「レオン! シエル!」
ルナの声が響いた。
「無事!?」
「ああ! 助かった!」
レオンが木の上から叫んだ。その声には、安堵と感謝が込められていた。
『アルカナ』のメンバーがついに集結する。五人の絆が、今ここに試されようとしていた。
「みんな……」
シエルの目から涙が溢れた。仲間が来てくれた。自分を助けるために、危険を冒してまで駆けつけてくれたのだ。その事実が、シエルの心を熱くした。
「ありがとう……みんな……」
◇
エリナとギルバートの剣がせめぎ合う。ガキィン、ガキィンと金属音が響き渡る。ルナの炎がうねり、ミーシャの魔法が光る。騎士たちと『アルカナ』の激突。公園全体が戦場と化していた。
その静寂を破ったのは、凛として、しかしどこか震える少女の声だった。
「そこまでです、皆さん!」
全員の視線が声の主へと集まる。木の枝から軽やかに舞い降りたシエルが、ギルバートの前に進み出て、かつての師と、そして己の過去と、まっすぐに向き合った。
「ギルバート先生。この戦いを終わらせましょう」
彼女の碧眼には、もう怯えの色はない。その瞳には、燃えるような決意の炎が宿っていた。
「ボクと、あなたの一騎打ちにしましょう。ボクが勝てば、あなたは騎士団を率いて王都へ帰る。ボクが負ければ、あなたの言う通り、アステリア家へ戻りましょう」
「お嬢様……!」
ギルバートが驚きに目を見開く。それはあまりにも自分に有利な賭け。王国最強と謳われる剣士に、弓手が一騎打ちを挑むなど――。
しかしシエルの瞳には、強い意志が宿っていた。
「シエル! 何言ってるの? 私たちは家族だろう! 一人で背負い込むな!」
エリナが叫んだ。
「そうよ! あたしたちは負けないわ!」
ルナが前に出ようとする。けれどシエルは首を横に振った。
「ありがとう、みんな。でも、これはボクの戦いなの」
その声は穏やかだった。けれど揺るぎない強さがあった。
「ボクが逃げ出したことで、この戦いは始まった。だから、ボクが終わらせる。それに……」
シエルは、ギルバートを見た。
「先生は、ボクの大切な人だから。ボクが直接戦いで語り合いたいの」
その言葉に、ギルバートの表情が揺れた。
「お嬢様……。分かりました。でも……手加減は……しませんよ?」
ギルバートはブワっと覇気を全身から噴き出した。
本気だ――。
シエルは思わず覇気に飲み込まれそうになって、キュッと口を結ぶ。
それを見たレオンはポンとシエルの肩に手を置くと、そっと囁いた。
「かつて見た未来のアルカナは五人だった。自信をもって練習の成果を見せればいい……」
その言葉にシエルの瞳に力が戻ってくる。
力強く頷いたシエルに、レオンはグッとサムアップして見せると、仲間たちを引き揚げさせた――――。
「本当に、大丈夫なの?」
エリナが不安そうにレオンを見る。
「ああ」
レオンはピンと伸びたシエルの背中を見つめながら答えた。
「あいつは、もう弱くない。信じてやろう」
◇
公園の中央で、二人だけが対峙する。元師弟の、あまりにも物悲しい決闘。周囲の騎士たちも『アルカナ』のメンバーも、固唾を呑んで見守っている。
風が吹く。シエルの銀髪が陽を浴びて輝いた。
ギルバートは大剣を構える。その顔には、複雑な感情が浮かんでいた。
「お嬢様……参ります……」
その声には、悲しみと、そして敬意が込められていた。
「お願いします、先生」
シエルが弓を構え、矢を番える。その手は、もう震えていない。
静寂――――。
木の葉が揺れる音。遠くで鳥が鳴く声。そして、二人の呼吸。
先に動いたのは、ギルバートだった。
「お覚悟を!」
大地を蹴る音は一度。しかしその姿は残像を残し、一気にシエルの懐へと迫る。王国最強と謳われる剣士の、常人では目で追うことすら不可能な神速の踏み込み。地面が抉れ、砂埃が舞い上がる。
みんな息を呑む。弓手は接近戦に弱い。懐に入られた時点で勝負は決まる。誰もがそう思った。
だが、シエルは動じない。その瞳は冷静そのもの。まるで時間がゆっくり流れているかのように、ギルバートの動きを捉えている。
「三位一体!」
彼女の手元で、三本の矢が同時に放たれる。一本はギルバートの眉間へ、もう一本は心臓へ。そして最後の一本は、まるで狙いを外したかのように、高く、高く、青空へと舞い上がった。
三つの軌跡が、陽を浴びて光跡を描く――――。
「甘い!」
ギルバートは迫りくる二本の矢を、まるで水面を撫でるかのように最小限の動きで、しかし完璧に斬り落とした。カン、カンと軽快な音が響き、矢は地面に落ちる。
(見事な腕だ、お嬢様。だが、弓兵が剣士に懐へ入られた時点で勝負は決した!)
