――ピンポーンパーンポーン――

授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、教室は一気に騒がしくなる。

ユキナは周りの喧騒を無視して、スマホをいじりながら目の前の光景に目を向けた。

　隣の席のクラスメイトが、画面を見ながら盛り上がっている。

「見た？最近話題になってる配信者」

「ああ、ダンジョンの中でモンスター倒してる人ね」
　
「あの人、めっちゃ無口だけど強すぎて人気なんだよな」

　その会話に耳を傾けるユキナ。

　興味が湧くが、どこか心の中で冷めた自分がいる。

　「私なんかじゃ無理だよな」と自嘲しながらも、気がつけばその話題が気になって仕方がない。

　その後、家に帰ったユキナは、スマホで調べてみることにした。

　気になる配信者の話を、隣の席のクラスメイトが見ていた配信を頼りにこっそり調べることにした。

　画面に映し出されたのは、笑顔も、可愛さも、カリスマもない。
　
　ただただ無精ひげを生やした筋骨隆々の中年男性。

　彼は無口で、一言も発さずにモンスターを次々と倒していく。

　その背中に、クラスメイトたちは歓声を上げていた。

　その瞬間、ユキナの頭に稲妻が走る。

「そうか。配信者になれば、人気者になれる。かも⋯⋯」

　ユキナは心の中でそう考えた。

　自分の強さが何かもわからないままで、「冒険者」という存在が配信をしていることを知った。

「配信者って、誰でもなれるんだ。面白さとか、見た目なんて関係ない。私でもできるかもしれない」

　ユキナは早速、図書室へ行き、ダンジョンのことを調べ始めた。

　図書館でダンジョンの事を調べ続けて⋯⋯。
　
　そして、16歳から探索者のライセンスを取得できることを知り、その瞬間に心に決めた。

「16歳になるまで特訓して、絶対にライセンスを取ろう！」

その後、小さくガッツポーズを決め、ユキナは本を読み漁りながら自分の夢を膨らませた。

　放課後、授業が終わるとすぐに帰宅。

山道の奥にある洞窟を見つけ、ユキナはそこを「特訓場」として使うことに決めた

　彼女はその時、特訓場として使っていた洞窟が実は超高難易度のダンジョン

　「凶域」の一部であることに、そのときはまったく気づいていなかった