【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 冷たい汗が背中を伝い、心臓が早鐘を打つ――。

「どうする……どうすればいいの……!」

 ルナが、震える声で呟いた。その目は恐怖で見開かれ、顔は蒼白になっている。

「このまま……じっと待ってていいの……?」

 シエルも、不安そうにレオンを見る。その声は泣きそうだ。

「戦わなきゃ……戦うしかないんじゃ……!」

 エリナが、剣の柄を握りしめる。けれどその手も、激しく震えている。

 ミーシャは、もう何も言えなかった。ただ、杖を握りしめ、唇を噛みしめている。

 レオンは、唇を血が出るほど強く噛んだ。

(策が……何か策が……何か方法が……!)

 必死に考える。頭をフル回転させる。けれど、答えが出ない。何も浮かばない。

 パリン!

 アラクネの足音が、すぐそこまで迫っていた。

 もう、時間がない。

 その時だった――。

 ガチャ!とドアが開けヴァレリウスが乗ってきて、一行を見回す。

「待たせたな――出番じゃ」

 静かな声が響いた。

 その瞳には、深い知恵と、そして確固たる決意が宿っている。まるで全てを見通しているかのような、神秘的な輝き。

「ヴァレリウス様……!」

 レオンが、大導師を見つめた。

「レオン殿」

 ヴァレリウスが、レオンに視線を向ける。

「敵の『未来視』は、今この瞬間、この化け物で我ら連合軍を殲滅する『確定した未来』に集中している。奴の意識は、この戦場での完全勝利に向いておるのじゃ」

 その言葉に、レオンの目が見開かれる。

「つまり……!」

「そう。今こそが、裏をかく最大の好機!」

 ヴァレリウスは、ローブの下から、古代ルーンが刻まれた黒檀の杖を取り出した。その杖からは、莫大な魔力が溢れ出している。まるで、太陽のような眩い光。

 そして、その杖を馬車の床に突き立てた。

 ドンッ!

 その瞬間、馬車全体が震えた。床に、複雑な魔方陣が浮かび上がる。青白く光る紋様が、床全体を覆っていく。

「な、何を!?」

 シエルが、驚いて叫んだ。

「『未来視』の裏をかく唯一の方法は何か、分かるかね?」

 ヴァレリウスが、静かに問う。その声には、教師が生徒に問うような、穏やかさがある。

「それは、『未来視』が観測している『盤面』から、物理的に消え去ること。観測されていない場所に移動すること。つまり――転送じゃ!」

「転送!?」

 レオンが驚愕の声を上げた。そんなものは、作戦にはなかった。ギルバートからも、ギルドマスターからも、何も聞いていない。

「この化け物をここに引きずり出した時点で、我らの『陽動』は成功しておる」

 ヴァレリウスの言葉に、五人が息を呑む。

「陽動……ですって……?」

 ミーシャが、信じられないという表情で呟いた。

「そう。この連合軍は、最初から『囮』。敵の注意を引きつけ、戦力を分散させるための『陽動部隊』じゃ。そして本命は――」

 ヴァレリウスの目が、五人を見つめる。

「君たち。『アルカナ』という名の『刃』を、今から敵の心臓部へと送り込む」

 その言葉が、馬車の中に響く。

「敵の本拠地……【月骸(ムーンレス・)の聖壇(レクイエム)】。そこへ、直接転送する。頼みましたぞ、若き英雄たちよ!」

 ヴァレリウスのローブが、魔力で激しく膨れ上がった。その体から溢れ出す魔力が、まるで嵐のように馬車の中を満たす。髪が逆立ち、肌が痺れるほどの、圧倒的な魔力。

 馬車の床に描かれた魔方陣が、アラクネの空間操作に対抗するかのように、凄まじい光を放ち始めた。青白い光が、どんどん強くなっていく。まるで星が生まれる瞬間のような、眩い輝き。

「待ってください!」

 シエルが、叫んだ。その声は、涙声だ。

「みんなはどうなるんですか!? 騎士団の人たちは!? ギルバートさんは!?」

 その問いに、ヴァレリウスは一瞬だけ表情を曇らせた。けれどすぐに、非情なほど冷静な顔に戻る。

「彼らは『(おとり)』。その役目を、今まさに果たしておられる」

 その言葉が、残酷に響く。

「そんな……そんなのって……!」

 ルナが、拳を握りしめる。

「戦争とは、そういうものじゃ。それぞれの役目を果たすことでのみ、勝利は掴める」

 ヴァレリウスの声は、冷徹だ。けれどその目には、深い悲しみが宿っている。

「安心せい。そう簡単にやられはせんよ。ワシも、ここで一花咲かせてやる。老いぼれの最後の見せ場じゃ」

 その言葉に、レオンが顔を上げた。

「大導師……!」

「君たちは行け。そして、この世界を救え。それがワシの、いや、ここにいる全員の願いじゃ」

 その瞬間――。

 パリン!

 馬車が大きく揺れた。アラクネ・ファンタズマが、遂に馬車のすぐ近くまで迫っていた。その巨大な影が、馬車全体を覆う。

 水晶の脚が、天高く振り上げられる。その先端は鋭く尖り、まるで処刑の斧のよう。今まさに、馬車ごと空間を「切断」しようとしていた。