ツルギの剣




 練習も終わり、八人は揃って帰路につく。

 学校を出てすぐの場所にあるコンビニで買い食い。


「せっかくだ。

 今日は剣君の退院祝いとして、私が何でも一つ好きなものを買ってやろう」


 気前のいいことを言ってみせるラブ将軍。

「そらホンマか!?」


「ああ、無論だ。
 だが、あんまり高すぎるものは駄目だぞ?」


 これに喜び、一同コンビニの中へ。

 それぞれが菓子パンやアイス、飲み物などを好きに手に取っていく。


「ほら、全部この買い物カゴに入れておけ。
 私がまとめてレジに通す」


 言いながら、ラブ将軍は買い物カゴを差し出す。

 そそくさ、と真希が最初に物を入れて、全員が続く。


「先に出ているといい。

 大人数で店内に居座ると邪魔だからな」


 その言葉にも全員従った。

 コンビニの外でラブ将軍を待つ七人組。


「……よし、みんな見てみて~!
 面白いものが見れるよ~」


 不意に、ステラが声を上げる。

 ガラス越しに店内のラブ将軍を指差していた。
 向こうはステラの様子に気付いていない。


「一体何が始まるの?」


 剣が問いかけると、ステラは心底面白そうにしながら答える。


「ショーグンのカゴの中に、ミーがお酒を入れといたんだよ」

「お酒!?
 未成年は買っちゃ駄目だよ!」

「そうそう。

 そんなものを制服姿の女子がレジに持って行ったら、どうなるかな~って思って」


「なんや、おもろそうやないか!」


 真希がステラのいたずらに興味を示す。

 他の者達も同様だった。
 ラブ将軍がどんな目に遭うのか興味津々。

 ガラスに張り付くように集まり、ラブ将軍の様子を見守る。


「あ、店員さん気付いた!」


 日佳留がいち早く言う。

 レジの店員が、ビールの缶を手に取っていた。

 そしてラブ将軍とビールの缶を交互に見比べる。

 ラブ将軍はこれにまだ気付いていない。
 バッグの中の財布を探しているようだった。


 そして、店員がラブ将軍に声を掛ける。

 そこでようやく顔を上げ、ビールの缶に気づくラブ将軍。

 何が起こったのか分からず硬直。


「そりゃそうやろな。
 普通缶ビールがカゴに入っとるとは思わんわ」

「というか、ラブ将軍は僕達が何をカゴに入れたか確認しなかったのか」

「きっとわたくしたちを信頼して下さっているのですわ。
 素敵な方です」

「でもそこでミーに裏切られてるからね。
 ちょーうける~」


 悪いのはお前だ、と誰もがステラに向けて思った。

 が、悪びれもしない様子から考えると、言うだけ無駄だろう。

 ラブ将軍の観察を続行する。


「将軍殿、顔を真赤にして謝っているのである」

「むっちゃ恥ずかしいんやろな……見たことないぐらい慌てとるで」

「でもなんか、普段と雰囲気違って可愛いね、ラブ将軍」


 剣が言うと、一同が頷く。

 狼狽するラブ将軍を見るのは、誰もが初めてのことだった。


 やがてラブ将軍が出てくる。

 缶ビールはもちろん買わず、他のものだけをレジ袋で持っている。

 顔は依然恥ずかしさに赤く染まり、口は真一文字に結ばれている。


 口を開いての第一声は、犯人を探す怒りの言葉。


「……誰だ、缶ビールをカゴに入れた馬鹿者は!
 どこのどのステラだ!」

「さぁ、どこの誰でしょう~」


 分かりきった問い掛けをするラブ将軍と、わざとらしくとぼけるステラ。


「正直に言わんとしばき倒す。
 怪しいと思うステラから順にしばく。

 私が犯人でしたと名乗り上げるまでしばき続けてやる!」


「そんな、ミーは本当に無実だよショーグン!
 ちょっと手が滑っただけ!」

「やはり犯人はお前じゃないか!」

「え~、でもショーグンが何でもいいって言ったし」

「だからって缶ビールをカゴに入れるやつがあるか!

 尋常ではない辱めを受けたのだ。
 この罪は償ってもらおうぞ……」


「あの、ラブ将軍。

 ちなみにどんなこと言われたんですか?」


 剣は尋ねる。
 完全に興味本位の一言。

 だがラブ将軍は恥ずかしさを笑い話にして誤魔化したいのか、すぐに答える。


「高校生であることを確認された後、留年をしていないかを聞かれた。

 後は私がお前たちのパシリか、あるいはイジメを受けている可能性を暗に心配されてしまった……恥ずかしい……」


 目を閉じて思い返し、耳たぶまで真っ赤に染めるラブ将軍。


「とにかく、ステラには相応の罰を与える。

 明日の練習、覚悟しておけ」


「うっ」

 後先考えずに行動するとこうなる。
 いい例だ。

 ステラはため息を吐き、肩を落とした。


「もうこの話は終わりだ。
 お前達、自分の選んだものを手に取れ」


 ラブ将軍は言って、レジ袋を開いて構える。

 各々が中に手を突っ込み、商品は順に行き渡る。


 最後にステラも手を突っ込むが、何も入っていない。

「あの、ショーグン。
 ミーの分は?」

「缶ビールが入っているように見えるか?」

「いえ~、全く」

「だったら諦めろ。
 それか自分で買ってきたらどうだ」

「ぐぅ……くやしい」


 ラブ将軍の反撃は効果的だった。

 ステラは思わず声を漏らす。