ツルギの剣




 タイムが終了して、盾の打席。

 剣が二球目に投げた球はピュアディープ。
 これも最初とは異なる変化をする。

 ボール一つ分、盾の手元の方へとスライド。

 このピュアディープも剣の成長により、左右どちらかへボール一つ分動かせる。


 盾のバットは空振りせず、芯を外しての流し方向、レフト線へのファールボール。

 これでカウントはツーストライク。


「ふん……この程度ですか」

 盾は鼻で笑う。


「この程度の魔球でわたくしを抑えようなどとは……愚かですわね」


 次の瞬間。
 盾の赤い闘気が膨大に膨れ上がる。

 続いてバットへと流れ込み、まるで熱く熱したような緋色に輝かせる。


「来なさい、剣」


 盾の言葉に頷く剣。

 そして第三球。
 今度はディープショット。

 これまでの魔球とは異なり、意図的に力を込めた限界突破のディープショットだった。


 青い奔流に乗り、白球が泳ぐ。

 盾はこれに――狙いも定めず、ストライクゾーンの真ん中辺りを振りぬくようにスイングした。


 途端、バットの赤い闘気が膨れ上がる。
 光の金槌のような形となる。

 ストライクゾーン全域を覆ってもまだ余るほどの大きさ。

 自然とディープショットは、盾の闘気へと突っ込んでく。


 両者の闘気がぶつかり合った瞬間に炎が弾ける。

 赤い光が爆発し、白球を空高く舞い上げた。


「任せたまえ!」

 外野を走るナイル。

 両手から闘気を開放し、大地を跳ね上げ、空高く舞い上がる。
 盾の打ち放った打球に追いつき、捕球。


「無駄ですわッ!」


 盾の声が響く。

 打球はナイルに捕球されながらも、そのままナイルごと飛翔する。


 纏めてバックスクリーンに直撃。

 ナイル自身は辛うじて怪我も無かったが、一点を奪われたことには変わりない。


 誰もが唖然と振り返り、バックスクリーンに目を向ける中。

 盾はダイヤモンドを回り終え、ホームを踏む。

 そして、剣に向かって語る。


「言ったでしょう、わたくしは一人でも勝てるように自分を鍛えあげました。

 奥義は何も、投手だからと言って魔球に限らない。

 わたくしの奥義『斬燿』は、どのような魔球でも捉えることが出来る。

 そして相手の魔球を闘気ごと爆発で吹き飛ばし、白球は強烈な打球となってスタンドに入るまで飛ぶ。

 絶対勝利の為に新たに生み出した打法ですわ」


 強い。

 剣は盾の力を思い知った。


 このままでは勝つことも出来ない。

 ディープショットでは斬燿を弾き返し、ストライクを取ることが出来ない。
 打たれたら必ずホームランになる。

 この打法と勝負するには、正面から力で押し合いをするしかない。

 そう――かつて中学の時に習得した魔球、クリオジェニックショットでなければ。


「剣、気にせんでええ!

 まだ一点や。
 次の攻撃でどうにかすりゃええんや!」

 真希に励まされ、どうにか笑って頷く。

 だが、現実は既に見えている。


 クリオジェニックショットを投げる、という選択肢。

 勝つために仲間を、自分の半身とも言える少女を殺してしまうかもしれない。

 踏ん切りの付かない剣は、俯いたままだった。