【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 馬車の中――。

 ミーシャの顔から血の気が引いた。

「この声……まさか……?」

 その呟きは、か細く震えている。まるで、信じたくない何かを思い出してしまったかのように。

「ミーシャ、知ってるの?」

 レオンが、心配そうにミーシャの顔をのぞきこむ。

 しかし、ミーシャは首を横に振った。

「ごめんなさい、何でもないわ。知り合いの声に……少し、似てただけ……」

「そうか……。……。もし、何かわかったら教えて。今は少しの手がかりでも貴重だからね」

「わ、分かったわ」

 その言葉を絞り出すと、ミーシャは俯いた。顔を隠すように、長い髪が頬にかかる。その肩が、小さく震えていた。

 エリナが、窓の外のアラクネを見据えながらつぶやく。

「この声の女が、倒すべき敵なのね……」

 その目には、怒りの炎が燃えている。

「『神に背く』だって? ふざけるな!」

 ルナが、憤懣やるかたない様子で叫んだ。その小さな体が、怒りで震えている。

「魔物を使って、スタンピードおこして……そんなことをしてるあんたが、神だって!? 何を言ってるのよ!」

 ルナの声は、涙声になっている。

「そうよ! 命を冒涜しているのはあなたの方じゃない!」

 シエルも、ムッとして拳を握った。

「人の心を操って、大切な人を奪って……そんなあなたに、神を語る資格なんてないわ!」

 その声には、父を操られた怒りと悲しみが滲んでいる。

 レオンは、窓の外を見つめながら、ギリッと奥歯を鳴らした。

「やはり……【未来視】ができるようだな……」

 自分たちがこの連合軍で来ることも、戦術も、全て見通していた。だから、この不気味な化け物を用意したのだろう……厄介だ……いや、厄介どころじゃない……。

 レオンの拳が、震える。恐怖ではない。怒りと、そして無力感。未来を見通す敵に、どうやって勝てばいいのか。

 四人の少女たちも、レオンの言葉に黙り込んだ。早くも厳しい状況になりつつあることを、誰もが理解していた。

 沈黙が、馬車の中を支配する。

 外では、まだ女の笑い声が響いている。

「さあ、死になさい……愚か者たちよ……。ほーっほっほっほ!」

 その声が、まるで呪いのように、五人の心に重くのしかかっていた。


       ◇

 
 ギルバートは動じなかった。未来視で対策されていることは想定内なのだ。

「全軍、陣形を組め! 敵は一体! 恐れるな! 突撃し、粉砕せよ!」

 ギルバートの号令が、広場に響き渡った。その声には、微塵の迷いもない。

 騎士たちが、即座に動いた。長年の訓練で磨かれた連携。一糸乱れぬ動き。最強の騎士団『蒼き獅子』とギルドの猛者たちが、アルカナの馬車を守るように完璧な突撃陣形を組んだ。

 先頭にギルバートと精鋭騎士たち。その後ろに重装騎兵。側面を軽騎兵と冒険者たちが固め、後方に魔術師部隊と弓兵部隊。後方に、守るべきアルカナの馬車。

 完璧な陣形。何度も検討の上で組み上げられた、鉄壁の布陣。

「突撃ぃぃぃ!」

 ギルバートが剣を振り下ろした。

 ドドドドドッ!

 大地を揺るがして、連合軍が突進を開始する。数十騎の騎馬と数十人の戦士たちが、一斉に駆け出した。その迫力は、まるで雪崩のよう。地面が揺れ、土煙が舞い上がり、雄叫びが響く――――。


       ◇


 だが、アラクネ・ファンタズマは動かなかった。

 ただ、その水晶の八本脚のうち、二本をすっと持ち上げる。その動きは優雅で、まるで指揮者のよう。けれどその優雅さの裏には、計算し尽くされた冷酷さが潜んでいた。

 一本目の脚を、突撃する騎士団の先頭、すこし前方の地面に突き刺した。

 ズンッ!

 地面に穴が開き、そこから青白い光が溢れ出す。

 二本目の脚をシュルシュルと伸ばすと、後方に控えるギルド魔術師部隊の「真上」、何もない空間を指した。

 シュンッ!

 空中に、同じ青白い光の穴が開く。

 二つの穴が、目に見えない「糸」で結ばれ――空間が歪み、次元が捻じれる。

 次の瞬間――恐るべき事態が発生した。

「なっ!?」

 ギルバートの目の前を、全速力で突撃していたはずの先頭部隊十数騎が、忽然と消失した。

 まるで、存在ごと世界から消されたかのように。音もなく、光もなく、ただ消えたのだ。