「……真希、私投げるよ!」
「おう、はよせえや!」
「私、真希を殺すことになるかもしれない!
それでも投げるよ!」
「ええから!
それがウチの仕事やからなぁ!」
言葉を交わし合い、そして真希は腰を下ろす。
キャッチングの姿勢を取る。
盾も剣を迎え撃つべく、バットを構えた。
いよいよ――クリオジェニックショットを放つ時が来た。
剣は足を上げる。
深く、白球を抱き込むような独特の姿勢。
青い闘気が轟々と立ち上がる。
そのすべてが剣に向かって収束していく。
まるで大気中の何かを吸い込むようにも見える。
そして――剣は、投げた。
前へ身体が弾ける。
地面を擦る寸前の、超低空アンダースロー。
闘気の渦が白球へ、腕へ集まっていく。
圧縮された闘気はさながらウォーターカッターのように剣の皮膚を、ユニフォームを引き裂く。
鮮血が飛び散りながら、それでも剣は闘気を白球に込める。
そう。
クリオジェニックショットとは、ありったけの闘気を白球に込めた、超高圧弾仕様のディープショットのことだったのだ。
白球は剣の込めたすべての闘気を乗せ、血を吸って、大地を引き裂きながら突き進む。
高圧の闘気が大地にメスを入れながら飛んで行く。
盾もこれに対抗。
赤い闘気を極限まで高める。
奥義、斬燿を放つ準備。
限界を超えてバットへ注ぎ込まれる、圧縮された闘気。
煉獄を投げた時のように、盾の身体から炎が吹き上がる。
ユニフォームを焦がし、皮膚を焼く炎。
それでもなお、盾は闘気を込め続ける。
衝突の瞬間は来た。
クリオジェニックショットはディープショット同様、盾の手元で跳ね上がる。
ディープショットよりも大きく、鋭い変化。
だが、盾の斬燿はこれを確実に捉える打法。
二つの究極の技が激突。
赤の闘気が炎を吹き荒らし、青の闘気が水の刃で空を裂く。
力が競り合い、均衡を保つ。
いや――僅かに、剣の方が押していた。
クリオジェニックショットの恐ろしさはむしろ、ここからだった。
「斬り裂けええェッ!」
剣が魔球に祈りを込めて、絶叫。
球に込めた闘気が開放される。
圧縮された水が吹き出る時の威力は、ただ放水するよりも遥かに強い。
魔球もまた同じ。
クリオジェニックショットの軌道に伸びる光の尾が長く伸び始める。
内部に込めた大量の闘気が、ジェットと化して球を押し出す。
また、球自体も闘気の吹き出る刃の塊と化した。
高速回転、高速噴出により生まれる力が、次第に盾の闘気を削り、喰らい、飲み込んで押していく。
十数秒の均衡が崩れた。
斬燿が――ついに弾かれた。
正面からの力の勝負に敗北した盾。
だが、戦いはこれで終わりではない。
まだ、真希の捕球という難関が残っていた。
「任せろよォッ!」
真希もまた、己の緑の闘気を立ち上がらせ、球を受け止める。
クリオジェニックショットの威力を、無理やり風の力で押さえ込もうとする。
だが、魔球の声は鳴り止まぬ。
轟々と闘気を放ち続け、まだまだ加速する。
斬燿を打ち破ってもまだ、有り余るエネルギー。
真希の闘気は、正直に言って盾に劣る。
真希自身が、これをよく理解していた。
これはつまり――クリオジェニックショットを止める手立てが無いことを意味した。
(ここで……ウチは終わるんか。
剣にまた悲しい思いをさせてまうんかッ!)
真希は思う。
そんなのは嫌や!
誰がこんな所で死んでたまるかと。
風の力を限界まで引き出す。
それでもまだ、魔球の推進力に打ち勝てはしない。
――違う。それじゃあ、クリオジェニックショットは取れないよ。
真希の脳裏に、声が響いた。
ような、気がした。
その声はとても優しく、しかし、まるで共に戦いの最中で必死にあるような、不思議な声だった。
真希は疑問を抱く。
クリオジェニックショットを取れないとは、どういうことだろうか。
力の魔球を抑えるには、それ以上の力で抑えなければいけないのではないか。
いや、と。
真希は考えなおす。
