ツルギの剣




 シャワー室で汗を流す一同。

 不意にかしゃっ、とシャッター音が響く。

 何事か、と剣が振り返ると、そこにはカメラを構えるアバドンの姿。


「……なんでアバドンさんはカメラを持ってるの?」

「心配ご無用である。
 このカメラは防水故、壊れることはない」

「いや、むしろ壊れてくれた方が安心なんだけど」


 剣はアバドンの方に向き直りながら言う。

 すると再びかしゃっ、とシャッター音。

 隠すものも無い、正面からの全裸を写真に収められる。


「今撮ったでしょ」

「撮ってないのである」

「いや撮ったやろ」

「確実に撮ってたね」


 真希と日佳留も会話に割り込み、つっこみを入れる。


「吾輩はシャッターチャンスに反応しただけである。
 悪意は無いのだ」

「よく分からないけど、女の子の裸を撮りたかったってことでいいよね。
 変態じゃん」

「変態ではない。
 ちょっと年頃のおなごの裸体に並ならぬ興味があるだけである」

「やっぱり変態じゃん」

「変態ではな~い!」

「でも口からヨダレ出てるよ」

「おっとまずいまずい」


 剣に指摘され、苦し紛れに次の被写体を求めて移動するアバドン。


「……ねえ盾、あれ止めさせたほうがいいんじゃない?」

 剣は少し離れた場所でシャワーを浴びる盾に声を掛ける。

 だが、盾は困ったようなため息を吐いて答える。


「無駄ですわ。

 もし直接の撮影を止めさせたら、次は盗撮が始まりますもの。

 裸が撮られるだけのうちはまだマシですわ」


「えぇ……やっぱあの人、変態なんだ」


 どおりで誰もアバドンを止めないわけだ、と剣も納得……しそうになったが、いやいや、と首を横に振る。


「変態というか、それはもう犯罪だよ!」


 しかしやはり、誰も剣のように抵抗しようとはしない。

 これが慣れというものなのだろう。

 自分のいない二ヶ月分の重みを、妙な形で思い知る剣だった。





 汗も流し、一同揃って脱衣所の椅子に座って涼む。

 だらしなく、誰も制服に袖を通す気配が無い。
 下着姿のままだった。


「……あー」


 扇風機に声を掛ける剣。

 音が震えて聞こえる。

 その脇で、アバドンとラブ将軍が下らない会話を繰り広げている。


「やはり吾輩は、大きい方が良いと思うのである」

「愚か者め。
 未成熟のあどけなさこそ至高だ」


 多分胸の話だろうな、と推測する剣。


「ステラやマキ殿ののおっぱいを見てみるのである。

 あれは……もう、たまらんのである。
 触りたい」


「いいや、日佳留君や盾君のような成長途上の胸こそ美しい。
 撫でたい」


 この二人は馬鹿なのかな。
 と、剣は思った。

 実際に馬鹿なのだろう。

 筒抜けの会話に誰もが呆れている。

 が、二人は厭わず話を続ける。


「ただ、一つだけは間違いないのである」

「ほう、それは何だね」

「ナイル殿のような絶壁だけは論外」

「確かにな」


「ちょっと待ってくれ二人とも!

 僕に失礼じゃないか!?」


 とばっちりを受けて抗議するナイル。

「黙れ壁!」

「お主なんかNBでシールドブレイク狙ってりゃいいのである!」

「よく分からないが馬鹿にしてるのは確かだね!?
 僕だって多少気にしているんだから、この問題は触れないでほしいのだが!」


「誰がお前の胸など触るか!」

「触る胸も無いのに偉そうである!」


 あまりにも酷い言われよう。

 ラブ将軍とアバドンは白熱しているのか、ナイルに向けて躊躇いも無く暴言を浴びせる。

 さすがにナイルが可哀相だ、と剣はナイルの肩を持つ。


「ナイルさんだって、きっと男装とか似合いますし、素敵ですよ」



 逆効果だった。

 ナイルは膝を抱えていじけてしまう。

 剣は意図せずトドメを刺してしまった。