レオンが一人一人の皿にシチューをよそっていく。具沢山のシチューが湯気を立てながら皿に盛られ、ジャガイモとニンジンと肉がゴロゴロと転がった。エリナの皿には肉を多めに、ルナの皿にはジャガイモを多めに、シエルの皿にはニンジンを多めに、ミーシャの皿にはハーブの香りが特に立つ部分を。それぞれの好みを覚えていて、さりげなく配慮する。そんなレオンの優しさが、少女たちの心を温めた。
「うわぁ……」「美味しそう……」
みんなの目がキラキラと輝いている。疲れ切っていたはずの顔に笑顔が戻り、食欲が湧いてくるのが分かる。
「それでは……」
「いただきます!」
女の子たちの声が重なった。みんな待ちきれないようにスプーンを手に取り、口に運ぶ。その瞬間、みんなの顔がぱっと明るくなった。
「美味しい……!」
ルナが感嘆の声を上げた。緋色の瞳が驚きと喜びで見開かれている。
「すっごく美味しい! レオン、料理上手だよね!」
シエルが嬉しそうに頬を緩める。その表情を見て、レオンは胸の奥が温かくなった。
「このハーブが素晴らしいですわ。ローリエとタイムの配分が絶妙……」
ミーシャが感心したようにうなずく。さすが大賢者の素質を持つ彼女は、香辛料の微妙なバランスまで見抜いている。
「温かくて……優しい味……」
エリナが静かに呟いた。その声には、普段は見せない柔らかさがあった。今日一日、仲間を率いて戦ってきた彼女。その緊張が、温かいシチューで少しずつ解けていくのが分かる。
レオンが安堵の表情を浮かべる。
「良かった……気に入ってくれたなら」
食材調達から調理まで、込めた愛情が今、こうして仲間たちの笑顔を作り出している。戦えなくても、スキルを失っても、自分にはできることがある。その実感が、レオンの心を満たしていった。
◇
食卓が賑やかになっていく。
「ねえ、聞いて聞いて! 今日ね、もうたーいへんだったんだからぁ!」
ルナが身を乗り出して話し始めた。スプーンを握ったまま、興奮気味に両手を振り回している。その様子がどこか懐かしくて、レオンは思わず微笑んだ。
「ゴブリンロードがね、死んだと思ったらまた動き出して! それでね、中から変な核が出てきて毒を噴いたの!」
「えぇっ!? そ、それは……無事でよかったよ」
レオンが心配そうに眉をひそめる。思っていた以上に危険な依頼だったらしい。やはり自分もついていくべきだったのではないか、という後悔が胸をよぎる。
「でもね、みんなで力を合わせて倒したの! シエルの矢がパリッてシールドを貫いて、あたしがエイって決めたんだから!」
ルナが誇らしげに語る。その目には、仲間への信頼と、自分たちの成長への自信が輝いていた。
「でね、でね、ミーシャったらね……」
ルナが悪戯っぽく笑う。緋色の瞳がキラキラと輝き、何か面白いことを言おうとしているのが分かる。
「『レオン……』って泣きべそかいてたのよ!」
「ちょっと! 余計なことは言わないでよ?」
ミーシャが顔を赤くして抗議する。いつもの優雅な聖女の仮面が崩れ、年相応の少女の表情が顔を出している。空色の瞳が恥ずかしさで潤んでいる。
「くふふふ……いいじゃない。可愛かったわよ、ミーシャ」
シエルが珍しく笑いながら茶化す。普段は控えめな彼女がこんな風にからかうのは珍しい。今日の戦いを乗り越えて、みんなの距離がまた一つ近づいたのだろう。
「あなたたちはもうリンゴは無しね!」
ミーシャがむっとしてテーブルの上のリンゴを取り上げた。レオンが買ってきた、大きくて蜜がたっぷり入っていそうな真っ赤なリンゴ。
「あー! ダメッ! それ私の!!」
シエルが慌ててリンゴに手を伸ばす。子供時代を思い出すと言っていたリンゴ。レオンが自分のために買ってくれたと分かっているから、絶対に譲れない。けれどミーシャの方が早い。
「もう! ちょっと! 返してよぉ!」
シエルがミーシャからリンゴを取り返そうと必死になる。二人がまるで子供のようにリンゴを奪い合い、テーブルの周りを追いかけっこする。その光景があまりにも微笑ましくて、エリナが呆れたように、けれど嬉しそうに笑った。
「ちょっと! 落ち着いて! リンゴは一人一つだって!」
レオンがその賑やかさに少し飲まれ気味になりながらも、必死に仲裁しようとする。けれどその顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。
(ああ……これだ)
心の中で呟く。
(これが、俺の求めていたもの)
