じりじりと焼き付けるような日差し。
ぎいぎいうるさいセミの声。
季節は夏。
剣はこの日、ようやく退院を迎えた。
やはり超野球少女は真っ当な人間とは呼べない存在らしく、腕の怪我はわずか二ヶ月で完治した。
今はまだ綺麗に動かせないものの、リハビリを続けていればじきに動くようになる、とのこと。
運び込まれた段階では失血死寸前。
入院初期には、再び野球をやるのは絶望的な状態だ、とまで言われた。
それらが全て嘘だったかのように、剣の体調は回復していた。
入院生活の最中、何度も、いろいろな人が見舞いに来てくれた。
父、藤四郎は無論毎日のように。
真希も同じようにほぼ毎日。
それに次いで日佳留とナイル。
時々、ラブ将軍を引き連れて。
また、稀に元野球部の面々も訪れてくれた。
話によると、第二野球部を作り、同好会のようなものとして野球を続けるらしい。
また、元部員の一部はマネージャーとして野球部に戻った。
選手としてはグラウンドに立てないものの、これからも深水女子野球部の力になりたい、という者が数名出てきたらしい。
それもこれも、全てはあの日の戦い。
聖凰野球部二軍との決闘を観戦してのことだった。
結局――試合結果は深水女子の敗北だった。
四対十四で、二回裏コールド負け。
剣、盾、真希が球場を抜けて、残されたのは全部で五人。
三対二の、まるで野球をやるとは思えない人数での一騎打ち。
カウントは盾を仕留めたワンアウトのまま試合続行。
深水女子に残された三人では、アバドンとステラの二人を抑えることが出来なかった。
試合に負けて、剣は野球を辞めなければならないな、と考えていた。
見舞いに来た真希にこの話をしたことがあった。
「それやけどな。
剣、野球続けられるようになったんやで!」
と、真希は嬉しそうに語った。
だが、詳細を聞いても教えてくれない。
全ては退院して、学校で分かる、と。
曰く「まあ、楽しみにしとけよ。
ホンマおもろいことになっとるんやで」とのこと。
退院の翌日、二ヶ月ぶりの登校。
日佳留と二人、久しぶりの感覚。
「――って感じで、私の担当の先生、うさぎのうんちの話ばっかりするんだよ。
ほんと、あれには困ったなあ」
「そ、そうだったんだ……ヤな先生だね、臭そう」
剣の暴露に困惑しながらも、正直に返答する日佳留。
「ホントだからね?
ホントに隙あらば何でもうさぎのうんちの話に持って行こうとする人で……」
「ねえ剣、その話やめよ?」
日佳留に言われ、剣はしぶしぶ口を噤む。
あの先生の件に関しては、まだまだ言い足りない。
二ヶ月分のネタがあるというのに、これでは消化不良だ。
「それよりさ、剣はもう野球部に顔出せるの?」
日佳留が問いかける。
剣は頷いた。
「まだ投球の練習は出来ないけど、それでも守備やバッティングは出来そうだし。
みんなが練習してるところも見たいし。
今日から野球部の練習に参加するつもりだよ」
「うん、それ聞いて安心した!
実は、剣にはまだ言ってないすご~いサプライズがあるんだよね。
だから、部活の時間まで楽しみにしててね!」
「分かった。
楽しみにしとくね」
サプライズとは何なのか。
真希の言っていたおもろいことと関係があるのだろうか。
剣は今から楽しみで一杯だった。
