【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 どうして、こんな場所に。

 どうして、誰も彼女たちを見出だせなかったのか――――?

 レオンの瞳が、熱を持った。

 視界の端が、黄金に染まる。

 【運命鑑定】が、自動的に発動していた。

 彼女たちの真実が、燃える文字となって浮かび上がる。


【エリナ・ブラックソード】
潜在能力:S級剣聖
現在状態:復讐の炎に焼かれる戦乙女
未来予測:このままでは一年以内に美しく散る

【ミーシャ・ホーリーベル】
潜在能力:伝説の大賢者
現在状態:仮面に本心を封印した氷の聖女
未来予測:誰にも愛されず、偽りの微笑みのまま朽ちる

【ルナ・クリムゾン】
潜在能力:古の竜殺しの魔力
現在状態:自身の力に怯える紅蓮の魔女
未来予測:暴走により最愛の人を灰にする

【シエル・フォン・アステリア】
潜在能力:神弓の継承者
現在状態:自由を求める籠の鳥
未来予測:売られて、壊される

 ――全員、世界を変える才能と美貌を持っている。

 レオンは息をのんだ。

 全員、伝説級の潜在能力。

 全員、世界を変えるほどの才能を秘めている。

 なのに――本人も周りも誰も気づいていない。

 世界は彼女たちを「落ちこぼれ」と断じ、見捨てていた。

 こんな路地裏に追いやり、朽ちるのを待っていた。

 なんという、もったいないことか。

 なんという、愚かなことか。

 彼女たちの「未来予測」は、どれも悲劇で終わっている。

 このまま放置すれば、彼女たちは全員、一年以内に――。

 だが、この悲劇は回避できる。

 【運命鑑定】の力で、彼女たちを救えるのだ。

 心臓が、大きく跳ねた。

 これが、【運命鑑定】が示した「最善の未来」への入り口。

 四人の戦乙女との出会い。

 新たなる絆の、始まり――――。


     ◇


 レオンは一歩、前に踏み出した。

「君たち」

 レオンは口元の血を袖で拭いながら、声をかけた。

 四人が一斉に顔を上げる。

 長い睫毛の下から、宝石のような瞳たちがレオンを射抜いた。

 漆黒。空色。緋色。碧色。

 四つの色が、四つの感情を映している。

 警戒。諦め。恐怖。そして――消えかけた、かすかな希望。

 その希望の光を、消させてはいけない。

 レオンは直感的にそう思った。

「俺と組まないか?」

 単刀直入に、そう告げた。

 回りくどい言い方をしている余裕はない。彼女たちの警戒心を解くには、真正面からぶつかるしかない。

 エリナが汚れた頬を手の甲で乱暴に拭った。

 その仕草すら、なぜか優美に見える。

「……あんた、誰?」

 かすれた声だった。喉が渇ききっているのか、それとも長い間誰とも話していなかったのか。

 だが、その声の奥に秘められた芯の強さは隠せない。

 どれほど追い詰められても、この少女は決して折れない。そういう種類の人間だと、レオンには分かった。

「僕はレオン・グレイフィールド。さっき追放された、元Aランクパーティの軍師だ」

 正直に、全てを明かした。

 隠しても仕方がない。どうせ傷だらけの姿を見れば、何かあったことくらい分かるだろう。

「……はぁ?」

 エリナの細い眉が、不機嫌そうに吊り上がる。

「Aランクに居たって? エリートじゃない!」

 その声には、明確な敵意が込められていた。

「あたしたちFランクの落ちこぼれを、嗤いに来たわけ? それとも、惨めな姿を見て優越感に浸りたいの? とっとと消えな!!」

「違う」

 レオンは首を横に振り、四人を真っ直ぐに見つめた。

「君たちは落ちこぼれなんかじゃない。本物だ」

 レオンは、確信を込めて告げた。

「俺には、視えるんだ」

「はぁ……? 一体何が視えるっていうの?」

 ミーシャが、静かに問いかけた。

 聖女のような柔らかな声音。だが、その奥には鋭い刃が隠されている。試すような、値踏みするような、冷ややかな視線。

 法衣は泥と煤にまみれていたが、凛とした彼女の美しさは揺るがない。むしろ、汚れの中でこそ際立つ、純白の輝き。

 ああ、この子は賢い。

 レオンは直感した。見た目の柔らかさに騙されてはいけない。この少女の本質は、氷の刃だ。

「君たちの、真の輝きが視える」

 レオンは、一人一人の目を見ながら告げた。

 まず、黒髪の剣士に向き直る。

「エリナ」

 名前を呼ばれた瞬間、エリナの体がわずかに強張った。

「君は剣聖になれる」

「……は?」

「君の中に眠っている才能は、本物だ。復讐のために研ぎ澄ましたその刃は、いずれ正義の剣となる。君は世界を救い、英雄となるんだ」

 エリナの漆黒の瞳が、大きく見開かれた。

 次に、金髪の僧侶へ。

「ミーシャ」

「……あら」

「君は大賢者の器だ。千年に一人と言われる、魔法の極致に至る者。そして――」

 レオンは、少しだけ声を落とした。

「その聖女の仮面の下に隠している、本当の君も含めて。全部、視えている」

 ミーシャの微笑みが、一瞬だけ凍りついた。空色の瞳の奥で、何かが揺れる。