「ほ、本当?」
ルナは手のひらを合わせ、キラキラと瞳を輝かせる。
「本当さ」
レオンは、自信を持って頷いた。
「僕がバッチリプロデュースしてみせるよ。君たちの才能を開花させて、大陸最強のパーティにまで上りつめさせる。そうすれば、お金なんていくらでも稼げるよ」
「お金……いくらでも……」
ルナの目が、キラキラと輝き始めた。
「じゃあ、最新の服も買える?」
「もちろん」
「美味しいご飯も、毎日食べられる?」
「腹いっぱい食べていい」
「やったぁ!」
ルナは、万歳して歓声を上げた。
「頼もしい仲間が増えたのだ!」
その屈託のない笑顔に、レオンも思わず笑みがこぼれた。
ついさっきまで「男なんてみんなクズ」と叫んでいた少女が、今はこんなにも無邪気に笑っている。
その変化が、なんだかとても嬉しかった。
「ちょっと、ルナ」
エリナが、呆れたように言った。
「調子に乗りすぎじゃない? まだ信用できるか分からないのよ?」
「えー、でもエリナだって、さっきお肉もらって嬉しそうだったじゃん」
「なっ……! べ、別に嬉しくなんか……!」
エリナの頬が、ほんのり赤く染まる。
「あらあら、エリナったら、素直じゃないんだから……可愛いわね」
ミーシャが、くすくすと笑う。
「う、うるさいわね! あんただって、さっきから金貨の袋ばっかり見てたでしょ!」
「あら、バレてた?」
「バレバレよ!」「バレてないと思ってたんだ!」「傑作だわ!」
少女たちの笑い声が、店内に響く。
レオンは、その賑やかな光景を眺めながら、静かに思った。
『太陽の剣』に居た頃には見なかった伸び伸びとした関係。
――仲間、か。
こういうのを、本当の仲間と呼ぶのかもしれない。
まだ信頼関係は浅く、彼女たちのこともよく知らない。
でも、今この瞬間、同じテーブルを囲んで、同じ料理を食べて、笑い合っている。
それだけで、十分じゃないか。
信頼は、これから築いていけばいい。
今日という日が、その第一歩なのだから。
レオンは、エールのジョッキを掲げた。
「じゃあ、改めて」
四人が、レオンを見る。
「俺たちの出会いと、これからの冒険に」
少女たちも、それぞれのジョッキやカップを手に取った。
「乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
五つのジョッキがぶつかり合う、小気味良い音が響いた。
それは、新しい物語の始まりを告げる鐘の音のようだった。
◇
食事が佳境に入った頃、不穏な空気が漂い始めた。
「おいおい、見ろよ」
不穏な声が、隣のテーブルから響いてきた。
酒臭い。そして、下卑た響き。
レオンは、反射的に声の方を振り返った。
「Fランクの雛鳥どもが、俺たちより豪勢な飯食ってやがるぜ」
三人組の冒険者が、こちらを見てニヤニヤと笑っている。
全員、体格がいい。鍛えられた筋肉。使い込まれた武器。そして、胸元で光るブロンズのバッジ。
Cランク。
Fランクの駆け出しから見れば、遥か格上の存在だ。
リーダー格と思しき大男が、椅子から立ち上がった。
カルロス。
【運命鑑定】が、自動的に情報を表示する。
【カルロス・ヴァルガス】
年齢:二十八歳
ランク:C
性格:粗暴、好色、小心者
現在状態:泥酔(判断力・運動能力大幅低下)
注意:女性に対するセクハラ常習犯。過去に複数の苦情あり。
レオンの背筋を、冷たいものが走った。
重い足音が、こちらに近づいてくる。
一歩。また一歩。
酒の匂いが、鼻をついた。安酒のすえた匂い。それに混じって、男の体臭。不快な臭いが、せっかくの料理の香りを台無しにする。
「なあ、お嬢ちゃんたち」
カルロスが下卑た目で、少女たちの体を舐めるように見回す。
エリナの胸元。ミーシャの白い首筋。ルナの細い腰。シエルの長い脚。
まるで、商品を品定めするかのような視線だった。
「どうせ体売って稼いだ金だろ?」
その言葉が発せられた瞬間。
テーブルの空気が、凍りついた。
「俺にも一晩くらい、いいだろ? なあ? げっへっへ……」
カルロスが、ゲラゲラと笑う。
黄ばんだ歯を剥き出しにして、下品な笑い声を上げる。
「いくらだ? 金ならあるぜ? Cランクの稼ぎ、舐めんなよ?」
仲間たちも、同調するように笑い声を上げた。
弱者を踏みにじり、その反応を見て楽しんでいるのだ。
そういう種類の人間がいることを、レオンは知っていた。
カインも、そうだった。
瞬間。
エリナの手が素早く剣の柄を掴む。
「売りもんじゃないわ」
低い声だった。
地の底から響いてくるような、凍てつく声。
