数十分の間に、空は青く染まっていて、雲もだいぶ、薄くなってきていた。
やわらかく揺れる桜の蕾は、まだまだこれから広がっていくに違いないと思わせるほど膨らんでいた。
そうやって去年出会った頃よりも楽しそうに、桜並木の真ん中で、笑っている光平さんを見つけた。
袴ではなく、ぴしっとしたスーツ姿。きらきらして見えるのは、きっと気のせいではないだろう。
俺は、その時が来るまで、じっと息を潜めていようと思て、隣の鷹生を見たら、おんなじように別の先輩にうっとりとした視線を向けていた。
「あー……みんな眩しい」
「同感」
めずらしくトーンダウンしている鷹生は、どうやら自分の入っていた部活の先輩の姿を目に焼き付けるために来たらしい。その先輩よりも、光平さんを先に見つけてどうするんだと思ったが、それ以上は聞かなかった。
「はぁー……先輩、きっと袴だろうなあ……めっちゃくちゃイケメンだし。塩顔だから似合うに決まってる」
「妄想はいいから、探さなくていいのかよ」
「たぶん、伸二のイケメン先輩と同じ学部だから、一緒にいればそのうち来るでしょ」
「だからその呼び方……って、なんで、俺の先輩なわけ」
「今更じゃん」
「う……」
図星すぎて、どうしてそういう解釈になるんだよ、と深くツッコむこともできずに流したときだった。
鷹生がばっと立ち上がると、駆け出して行った。
「あ。伸二。あそこいた。スーツ」
「へ?」
「じゃあな!」
鷹生はそう言って、目当ての先輩の元へ颯爽と去って行った。
いや。うん。そのほうがいいとは思うけど。
俺、光平さん見失ったんだけど……!
内心の焦りをよそに、なんとか目を皿にして、光平さんを探す。
いるか。いないか。わからない。
どうしよう、と慌てていたときに、光平さんらしき姿を見た。
「こ、光平さん!」
瞬間。俺の喉は、全開になっていた。
あ、と思ったときには、その辺りにいた卒業生ほか、何十人もが、俺の方を振り返っていた。
久方ぶりの羞恥。入学当初に感じていたそれ以上の視線。
だが、その中に、一人だけ。
「……馬鹿野郎が」
俺を違う目で、優しく見ていた、光平さんがいた。
やわらかく揺れる桜の蕾は、まだまだこれから広がっていくに違いないと思わせるほど膨らんでいた。
そうやって去年出会った頃よりも楽しそうに、桜並木の真ん中で、笑っている光平さんを見つけた。
袴ではなく、ぴしっとしたスーツ姿。きらきらして見えるのは、きっと気のせいではないだろう。
俺は、その時が来るまで、じっと息を潜めていようと思て、隣の鷹生を見たら、おんなじように別の先輩にうっとりとした視線を向けていた。
「あー……みんな眩しい」
「同感」
めずらしくトーンダウンしている鷹生は、どうやら自分の入っていた部活の先輩の姿を目に焼き付けるために来たらしい。その先輩よりも、光平さんを先に見つけてどうするんだと思ったが、それ以上は聞かなかった。
「はぁー……先輩、きっと袴だろうなあ……めっちゃくちゃイケメンだし。塩顔だから似合うに決まってる」
「妄想はいいから、探さなくていいのかよ」
「たぶん、伸二のイケメン先輩と同じ学部だから、一緒にいればそのうち来るでしょ」
「だからその呼び方……って、なんで、俺の先輩なわけ」
「今更じゃん」
「う……」
図星すぎて、どうしてそういう解釈になるんだよ、と深くツッコむこともできずに流したときだった。
鷹生がばっと立ち上がると、駆け出して行った。
「あ。伸二。あそこいた。スーツ」
「へ?」
「じゃあな!」
鷹生はそう言って、目当ての先輩の元へ颯爽と去って行った。
いや。うん。そのほうがいいとは思うけど。
俺、光平さん見失ったんだけど……!
内心の焦りをよそに、なんとか目を皿にして、光平さんを探す。
いるか。いないか。わからない。
どうしよう、と慌てていたときに、光平さんらしき姿を見た。
「こ、光平さん!」
瞬間。俺の喉は、全開になっていた。
あ、と思ったときには、その辺りにいた卒業生ほか、何十人もが、俺の方を振り返っていた。
久方ぶりの羞恥。入学当初に感じていたそれ以上の視線。
だが、その中に、一人だけ。
「……馬鹿野郎が」
俺を違う目で、優しく見ていた、光平さんがいた。

