【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 こんなもの……こんなもので、世界を……!

 レオンの拳が、ぎりりと音を立てるほど強く握りしめられる。全身を駆け巡るのは、恐怖ではない。底知れない怒りだった。この禍々しい繭の一つ一つが、罪なき人々の命を奪い、世界を灰燼に帰す凶器となる。そんな狂った未来を許すわけにはいかない。

「焼き払ってやるわ!」

 ルナが一歩前に踏み出し、杖を振りかざした。その緋色の瞳には、抑えきれない憤怒の炎が宿っている。既に杖の先端には、紅蓮の魔力が渦巻き始めていた。

「待て、ルナ!」

 レオンはとっさにルナの肩を掴み、制止した。

「えっ!? でも、こんなもの放っておいたら……!」

「分かってる。だが、とても全部は倒せない」

 レオンの声は、苦渋に満ちていた。冷静に、しかし確実に現実を告げる。

「倒せて数千体だ。だが、魔物の数は十万はいる。いや、それ以上かもしれない」

「だったら……! 少しでも削っておかないと、後で……!」

 ルナの声が震える。悔しさと焦燥が、その言葉に滲んでいた。

「そうなんだが、こんな閉鎖空間では自殺行為なんだ」

 レオンは、ルナの瞳をまっすぐに見つめた。翠色の瞳が、彼女の感情を受け止める。

「これだけの繭を焼けば、毒ガスも発生する。僕らも無事では済まない。ここで全滅したら、元も子もないんだ」

「そ、そうね……」

 ルナは唇を噛み、杖を下ろした。魔力の光が、消えていく。その小さな肩が、悔しさに震えているのが見えた。

「じゃあ、どうするの……? このまま、見逃せっていうの……?」

 エリナが横から進み出る。

「いや」

 レオンは、大聖堂の奥を見据えた。その瞳に、鋭い光が宿る。

「ここを管理している心臓部が、きっとある。この施設全体を制御している中枢が。そこを叩けば、全てを止められるはずだ」

「……分かったわ」

 エリナも奥を見据える。

「急ぎましょう。一刻も早く!」「こんな魔物たち、早く何とかしないと……!」

 シエルとミーシャも叫んだ。その声には、抑えきれない焦燥と、強い決意が込められている。

 五人は、互いの顔を見合わせた。

 恐怖はある。この無数の繭が、もし今この瞬間に目覚めたら。この十万を超える魔物が、一斉に殻を破り、襲いかかってきたら。想像しただけで、足がすくみ、呼吸が浅くなる。

 けれど――。

 だからこそ、止めなければならない。

 ここで怯んでいる暇はない。恐怖に飲まれている時間はない。

 五人は、息を殺し、脈打つ繭の森へと足を踏み入れた。

 足音を立てないように、つま先で石床を踏みしめる。繭に触れないように、体を捻り、隙間を縫うように進む。慎重に、けれど可能な限り素早く。

 ドクン……ドクン……ドクン……。

 周囲の繭が、規則正しく、けれど不気味に脈打ち続ける。

 その音が、五人の心臓の鼓動と重なり、まるで狂った交響曲のように響いた。誕生と殺戮、希望と絶望。それらが複雑に絡み合い、耳を劈くほどの不協和音を奏でる。

 繭の間を抜ける。

 一歩、また一歩。

 やがて、大聖堂の最奥に――巨大な扉が、姿を現した。

 黒光りする鋼鉄の扉。その表面には、無数の古代ルーン文字が刻まれ、禍々しい光を放っている。三日月を喰らう鷲の紋章が、扉の中央で不気味に脈動していた。

 その扉の向こうに、全ての答えがある。

 五人は、扉の前で立ち止まった。

 誰も、言葉を発さない。

 ただ、深く、深く、息を吸い込む。

 震える手を、握りしめる。

 恐怖を、覚悟に変える。

 そして――。

 レオンが、扉に手をかけた。

 冷たい鋼鉄の感触が、掌に伝わる。

 そして、扉を――ギギギギィっと、押し開いた。


      ◇


「……行こう」

 扉の向こうを確認したレオンの静かな声が、重苦しい空気を切り裂く。

 そこには、下へと続く螺旋階段があった。石段は古く、踏みしめるたびに不安げな軋み音を立てる。壁には無数の古代ルーン文字が刻まれており、それらが仄暗く、青白い燐光を放っていた。

 一歩、また一歩。

 五人は警戒しながら、ゆっくりと階段を降りていく。足音が石壁に反響し、不気味な残響となって闇の奥へと吸い込まれていった。

 空気が、降りるたびに重くなる。冷たく湿った闇が肌に纏わりつき、呼吸するたびに肺が凍りつくような感覚に襲われる。

「なんか……嫌な感じがするわね」

 ルナが小さく呟く。その声には、普段の強気さはなく、僅かな震えが混じっていた。

「ええ……何かが、私たちを待っているような」

 シエルも同意するように頷く。弓を構える手に、緊張が滲んでいた。

 エリナは無言のまま剣の柄に手を添え、周囲を警戒している。その黒曜石の瞳が、僅かな異変も見逃すまいと鋭く光っていた。

 ミーシャは、いつもの柔らかな微笑みを浮かべているが、その笑みの奥に潜む不安を、レオンは見逃さなかった。

 その時だった。

 ヴゥゥゥゥゥン――!

 突如、壁に刻まれた古代ルーン文字が一斉に脈動し、禍々しい紅蓮の光を放ち始めた。まるで血管を血液が逆流するように、文字から文字へと光が伝播していく。