ツルギの剣




 とある学園の、付属幼稚園。


 剣と、盾、そして弓はそこで知り合った。

 今となっては名前も覚えていない場所の、遊具や砂場のある広場で、三人はいつも共に遊んでいた。


「ゆみ~!
 じゅ~ん!

 こっちこっち!」


 幼い頃の剣は快活で、よく走り回る子供であった。

 いつもどおり、興味の向いた方へ駆けていって、盾と弓を呼ぶ。

 盾は遊ぶのが楽しくて、急いで駆けていく。

 弓は二人が危ないことをしないか、心配そうに見守りながら歩み寄る。


 だが、そんな三人のところへ黒いスーツ姿の男が姿を見せる。


「あ……」

 男の姿を見ると、急に三人は静かになる。

 特に、剣は心底嫌そうな顔をして黙り込む。


「弓お嬢様、盾お嬢様。

 お帰りの時間です」


 男の言葉に、弓と盾は頷く。
 しかし、表情は否定の感情を現していた。

 嫌そうなしかめっ面のまま、男の方へと寄っていく。


「それと、お二人とも、もうあの娘と遊んではなりませんと何度も申し上げたはずです」

「そんなの、いやだ!」

 弓が声を上げる。

 続けて、盾も頷いて言う。

「わたくしもいやですわ!
 つるぎとあそびたいんですの!」


 二人の少女に言われ、男は困ったような表情を浮かべる。

「また、よくお話をしましょう。

 ともかく、帰りましょう」


 そうして、盾と弓の二人は男に連れられ、去っていった。

 剣は、明日は人の目を盗んでこっそり遊ぼう、と考えつつ二人を見送った。





 深水剣と火群盾――そして火群弓は、幼なじみであった。

 物心ついた頃から共に成長してきた、三人姉妹のようなもの。

 盾と弓は大財閥、火群グループ大総帥の娘であり、いずれ火群を継ぐ者だった。

 一方で剣は、大財閥深水グループの家系にギリギリ含まれるぐらい遠い血の家の娘。


 本来なら、出会うことさえありえないような身分違い。

 しかも、深水と火群はライバル同士である。


 故に、三人は幼い頃から迫害を受けて育った。

 互いの家名に属する大人が、敵を貶めようと様々な方法で迫った。


 これがあったからこそ、三人は団結した。

 盾、弓、剣。
 この三人が姉妹であり、血の繋がりよりも濃い友情で結ばれた家族であると。

 また、三人共が超野球少女であったため、これを誓いの証とした。

 つまり三人は、子供ながらに生きるため、迫害に抵抗するためのささやかな手段として野球を選んだ。