ギルバートは弓を斬り払おうと振りかぶり――。
「セイヤッ!」
大剣が振り下ろされる。その速度は、まさに神速。避けることなど不可能。
その瞬間――ヒュッ、と首筋に感じた、カミソリのような冷たい風――――。
ルナの声が響いた。
「無事!?」
「ああ! 助かった!」
レオンが木の上から叫んだ。その声には、安堵と感謝が込められていた。
『アルカナ』のメンバーがついに集結する。五人の絆が、今ここに試されようとしていた。
「みんな……」
シエルの目から涙が溢れた。仲間が来てくれた。自分を助けるために、危険を冒してまで駆けつけてくれたのだ。その事実が、シエルの心を熱くした。
「ありがとう……みんな……」
◇
エリナとギルバートの剣がせめぎ合う。ガキィン、ガキィンと金属音が響き渡る。ルナの炎がうねり、ミーシャの魔法が光る。騎士たちと『アルカナ』の激突。公園全体が戦場と化していた。
その静寂を破ったのは、凛として、しかしどこか震える少女の声だった。
「そこまでです、皆さん!」
全員の視線が声の主へと集まる。木の枝から軽やかに舞い降りたシエルが、ギルバートの前に進み出て、かつての師と、そして己の過去と、まっすぐに向き合った。
「ギルバート先生。この戦いを終わらせましょう」
彼女の碧眼には、もう怯えの色はない。その瞳には、燃えるような決意の炎が宿っていた。
「ボクと、あなたの一騎打ちにしましょう。ボクが勝てば、あなたは騎士団を率いて王都へ帰る。ボクが負ければ、あなたの言う通り、アステリア家へ戻りましょう」
「お嬢様……!」
ギルバートが驚きに目を見開く。それはあまりにも自分に有利な賭け。王国最強と謳われる剣士に、弓手が一騎打ちを挑むなど――。
しかしシエルの瞳には、強い意志が宿っていた。
「シエル! 何言ってるの? 私たちは家族だろう! 一人で背負い込むな!」
エリナが叫んだ。
「そうよ! あたしたちは負けないわ!」
ルナが前に出ようとする。けれどシエルは首を横に振った。
「ありがとう、みんな。でも、これはボクの戦いなの」
その声は穏やかだった。けれど揺るぎない強さがあった。
「ボクが逃げ出したことで、この戦いは始まった。だから、ボクが終わらせる。それに……」
シエルは、ギルバートを見た。
「先生は、ボクの大切な人だから。ボクが直接戦いで語り合いたいの」
その言葉に、ギルバートの表情が揺れた。
「お嬢様……。分かりました。でも……手加減は……しませんよ?」
ギルバートはブワっと覇気を全身から噴き出した。
本気だ――。
シエルは思わず覇気に飲み込まれそうになって、キュッと口を結ぶ。
それを見たレオンはポンとシエルの肩に手を置くと、そっと囁いた。
「かつて見た未来のアルカナは五人だった。自信をもって練習の成果を見せればいい……」
その言葉にシエルの瞳に力が戻ってくる。
力強く頷いたシエルに、レオンはグッとサムアップして見せると、仲間たちを引き揚げさせた――――。
「本当に、大丈夫なの?」
エリナが不安そうにレオンを見る。
「ああ」
レオンはピンと伸びたシエルの背中を見つめながら答えた。
「あいつは、もう弱くない。信じてやろう」
◇
公園の中央で、二人だけが対峙する。元師弟の、あまりにも物悲しい決闘。周囲の騎士たちも『アルカナ』のメンバーも、固唾を呑んで見守っている。
風が吹く。シエルの銀髪が陽を浴びて輝いた。
ギルバートは大剣を構える。その顔には、複雑な感情が浮かんでいた。
「お嬢様……参ります……」
その声には、悲しみと、そして敬意が込められていた。
「お願いします、先生」
シエルが弓を構え、矢を番える。その手は、もう震えていない。
静寂――――。
木の葉が揺れる音。遠くで鳥が鳴く声。そして、二人の呼吸。
先に動いたのは、ギルバートだった。
「お覚悟を!」
大地を蹴る音は一度。しかしその姿は残像を残し、一気にシエルの懐へと迫る。王国最強と謳われる剣士の、常人では目で追うことすら不可能な神速の踏み込み。地面が抉れ、砂埃が舞い上がる。
みんな息を呑む。弓手は接近戦に弱い。懐に入られた時点で勝負は決まる。誰もがそう思った。
だが、シエルは動じない。その瞳は冷静そのもの。まるで時間がゆっくり流れているかのように、ギルバートの動きを捉えている。
「三位一体!」
彼女の手元で、三本の矢が同時に放たれる。一本はギルバートの眉間へ、もう一本は心臓へ。そして最後の一本は、まるで狙いを外したかのように、高く、高く、青空へと舞い上がった。
三つの軌跡が、陽を浴びて光跡を描く――――。
「甘い!」
ギルバートは迫りくる二本の矢を、まるで水面を撫でるかのように最小限の動きで、しかし完璧に斬り落とした。カン、カンと軽快な音が響き、矢は地面に落ちる。
(見事な腕だ、お嬢様。だが、弓兵が剣士に懐へ入られた時点で勝負は決した!)
ギルバートは弓を斬り払おうと振りかぶり――。
「セイヤッ!」
大剣が振り下ろされる。その速度は、まさに神速。避けることなど不可能。
その瞬間――ヒュッ、と首筋に感じた、カミソリのような冷たい風――――。



