ベンチでの長い話を終え、打席に立つ日佳留。
「何を話してらっしゃったのかしら。
わたくしの炎城は無敵。
小細工など無意味ですわよ」
盾は不敵に宣言してみせる。
だが、日佳留はもうその手には乗らない。
「無意味かどうか、試してみたほうがいいんじゃない?」
ぴくり、と眉を動かす盾。
(まさか――魔球『炎城』の正体がバレたのかしら。
いいえ、そう簡単にバレるものではありませんわ。
まだ二回表。
わずか五球しか投げていませんもの)
リスクを計算する盾。
それに、バレたとしても容易く攻略出来るものではない。
炎城は一筋縄ではいかないのだ。
自分の力を信頼し、盾の投球。
炎城が日佳留へと迫る。
日佳留はテイクバックし、ごく普通のスイングに入る。
(ふん、やはりハッタリでしたわね)
盾は安堵した。
だが、これが油断、隙となった。
日佳留はそのまま、バットを振り切らなかった。
なんとバットの柄頭の部分で白球を叩きつけたのだ。
「なっ……!?」
慌てる盾。
だが、もう遅い。
普通にスイングするより早く、それも下方向に強く打ち付けられた球はホームベース正面でワンバウンド。
慌てて盾は爆発を引き起こし、白球を自分の手元に飛ばす。
しかし日佳留の縮地は送球よりも速い。
盾が捕球した頃には、すでに一塁を走り抜けていた。
内野安打である。
「くッ!
まさかこんな方法で来るとは……」
「へへ~ん、どうだ!
これがアタシたちの力だよ!」
自慢気に言ってみせる日佳留。
だが、この打ち方を思いついたのは剣の魔球解析のお陰だった。
剣の語った言葉を思い返す。
『――まず、炎城はピッチャーにノーバウンドで打球を飛ばすことが前提の魔球だよ。
そのためには爆発による運動量を、打球のパワーに合わせて繊細にコントロールする必要があるんだ。
だから炎城を打った時の打球は同じ軌道にはならない。
アドリブで、盾の判断でコントロールしてるんだ。
しかも打球が実際に飛ぶ前の段階で判断しなきゃいけない。
だから真希が打った時は、想像以上に真希の打球が強かったから、打球の浮き上がりを抑えるので精一杯だった。
結果として弾丸ライナーになったんだ。
そして私の時は、私の体勢が崩れて打球の威力が想像以上に弱くなった。
だから、盾は初めて捕球の為に動いた。
前進しなきゃノーバウンドに出来なかった』
剣の解析は正しかった。
故に、日佳留の不意を突く打法に判断が遅れ、爆発がワンバウンド後となった。
こうして二死、ランナー一塁。
打席には二番、ナイル。
