【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

 ドクン。

 まるで巨大な心臓が脈打つような低く重い音が響く。死骸の緑色の皮膚の表面に、まるで黒い血管が内側から這い上がってくるように禍々しい紋様がぶわぁと浮かび上がってきた。それは生き物のように蠢き広がり、複雑な幾何学模様を描いていく。紋様からは微かに黒紫色の光が漏れ、不吉な輝きを放っている。

「……え? 何、これ……」

 シエルの声が上ずった。

 ドクン、ドクンと死んだはずの巨体が脈打ち始めたのだ。皮膚が波打ち、肉が蠢く。リズミカルに不気味に拍動する度に黒い紋様が明滅し、空気中に禍々しい魔力が放出される。それは生命の摂理に反する、あってはならない光景だった。

「な……何……!? 死んだはずなのに……!」

 ルナの声が震えている。足がすくみ後ずさる。

 やがて、皮膚が内側から押し上げられ、不自然に盛り上がっていく。

「全員、下がって!」

 エリナが叫んだ瞬間、パキッと胸のあたりの皮膚が裂け、その間からぬるりと赤黒い異物が姿を現した。

 それは何本もの細い腕のようなものを痙攣させながら蠢く肉塊だった。大きさは人の頭ほど。表面は粘液で覆われてぬめぬめと光っており、無数の血管のようなものが脈打ち赤黒い体液を循環させている。

 異形の【核】だった。

「ひっ……!」

 ルナが思わず後ずさりつまずいて尻餅をつく。その目は恐怖に見開かれ、顔は蒼白だ。シエルは弓を構えているがその手が小刻みに震えている。

 【核】はまるで産まれたての赤子が初めて呼吸するかのように一度大きく脈打った。ドクン! その鼓動は力強く周囲の空気を震わせ、魔力の波が放射状に広がって少女たちの肌を這う。

 そしてその中心に宿っていた一つの赤い瞳が、ゆっくりと見開かれた。

 それは瞳というより奈落の底を覗き込んでいるような漆黒だった。底知れぬ悪意、終わりなき憎悪、生きとし生けるもの全てを呪い殺し蹂躙しようとする純粋な殺意が少女たちを射抜いた。

「「「「ッ!!」」」」

 四人の全身の肌が粟立った。それは理性も感情も慈悲も何もない、絶対的な悪意だった。

(……なに、これ……こんなの……こんなの……!)

 シエルの体が硬直した。息ができない。生物としての本能が叫んでいる。逃げろ、と。

 その時だった。首を失い倒れていたはずのゴブリンロードの死骸が、ゆっくりと身体を起こし始めた。ギギギという骨が軋むような音、筋肉が引き裂かれるような音。それは死者が蘇るという生命の摂理を超えたおぞましい光景だった。

 四人が息を呑む。まさか、まだ動くなんて。首もないのに。

 そして次の瞬間、露出した【核】がこの世のものとは思えない金切り声を上げた。

 キェェェェェェェェ!!

 それは悲鳴なのか怒りなのか憎悪なのか、全てが混ざり合った耳をつんざく絶叫だった。空気が震え木々が揺れ地面が振動する。四人は思わず耳を塞いだがその声は頭蓋骨に直接響いてくる。

 【核】の表面で赤黒い体液が蠢く血管がボコボコとあちこち膨らみ始めた。まるで風船のように膨張し今にも破裂しそうなほどに腫れ上がる。

「ホ、ホーリーシールド!!」

 ミーシャはとっさにロッドを掲げた。その声は恐怖で上ずっている。魔力を振り絞り四人を囲むようにドーム状のシールドを展開すると、透明な光の壁が四人を守るように覆っていく。

 刹那、ブチュ! ブチュ! ブチュブチュブチュ!と血管の瘤が次々と破裂し、赤黒い体液がほとばしった。それはまるで無数の矢のように四人へ向けて放たれ、シールドに激突する。

「ひゃぁ!」「ひぃぃぃ!」「いやぁぁぁ!」

 悲鳴がシールド内に響き渡った。体液はシールド一面に赤黒い染みを穿ち、シュォォォという不気味な音と共にシールドを溶かし始めた。まるで強酸のように光の壁を侵食していき、白い煙が立ち上って焼けた匂いが鼻を突く。

「マズい、マズいわ……くぅぅぅ」

 ミーシャの顔から血の気が引き、額に脂汗が浮かんだ。ロッドを握る手に力を込め必死にシールドを維持しようとするが、魔力が足りない。既にゴブリンロード戦で底を突きかけている。膝がガクガクと震え、立っているのもやっとだ。

 しかし状況はさらに悪化した。【核】から無数の触手が伸び始め、それらは生き物のように蠢いてシールドのドームを覆い尽くしていく。ヌチャ、ヌチャという湿った音を立てながら触手がドーム全体に張り付いていった。

「キャァァァ!」「やめてよぉぉぉ!」

 触手に覆われどんどん暗くなっていく。まるで生きたまま埋葬されるような恐怖に呼吸が乱れ、心臓が激しく波打つ。シールド内はパニック状態だった。このままだと【核】に飲み込まれてしまう。生きたまま取り込まれ、あの化け物の一部にされてしまう。

「ダメよ! もう、持たない!」

 ミーシャが青い顔で叫んだ。必死に魔力を絞り出すが溶かされる速度の方が速い。シールドにどんどんひびが入っていき、パキ、パキという音が響いている。あと何秒持つかもわからなかった。

 絶望が一行を包み込もうとした、その時。

「レオンのところに帰るんでしょ? 諦めちゃダメ!」

 エリナが凛とした声で叫んだ。恐怖で震える心を必死に押さえつけながら、仲間たちを励ます。レオンが居ない今、それが自分の役目だと分かっているから。