誰もが笑っている。冗談を言い合い、笑い合い、時には小さな喧嘩をして。それはまさに家族の光景だった。温かくて、賑やかで、幸せな時間。妹を失ってから、ずっと求めていたもの。ずっと失っていたもの。それが今、ここにある。
「うわぁ……」「美味しそう……」
みんなの目がキラキラと輝いている。疲れ切っていたはずの顔に笑顔が戻り、食欲が湧いてくるのが分かる。
「それでは……」
「いただきます!」
女の子たちの声が重なった。みんな待ちきれないようにスプーンを手に取り、口に運ぶ。その瞬間、みんなの顔がぱっと明るくなった。
「美味しい……!」
ルナが感嘆の声を上げた。緋色の瞳が驚きと喜びで見開かれている。
「すっごく美味しい! レオン、料理上手だよね!」
シエルが嬉しそうに頬を緩める。その表情を見て、レオンは胸の奥が温かくなった。
「このハーブが素晴らしいですわ。ローリエとタイムの配分が絶妙……」
ミーシャが感心したようにうなずく。さすが大賢者の素質を持つ彼女は、香辛料の微妙なバランスまで見抜いている。
「温かくて……優しい味……」
エリナが静かに呟いた。その声には、普段は見せない柔らかさがあった。今日一日、仲間を率いて戦ってきた彼女。その緊張が、温かいシチューで少しずつ解けていくのが分かる。
レオンが安堵の表情を浮かべる。
「良かった……気に入ってくれたなら」
食材調達から調理まで、込めた愛情が今、こうして仲間たちの笑顔を作り出している。戦えなくても、スキルを失っても、自分にはできることがある。その実感が、レオンの心を満たしていった。
◇
食卓が賑やかになっていく。
「ねえ、聞いて聞いて! 今日ね、もうたーいへんだったんだからぁ!」
ルナが身を乗り出して話し始めた。スプーンを握ったまま、興奮気味に両手を振り回している。その様子がどこか懐かしくて、レオンは思わず微笑んだ。
「ゴブリンロードがね、死んだと思ったらまた動き出して! それでね、中から変な核が出てきて毒を噴いたの!」
「えぇっ!? そ、それは……無事でよかったよ」
レオンが心配そうに眉をひそめる。思っていた以上に危険な依頼だったらしい。やはり自分もついていくべきだったのではないか、という後悔が胸をよぎる。
「でもね、みんなで力を合わせて倒したの! シエルの矢がパリッてシールドを貫いて、あたしがエイって決めたんだから!」
ルナが誇らしげに語る。その目には、仲間への信頼と、自分たちの成長への自信が輝いていた。
「でね、でね、ミーシャったらね……」
ルナが悪戯っぽく笑う。緋色の瞳がキラキラと輝き、何か面白いことを言おうとしているのが分かる。
「『レオン……』って泣きべそかいてたのよ!」
「ちょっと! 余計なことは言わないでよ?」
ミーシャが顔を赤くして抗議する。いつもの優雅な聖女の仮面が崩れ、年相応の少女の表情が顔を出している。空色の瞳が恥ずかしさで潤んでいる。
「くふふふ……いいじゃない。可愛かったわよ、ミーシャ」
シエルが珍しく笑いながら茶化す。普段は控えめな彼女がこんな風にからかうのは珍しい。今日の戦いを乗り越えて、みんなの距離がまた一つ近づいたのだろう。
「あなたたちはもうリンゴは無しね!」
ミーシャがむっとしてテーブルの上のリンゴを取り上げた。レオンが買ってきた、大きくて蜜がたっぷり入っていそうな真っ赤なリンゴ。
「あー! ダメッ! それ私の!!」
シエルが慌ててリンゴに手を伸ばす。子供時代を思い出すと言っていたリンゴ。レオンが自分のために買ってくれたと分かっているから、絶対に譲れない。けれどミーシャの方が早い。
「もう! ちょっと! 返してよぉ!」
シエルがミーシャからリンゴを取り返そうと必死になる。二人がまるで子供のようにリンゴを奪い合い、テーブルの周りを追いかけっこする。その光景があまりにも微笑ましくて、エリナが呆れたように、けれど嬉しそうに笑った。
「ちょっと! 落ち着いて! リンゴは一人一つだって!」
レオンがその賑やかさに少し飲まれ気味になりながらも、必死に仲裁しようとする。けれどその顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。
(ああ……これだ)
心の中で呟く。
(これが、俺の求めていたもの)
誰もが笑っている。冗談を言い合い、笑い合い、時には小さな喧嘩をして。それはまさに家族の光景だった。温かくて、賑やかで、幸せな時間。妹を失ってから、ずっと求めていたもの。ずっと失っていたもの。それが今、ここにある。



