ツルギの剣




 その後、野球部の練習は何事も無く進んだ。

 ラブ将軍の組んだメニューに従い、各人が練習を始める。

 剣はまだ退院したばかりということもあって、比較的軽い内容のメニューだった。


 一方で日佳留とナイルは、野球経験の格差を埋めるため、ラブ将軍自らが相手する特別メニューでの練習となっていた。

 内容も実戦さながらの重いものだった。


 やがて日も暮れ、夜になる。

 練習も終わり、一同礼をして、帰りの身支度。

 まずは身体にまとわりつく汗を流さねば、とシャワー棟の脱衣所に全員集合。


「疲れたぁ。

 さあ剣、アタシがユニフォーム脱ぐの手伝ってあげるよ」


 突然、剣の服に手を掛ける日佳留。

「いや、さすがに服ぐらい自分で脱げるよ」

「いいから、いいから♪」


 心底楽しそうな様子。

 剣はため息を吐き、仕方なしに脱衣を任せる。

 だが、そこで一声物申す者もいた。


「待ちたまえ日佳留サン。

 剣サンの服を脱がすのは僕だよ」


「なんで張り合うの……」

 ナイルの行動に呆れる剣。

 しかしそこは聞く耳持たないナイルだ。

 問答無用で剣の服を掴む。


「さあ日佳留サン、離したまえ」

「うっさい!」


 ぐいぐいと二人で引っ張り合う。

 ユニフォームが伸びてしまうのだが、こうなると二人は剣の話を聞かない。


 そこへさらに盾が乱入する。


「お止めなさいな、お二人とも!

 剣が困っていますわ!」


 言いながらも、やはり剣の服を引っ張る。

 何でこうなるんだろう、とうんざりする剣にさらなる追い打ち。

 真希までが、無言で剣の服を掴む。


「……真希はどういう理由で私の服を掴んでるの?」

「楽しそうやから、やで!」


 キラキラと目の輝く笑顔だった。

 はぁ、と一際大きいため息を吐く剣。


「ちょっと!
 アタシが最初なんだから剣のお世話はアタシがするんだからね!?」

「いやいや、抜け駆けは良くないな日佳留サン」

「というか剣のお世話をするならそれこそわたくしが適任でしてよ?」

「お前らよりウチの方が適任や。
 ここは正捕手様に譲ったらどうや?」


 四人、一歩も引かない。


「それならこうしましょう。

 まず一人がユニフォームの上を脱がせる。
 そして次の一人が下を脱がせる」


「なるほど、役割分担だね?

 それならアタシ下着脱がすね!」


「いやいや、そういうデリケートなことは僕のような紳士的な者がやるべきだ」


「いいえ剣の下着はわたくしのものです。

 貴女達はアンダーシャツで我慢なさい」


「変態やないかい!」


「真希だってどうせ興味あるのですわよね?」


「……変態に下着担当は任せられへんからウチがやるわ」

「やっぱり変態ですわ!」


 四人がそうやって言い合う間に、剣は自分でユニフォームを脱いでいた。

 話に熱中するあまり、剣のユニフォームを掴む手は離れていたのだ。


「シャワー、先行ってるよ」


 脱衣所を後にする剣。

 四人は慌てて後を追いかける。


「剣サン、僕が背中を流してあげよう」

「違うよそれアタシの役目だもん!
 今決めた!」

「いいえわたくしこそ適任ですわ!」

「いやシャワーで背中流す奴は別に要らへんやろ!」