正門から校舎へのアプローチに並ぶカラフルなパネル。校舎を彩る美術部作成の横断幕。模擬店には行列ができ、どのクラスの展示や有志の企画も、大勢の人で賑わっている。
今までは来場者のほとんどを受験生やOBが占めていたけれど、今年は女子中高生の数が目に見えて多い。A校生のテンションがいつにも増して高い。
高2はクラス展示をしないので、教室は立ち入り禁止となっている。がらんと静まり返っていて、ここだけがまるで別世界だ。
動画上映は午後1時から。上映自体も藤澤がいれば問題ないし(俺も一応は裏で控えている)、入念に準備をしたこともあり、当日は自由に文化祭をまわれることになった。
とはいえ、人混みが苦手な俺は教室にいる。高2はすすんで手伝いをすることになっているが、どいつも俺を案内人に使いたがり(集客効果狙い?)、着ぐるみでも着せてくれたらやるよ、と言ったら全身タイツを渡された。ふざけんなよ、と一蹴。
椅子の背もたれに体を預け、天井を仰ぐ。白い天井を背景に、水野さんの寝顔が浮かんだ。甘い香りと、柔らかくて乾いた唇の感触がよみがえる。
キスをした。
俺にとっては初めてで、けれど水野さんは初めてではないだろう。狩野くんとつき合っていたわけだし、キスくらいは済ませていると思いたい。でなければ、俺の行為は大罪だ。いや、それでなくても?
深い溜息をつく。
あのあと、30分ほどで水野さんが起きた。「ごめん、寝ちゃってた」と言ってすこし笑った。俺のしたことには気づいてないみたいだった。
自分の唇に触れる。なんであんなこと……。
篤人のことは特別に想っているけれど、キスしたいとか体に触れたいといった欲はない。だからあえて名前をつけるならば、俺は同性愛者で非性愛者なのだと思っていた。当然、水野さんは恋愛対象でも性的な対象でもなかった。篤人を好きな者同士、仲間でしかなかったはずなのに。なぜかあの瞬間、触れてみたいという強い衝動があった。
魔が差しただけ? ……ちがうな。
だって、今すぐにでも、したい。触れたい。どうしようもなく。
机の上のスマホが震えた。メッセージが浮かぶ。
ちょっと来てくれる、と藤澤からの連絡だった。
重い体を持ち上げるようにして立つ。窓から、たくさんの女子高生が見えた。S女子のセーラー服も混ざっている。
今日、水野さんは来ない。用事があると言っていたけれど、本当のところは篤人に会いたくないんだろう。塾の英語クラスも特選に上がり、篤人との接点は無くなった。このまま終わるつもりだろうか。
一体、ふたりの間に何があったのか。どうして水野さんは全て抱えようとする……?
藤澤のいる部室に向かおうと階段を下りようとしたが、たくさんの人が溜まっていて動けない。仕方なく待っていると、その先の廊下を横切る女子に目が吸い寄せられる。
――舞?
これだけたくさんの人に囲まれていても、オーラがあるというか、雰囲気がちがう。何人かが舞のことを盗み見る。
実質、会わなくなって数年は経っているのに、すぐにわかるなんて。
なんでここにいる?
篤人に会いに来たのか?
今さら、のこのこ出てくるなよー!!
「ごめん、ごめん、どいて」
人混みをかき分けて舞を追う。
どうしてこんなに人がいるんだよ!
人の合間を抜けて走り、中庭でやっと捕まえた。
今までは来場者のほとんどを受験生やOBが占めていたけれど、今年は女子中高生の数が目に見えて多い。A校生のテンションがいつにも増して高い。
高2はクラス展示をしないので、教室は立ち入り禁止となっている。がらんと静まり返っていて、ここだけがまるで別世界だ。
動画上映は午後1時から。上映自体も藤澤がいれば問題ないし(俺も一応は裏で控えている)、入念に準備をしたこともあり、当日は自由に文化祭をまわれることになった。
とはいえ、人混みが苦手な俺は教室にいる。高2はすすんで手伝いをすることになっているが、どいつも俺を案内人に使いたがり(集客効果狙い?)、着ぐるみでも着せてくれたらやるよ、と言ったら全身タイツを渡された。ふざけんなよ、と一蹴。
椅子の背もたれに体を預け、天井を仰ぐ。白い天井を背景に、水野さんの寝顔が浮かんだ。甘い香りと、柔らかくて乾いた唇の感触がよみがえる。
キスをした。
俺にとっては初めてで、けれど水野さんは初めてではないだろう。狩野くんとつき合っていたわけだし、キスくらいは済ませていると思いたい。でなければ、俺の行為は大罪だ。いや、それでなくても?
深い溜息をつく。
あのあと、30分ほどで水野さんが起きた。「ごめん、寝ちゃってた」と言ってすこし笑った。俺のしたことには気づいてないみたいだった。
自分の唇に触れる。なんであんなこと……。
篤人のことは特別に想っているけれど、キスしたいとか体に触れたいといった欲はない。だからあえて名前をつけるならば、俺は同性愛者で非性愛者なのだと思っていた。当然、水野さんは恋愛対象でも性的な対象でもなかった。篤人を好きな者同士、仲間でしかなかったはずなのに。なぜかあの瞬間、触れてみたいという強い衝動があった。
魔が差しただけ? ……ちがうな。
だって、今すぐにでも、したい。触れたい。どうしようもなく。
机の上のスマホが震えた。メッセージが浮かぶ。
ちょっと来てくれる、と藤澤からの連絡だった。
重い体を持ち上げるようにして立つ。窓から、たくさんの女子高生が見えた。S女子のセーラー服も混ざっている。
今日、水野さんは来ない。用事があると言っていたけれど、本当のところは篤人に会いたくないんだろう。塾の英語クラスも特選に上がり、篤人との接点は無くなった。このまま終わるつもりだろうか。
一体、ふたりの間に何があったのか。どうして水野さんは全て抱えようとする……?
藤澤のいる部室に向かおうと階段を下りようとしたが、たくさんの人が溜まっていて動けない。仕方なく待っていると、その先の廊下を横切る女子に目が吸い寄せられる。
――舞?
これだけたくさんの人に囲まれていても、オーラがあるというか、雰囲気がちがう。何人かが舞のことを盗み見る。
実質、会わなくなって数年は経っているのに、すぐにわかるなんて。
なんでここにいる?
篤人に会いに来たのか?
今さら、のこのこ出てくるなよー!!
「ごめん、ごめん、どいて」
人混みをかき分けて舞を追う。
どうしてこんなに人がいるんだよ!
人の合間を抜けて走り、中庭でやっと捕まえた。
