ツルギの剣




「先程は不意を突かれましたが、次はそうも行きませんわよッ!」


 盾は警戒しつつ投球。

 炎城。
 赤の闘気と共にナイルへと迫る。


「僕は、正面から行かせてもらうさッ!」

 ナイルは言って――バットを、まるで剣道でもするみたいに上段で構える。


「受けよッ!
 これが僕の新打法『撃鉄打法』さ!」


 炎城の接近にタイミングを合わせ、バットが振り下ろされる。

 すると、銀色の闘気がバットを中心に渦巻く。

 渦の内側にボールを絡め取り、締め付ける。


「点火ッ!」


 ナイルはバットを渦から引き抜き、通常のスイングで白球を打撃。

 途端、魔球の闘気が弾け、爆発を起こす。

 だが――銀色の渦に巻き込まれ、爆発は盾のコントロール通りにならない。


 まるで銃身を走る弾丸のように、白球はジャイロ回転をしながら射出される。

 矛先は銀の銃身が向いていた、ライトスタンド一直線。
 大飛球である。


 これもまた、剣の助言をきっかけにした打法であった。

 ナイルは剣の言葉を思い出す。


『――そして、炎城の闘気は表面に見えている部分がメインじゃない。

 あれは囮のエネルギーなんだよ。


 実際は白球の内側に、まるで火薬みたいに封じ込められてる。

 言わば、あの表面の闘気は薬莢。


 爆発を起こすために封じ込めた闘気が暴発しないための仕掛けなんだ。

 球の中心から闘気の爆発が起こるから、今までの私達の打法じゃ太刀打ち出来無かった。

 内側から闘気ごと吹き飛ばされていたから、そもそも白球に私達の力が届いていなかったんだよ。


 だから、正面からパワーでねじ伏せられたみたいに見えた。

 でも、実際は小細工に過ぎない。


 内側に闘気が封じられているなら、それを闘気で叩けばいい。

 そうすれば炎城は暴発する。
 盾のコントロールは効かなくなる』


 この言葉から、ナイルは打法を考えた。

 己の闘気で白球を縛り付け、空中に静止させた後、内側の闘気を貫く。

 二段構えの打法。


 炎城の爆発、そして二段目のスイングによるパワーで打球の威力は二倍。

 いや、それ以上だった。


「――そうはさせないのであるッ!」


 センターに立つアバドンが叫ぶ。
 そして、闘気を開放した。

 黒紫の波動がアバドンの右腕に集まる。

 手の甲に浮かび上がる『滅』の文字。

 ここで初めて、アバドンの能力が披露される。


「これが吾輩の力ッ! 『衰滅波動』であるッ!」


 宣言し、アバドンは右腕を打球の方へと突き出した。

 すると黒紫の波動が解き放たれ、白球に飛来。

 衝突し、ホームラン確実とも言える威力を殺した。
 途端に白球は自由落下を開始し、ライト前に落球する。


 結局、ナイルの打球はライト前ヒットで終わった。

 だがその間にも日佳留が縮地で塁を周り、ホームベースを踏んでいた。


 一点を手に入れた深水女子。
 これで同点。


 続くヒットに焦る聖凰。

 フィールド上の野手の多くが困惑していた。

 こんなのは想定外だ、とでも言うように、超野球少女以外の部員全員が恐怖していた。


 このままでは負けるかもしれない。

 どころか、生命の危険さえある。

 超野球少女の野球に人間が付き合っていては、それも当然のこと。


「――皆さん、落ち着いてください!
 わたくしが必ず抑えます。

 必ず勝ちます!

 貴女方を危険に晒すことだけはなんとしても避けますから!」


 盾は雰囲気の乱れを感じ取り、大声で呼びかける。

 だが、効果は薄い。
 現に炎城は二度も破られている。

 信用出来ないのも当然。


 苦い表情をしながら、盾は次の打者に向き合う。

 深水女子のプレイングマネージャー、ラブ将軍。

 本名、越智愛子。