夏休み最後の練習ともあって、今日はいつもより熱が入っていた。体育館は冷房が効いているといっても、体から放たれる熱で汗がとめどなく流れる。
ただ撮影している俺だってそうなのだから、踊っているみんなは相当なものだろう。
何度も通しで練習したあと、三浦さんからオッケーが出たあとは、みんながその場に崩れた。
音楽が止み、ところどころから充足感と疲労感に満ちた声が聞こえてくる。
舞っている埃が2階の窓から差し込む光に照らされて、きらきらと輝いていた。
性別も学校もちがうのに、みんなでひとつのものを作っている。すべて映像にして残したい。葛藤も喜びも全部、切り取るように記録できたらいいのに。
今までたくさんの学校行事があったけれど、ここまで夢中になれたものがあったか? これが青春というものなのか——
視界の端を、揺れる何かがかすめた。
誰かが天井に向かって手を伸ばしている。細くたよりないそれは、水野さんの腕だった。
向日葵に手を伸ばすように、必死で何を掴もうとしている?
空中で泳ぐ腕を見ていたら、胸がざわついてきて、居ても立ってもいられなくなった。
近づいて、水野さんの腕を引っ張り上げる。
羽のように軽く、ふわりと彼女の体が浮いて、あっという間に上半身が起こされた。
何が起こったかわからない、という彼女の顔が目の前にあった。
腕は柔らかく、力を込めたら折れてしまいそうなほど細くたよりなくて、ここにあることを確かめるようにぎゅっと握る。
「大丈夫?」と問うと、叫び声とともに振りほどかれた。
なんだよ、その反応。気に入らない。
ふと気がついて、持っていたカメラを向ける。
「いいかお。真っ赤」
「ちょっと! 撮らないでよ!」
「別にいいじゃん。てか、相手は俺なのになんて顔してんの」
相手は俺だ。篤人じゃない。
彼女が後ずさっただけ距離を詰める。真っ赤な顔が困惑に揺れていく。困らせてるのに気持ちがいい。もっと迫りたくなる。
楽しんでいたところで、「そこ! いちゃつかない!」という三浦さんの怒鳴り声がして、やめた。舌打ちしながらのろのろと立ち上がり、辺りを見まわす。
篤人がどこにいるか、探さないでもわかった。
「……見てる」
上半身を起こした状態で肩で息をしている篤人がこちらを見ていた。
「……帰り、少し話せるかな」
水野さんが頷く。疲れているだけかもしれないけれど、力がない。「じゃあ、噴水のところで」と去り際に頭に軽く触れ、体育館を後にした。
ただ撮影している俺だってそうなのだから、踊っているみんなは相当なものだろう。
何度も通しで練習したあと、三浦さんからオッケーが出たあとは、みんながその場に崩れた。
音楽が止み、ところどころから充足感と疲労感に満ちた声が聞こえてくる。
舞っている埃が2階の窓から差し込む光に照らされて、きらきらと輝いていた。
性別も学校もちがうのに、みんなでひとつのものを作っている。すべて映像にして残したい。葛藤も喜びも全部、切り取るように記録できたらいいのに。
今までたくさんの学校行事があったけれど、ここまで夢中になれたものがあったか? これが青春というものなのか——
視界の端を、揺れる何かがかすめた。
誰かが天井に向かって手を伸ばしている。細くたよりないそれは、水野さんの腕だった。
向日葵に手を伸ばすように、必死で何を掴もうとしている?
空中で泳ぐ腕を見ていたら、胸がざわついてきて、居ても立ってもいられなくなった。
近づいて、水野さんの腕を引っ張り上げる。
羽のように軽く、ふわりと彼女の体が浮いて、あっという間に上半身が起こされた。
何が起こったかわからない、という彼女の顔が目の前にあった。
腕は柔らかく、力を込めたら折れてしまいそうなほど細くたよりなくて、ここにあることを確かめるようにぎゅっと握る。
「大丈夫?」と問うと、叫び声とともに振りほどかれた。
なんだよ、その反応。気に入らない。
ふと気がついて、持っていたカメラを向ける。
「いいかお。真っ赤」
「ちょっと! 撮らないでよ!」
「別にいいじゃん。てか、相手は俺なのになんて顔してんの」
相手は俺だ。篤人じゃない。
彼女が後ずさっただけ距離を詰める。真っ赤な顔が困惑に揺れていく。困らせてるのに気持ちがいい。もっと迫りたくなる。
楽しんでいたところで、「そこ! いちゃつかない!」という三浦さんの怒鳴り声がして、やめた。舌打ちしながらのろのろと立ち上がり、辺りを見まわす。
篤人がどこにいるか、探さないでもわかった。
「……見てる」
上半身を起こした状態で肩で息をしている篤人がこちらを見ていた。
「……帰り、少し話せるかな」
水野さんが頷く。疲れているだけかもしれないけれど、力がない。「じゃあ、噴水のところで」と去り際に頭に軽く触れ、体育館を後にした。