ルナは手のひらを合わせ、キラキラと瞳を輝かせる。
「本当さ」
レオンは、自信を持って頷いた。
「僕がバッチリプロデュースしてみせるよ。君たちの才能を開花させて、大陸最強のパーティにまで上りつめさせる。そうすれば、お金なんていくらでも稼げるよ」
「お金……いくらでも……」
ルナの目が、キラキラと輝き始めた。
「じゃあ、最新の服も買える?」
「もちろん」
「美味しいご飯も、毎日食べられる?」
「腹いっぱい食べていい」
「やったぁ!」
ルナは、万歳して歓声を上げた。
「頼もしい仲間が増えたのだ!」
その屈託のない笑顔に、レオンも思わず笑みがこぼれた。
ついさっきまで「男なんてみんなクズ」と叫んでいた少女が、今はこんなにも無邪気に笑っている。
その変化が、なんだかとても嬉しかった。
「ちょっと、ルナ」
エリナが、呆れたように言った。
「調子に乗りすぎじゃない? まだ信用できるか分からないのよ?」
「えー、でもエリナだって、さっきお肉もらって嬉しそうだったじゃん」
「なっ……! べ、別に嬉しくなんか……!」
エリナの頬が、ほんのり赤く染まる。
「あらあら、エリナったら、素直じゃないんだから……可愛いわね」
ミーシャが、くすくすと笑う。
「う、うるさいわね! あんただって、さっきから金貨の袋ばっかり見てたでしょ!」
「あら、バレてた?」
「バレバレよ!」「バレてないと思ってたんだ!」「傑作だわ!」
少女たちの笑い声が、店内に響く。
レオンは、その賑やかな光景を眺めながら、静かに思った。
『太陽の剣』に居た頃には見なかった伸び伸びとした関係。
――仲間、か。
こういうのを、本当の仲間と呼ぶのかもしれない。
まだ信頼関係は浅く、彼女たちのこともよく知らない。
でも、今この瞬間、同じテーブルを囲んで、同じ料理を食べて、笑い合っている。
それだけで、十分じゃないか。
信頼は、これから築いていけばいい。
今日という日が、その第一歩なのだから。
レオンは、エールのジョッキを掲げた。
「じゃあ、改めて」
四人が、レオンを見る。
「俺たちの出会いと、これからの冒険に」
少女たちも、それぞれのジョッキやカップを手に取った。
「乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
五つのジョッキがぶつかり合う、小気味良い音が響いた。
それは、新しい物語の始まりを告げる鐘の音のようだった。
◇
食事が佳境に入った頃、不穏な空気が漂い始めた。
「おいおい、見ろよ」
不穏な声が、隣のテーブルから響いてきた。
酒臭い。そして、下卑た響き。
レオンは、反射的に声の方を振り返った。
「Fランクの雛鳥どもが、俺たちより豪勢な飯食ってやがるぜ」
三人組の冒険者が、こちらを見てニヤニヤと笑っている。
全員、体格がいい。鍛えられた筋肉。使い込まれた武器。そして、胸元で光るブロンズのバッジ。
Cランク。
Fランクの駆け出しから見れば、遥か格上の存在だ。
リーダー格と思しき大男が、椅子から立ち上がった。
カルロス。
【運命鑑定】が、自動的に情報を表示する。
【カルロス・ヴァルガス】
年齢:二十八歳
ランク:C
性格:粗暴、好色、小心者
現在状態:泥酔(判断力・運動能力大幅低下)
注意:女性に対するセクハラ常習犯。過去に複数の苦情あり。
レオンの背筋を、冷たいものが走った。
重い足音が、こちらに近づいてくる。
一歩。また一歩。
酒の匂いが、鼻をついた。安酒のすえた匂い。それに混じって、男の体臭。不快な臭いが、せっかくの料理の香りを台無しにする。
「なあ、お嬢ちゃんたち」
カルロスが下卑た目で、少女たちの体を舐めるように見回す。
エリナの胸元。ミーシャの白い首筋。ルナの細い腰。シエルの長い脚。
まるで、商品を品定めするかのような視線だった。
「どうせ体売って稼いだ金だろ?」
その言葉が発せられた瞬間。
テーブルの空気が、凍りついた。
「俺にも一晩くらい、いいだろ? なあ? げっへっへ……」
カルロスが、ゲラゲラと笑う。
黄ばんだ歯を剥き出しにして、下品な笑い声を上げる。
「いくらだ? 金ならあるぜ? Cランクの稼ぎ、舐めんなよ?」
仲間たちも、同調するように笑い声を上げた。
弱者を踏みにじり、その反応を見て楽しんでいるのだ。
そういう種類の人間がいることを、レオンは知っていた。
カインも、そうだった。
瞬間。
エリナの手が素早く剣の柄を掴む。
「売りもんじゃないわ」
低い声だった。
地の底から響いてくるような、凍てつく声。



