「剣、貴女の誓いはよく理解していますわ。
わたくしも超野球少女。
野球に生きるということの重み、よく分かります。
ですが、貴女の野球は人を殺した。
貴女の魔球はお姉様を殺したのです。
そんな邪悪な野球があるものですか。
人を傷付けるような恐ろしい野球などあってはなりませんッ!」
「そんなもの、分かってるよ。
知りすぎてる。
だからこそ、私はかつて間違えてしまったんだ。
戦いに生きるなら、誰だって死に向かう道を歩くことになる。
生命は重い。
でも勝負の世界では勝ち負けの方がずっと重い!
罪も業も、邪道邪悪の全てを背負ってでも、戦いの最中に膝をつくことはできないんだ!」
「戯言をおっしゃいますわね。
わたくしはそれを許さないと言っているのです。
戦いに生きるなら一人で死になさい。
戦場に立つのは戦士だけではありません。
いいえ、例え戦士であったとしても、他者の生命を戦場の理屈で奪うことなど、わたくしは許さない。
だからわたくしは剣、貴女を殺す。
野球人としての深水剣の生命をこの日限りで終わらせてやりますわ!」
互いの主張がぶつかり合い、いよいよ勝負の時。
剣が投球を始める。
一球目。
魔球リッチディープであった。
しかし、以前に投げた時とは軌道が異なる。
上昇しながらも、スライダー方向へぐいっと動く。
結果として外一杯からインコースまでスライド。
盾も必死に対応するが、バットの根本がギリギリ掠りそうな程度が限界。
空振りのワンストライク。
「ふん、小癪な。
そうやって小手先で逃げ続けるつもりかしら、深水剣ッ!」
盾の煽り。
剣は動じない。
が、何故か不意に真希が口を開く。
「……なあ、なんでや。
なんでアンタはそこまで剣に野球やめさせようとするんや」
率直な疑問。
例え剣が人殺しなのだとしても、盾の態度は極端すぎる。
「やっぱ、中学の頃にあったことが原因なんやろ?
教えてくれや。
アンタと剣の間に、どんなことがあったんや」
真希の問いかけ。
すると、盾は不意に目を閉じ、構えたバットを下ろす。
「そうですわね。
もっと後に、一番嫌な時に教えて差し上げようと思っていましたけれど。
せっかく聞かれたのです、語りましょう」
言って。
盾はタイムを宣言する。
試合が中断し、深水女子の全員と盾、合計六人が一塁側ベンチの方へ集まる。
「では、始めましょうか。
深水剣の犯した罪。
わたくしのお姉様、火群弓の最期の話を――」
そして、盾は語った。
剣と、そして火群弓と呼ばれる少女の話を。
