その後、聖凰の四番打者を三振に打ち取り攻守交代。
二回表、打順は深水女子の四番、阿倍野真希。
「よっしゃ、かかって来いや!」
打席に立ち、闘気を解き放つ。
風の形は風神打法。
「……真希、とおっしゃいましたね。
聞こえていましたよ。
貴女がベンチで言っていたこと。
わたくしを阿呆と呼んだことも、おおよそ内容は理解していますわ。
お姉様は死んで無念を残した、執念ではなかった、と」
「なんや、聞いとったんか。
気に入らんのか。
意地でも弓は憎しみを抱いて死んだことにしたいっちゅうわけか?」
真希は怒気を含む声で言う。
なぜか盾は、首を横に振って応えた。
「いいえ。
それぐらいのこと、わたくしも分かっていますわ。
……あの時、わたくしが勝手に抱いた憎しみをお姉様のものと偽り、剣を責めた。
理解するまで時間は掛かりました。
しかし、今はもう分かる。
弓は剣の魔球を受け止められずに死んだ。
無念を抱いているのだと」
悲しそうな声で語る盾。
真希はこれを訝しんだ。
「せやったら、なんでこんな決闘仕掛けてきたんや!」
「話が別だからですよ。
最初こそ、わたくしは個人の憎しみに囚われていましたわ。
ですが、剣の野球が他人を傷付ける恐ろしい野球であることに変わりはない。
それに、始まりこそ間違いであれ、わたくしの信念が作り上げた野球道こそ正義なのです!
見なさいッ!」
盾が右腕を上げ、グラウンド上の野手を示した。
見ると、少女達は怯えていた。
超野球少女でもないのに、この異常な戦いに巻き込まれた者達。
恐怖に足がすくみ、身動きさえ取れない者も居た。
「このグラウンドに立つ野手の多くは超野球少女ではありません。
さぞ恐ろしいでしょう。
力の違いに傷つき、場合によっては生命を落とすかもしれない戦いの中に居るのです。
それでもわたくしを信じて彼女達はここに立って下さっています。
野球をやるため、九人でいるため、恐怖を乗り越えたのです。
この信頼には応えねばならない。
故にわたくしは戦いますわ。
歪な五人野球で、しかも他人の生命の安全を厭わぬ戦いをする、深水剣の悪道野球に必ず勝たねばなりません!
誰一人傷つけず、誰一人つらい思いをさせず。
戦うのはわたくし一人だけでいい。
傷つくのもわたくしだけでいい。
そのために編み出した奥義こそが斬燿であり、炎城。
この二つの力こそが、わたくしの正義の証なのですッ!」
吠える盾。
そして、いよいよ投球。
腿を上げ、前へ突っ込むような大きい踏み込みからのオーバースロー。
赤い闘気を白球に乗せて、放つ魔球は炎城。
誰一人打つことの出来ないとされる魔球。
「ごちゃごちゃうっさいんじゃ、ボケェッ!」
真希は怒鳴り声を上げながらバットを振る。
風神打法が炎城と衝突。
風と炎の闘気が混ざり合い、激しく荒れ狂う。
闘気の押し合いとなり、ボールとバットがかち合ったまま微動だにしなくなる。
