時間がかかります。そのうえ、メインの準備期間となる夏休みには、部活に励みたい生徒、勉強に力を入れたい生徒もいます。つまり、絶対的に時間が足りない。
 その点、従来のダンスパーティーなら、大学受験を終えた生徒も多く、時間に余裕があります。以上の理由から、両校の交流の復活を目指すなら、卒業ダンスパーティーを提案します」

 周りがしんとなり、聞き入っているのがわかる。
 俺は注目されることに慣れている。いつもどおり気を張っていれば、どんな場でも落ち着いて自分らしくいられる。

「……他に、反対意見のクラスはあるかな?」 

 先生が問うと、S女子E組代表が遠慮がちに手を挙げた。男女で運動能力の差があるのに、なんで合同でダンスしなければならないのか、女子だけのものを作りたいという。
 S女子側でも反対意見が出ていたとは。意外だったが、追い風になる。
 
 先生が続ける。

「合同創作ダンスをするのは、君たちです。君たちのなかで反対意見が根強いのであれば、開催を見送ることもやむを得ない。もちろん和田が言ったように、卒業パーティーとして開催すればよい、との提案もあると思う。どうするか、この場で話し合ってほしい」

「確かに卒業パーティーでも」「和田の言うことはよくわかる」みんなのささやきが聞こえてくる。
 たとえ校長から告げられたことでも覆すことはできる。
 それがわかったら、前例のない面倒なことは避けたいと思うやつもでてくるだろう。

 よし、このまま、たたみかけるように反対意見を、と思ったところで、

「わたしたちが今、合同創作ダンスをする意味って……」

 そう発言したのは、舞に良く似た女だった。