ツルギの剣




 放課後。

 剣は真希と日佳留に引っ張られながら野球部の部室へ向かう。


「よーし。

 剣、びっくりするで?

 扉の向こうにゃドッキリゲストがおんねんで?」


「いや、あのね真希」


「ほらほら、剣ったらモタモタしないの!

 それともアタシが抱っこして連れてってあげよっか?」


「あ?
 日佳留、剣はウチの女やで、なに手ぇ出そうとしとんねん!」


「何よ~、剣はアタシのものだからね!」


「あの、二人とも」


「ええから剣は付いてくりゃええんや!」

「そうだよ、アタシに付いてきね!」

「いやウチやろっ!」

「アタシですぅ~っ!」


 聞く耳持たない二人。

 これには剣も困惑するしか無い。

 まるでナイルと日佳留の口喧嘩に巻き込まれた時のよう。

 これにナイル本人まで加わる可能性を考えると、つくづく先が思いやられる。


 剣はため息を吐きながら、仕方なしに二人に引き摺られていく。

 そして部室の正面に到着。


「それじゃあ、開けるよ?

 開けちゃうよ!?」


「びっくりすなよ~?」


 楽しそうな二人、だが、既に剣には想像がついていた。

 扉の向こうに誰が居るのか。

 日佳留と真希の魂胆まで、全部お見通し。


「はい扉あけちゃった~っ!」

「いらっしゃ~い、ってやつやで剣!」


 ぽん、と真希が剣の背中を押し、部室へ入れる。

 やはり剣の想像通り、部室には盾が居た。

 練習用のユニフォームに着替え、ちょうどグラウンドへ出るところだった。


「おつかれ、盾。
 お昼ぶりだね」

「ええ。
 お昼ぶりですわね、剣」


 二人は何てこともなく言葉を交わす。

 そして盾はそそくさとグラウンドへ向かう。


「ほら、お二人とも。
 アホな顔してないでさっさと準備なさい」


 盾は言い捨て、走り去った。

 想定外の事態に真希と日佳留は固まっていたが、すぐに意識を取り戻す。


「ちょっと待てや盾!
 だれがアホ面じゃ!」

「っていうか二人とも、なんで驚かないのよ~、もう!」


 それぞれが感情のままに声を上げる。

 剣はそんなアホ二人には構わず、自分のロッカーはどこかと探すのだった。