日原先輩と月宮くんは飴と無知でできている



「……木崎、今日の月宮、すげえシュート決まってない? 顔怖いけど」
「金子、それ俺も同じこと言おうと思ってた」
「……お前ら、本人目の前にして話すことじゃないだろ」
 三日間のテストを乗り越え、ようやく解放された今日。雲ひとつない青空、一日の中で一番高いところにある時間だから半袖でも十分じゃないかってぐらい太陽が照り付けている。三年生の引退試合が迫ったトーナメントまで残り三週間という短さの中で、グラウンドも負けじと活気づき、久しぶりの部活に精を出していた。
 ホイッスルが鳴って、再び俺の番がくる。カーブを描いて予測通りの位置にボールが伸びてシュートが決まる。五本中五本。よし、と心の中で頷いて踵を返した。
 去年の今ごろはほとんどがボール拾いで終わっていた。二、三年生を置いて一年が引退をかけた試合のメンバー入りするのなんて稀で、主力以外は全員基礎練習。それが特段嫌だったと思うわけではなく、至極当然というか。でもそんな日々が過ぎて、学年が上がり、見える景色が一段階変わった。勿論、部活だけではないけれど。
 グラウンドの周りに唯一ある高い木の下、葉が揺れて大きな影がかかっている。先輩と会えなかった週末、分からないところがあったら連絡してね、と言われたものの結局俺から連絡することは出来なかった。というよりも、しようとしたけど少しだけ怖気づいたのが正しいか。日原先輩が今まで語ってこなかった本音を前にして、俺が出した答えは合っていたのだろうか。
 あのときは、どうにかこの人の笑顔を取り戻したくて、今まで伝えきれなかった言葉を紡いだが、よく思い返すとかなり恥ずかしいことを言った自覚が出てきてしまった。例えるなら大声で叫びたくなるような気分。しかも連絡するタイミングを逃して迎えた週明けの日原先輩は、ちょっとだけよそよそしいし。俺を見つけるやいなや一瞬目を逸らすくせにすぐ近寄ってくる、どっちつかずの状態。俺のことやっぱりめんどくさくなってんなら、言えばいいのに。
 でもそうかと思えば今日の部活前、昇降口であったときにはレモンの飴を渡してきた。一体何を考えてるのかまたわからなくなっている。指が触れるだけで金曜日のことを思い出してしまう俺も俺だけど、あんなむず痒そうに笑う人間じゃなかったでしょ。あんたは。
 日原先輩の顔が頭に浮かぶ状況をどうにか払拭しようと、心の中で集中を唱えるがそれすらも結びついてしまい駄目になる。休憩の合図が入り、ベンチへ用意してあったドリンクを一気に飲み干した。汗をかいた肌に風が触れる。火照った身体はまだ一向に収まりそうにない。


 スパイクを脱いで袋に入れる。そのままリュックに突っ込んで、背負って駄弁りながら駐輪場へ。ハンドルに手をかけた瞬間、俺の目に夕焼けの強い光が差す。穏やかな色味の空に、薄らと柔らかな雲が伸びている。縁が赤みがかった、今しか見えない景色。真っ白な世界が彩られていく感覚は、日原先輩といるから生まれてくる魔法みたいな時間だった。数日しか経っていないのに先週の出来事が、ひどく懐かしい遠い夢のように思える。
「あー! 終わった、終わった色んな意味で! 部活は絶好調のおふたりさんですが、テストはどうでしたか!」
「俺は可もなく不可もなくいつも通りって感じ。月宮は?」
「俺も……いつもよりかはできたかもしんない。多分」
「うわっ、木崎はともかく月宮まで良かったの!?」
「そういう金子こそどうって……なんか聞かなくても既に積んでそうな顔してるな」
「……数学の読みが外れて本気でやばい、どうしよう、今からでも泣きつけばコヤ先に助けてくれるかな」
「ははっ、小柳先生あれだけ言ってたのに金子いつまでも公式覚えようとしなかったもんな。まあ期末で挽回すりゃいけるっしょ。赤点さえとらなければ」
 金子や木崎との会話に相槌を打って笑う。苦手な単元、覚えられなかった公式。確かに以前から授業で口酸っぱく言われていたと思い出す。でもいつの間にか全部すんなり出てくるようになったのは、確実に日原先輩のせいだった。というか、お陰って言った方があの人は喜びそうだなと自問自答を繰り返す。もし俺が「先輩のお陰です」なんて言ったらどうなるんだろう。「よくできました」「頑張ったね」なんて、また囁いて甘い笑顔を振りまくのだろうか。いやいや、流石に想像力が豊かすぎないか? 一筋縄ではいかない勉強会だったが、いざ振り返ってみると潔く頼んで良かったかもしれないと思うのも日原先輩の手の上で転がされている気がして釈然としない。ただ教えてくれるだけだったらまだしも、あんな風に触れるのは一発退場間違いなしの反則だ。他の誰かに同じように触れていたら? レモンの飴を渡していたら? 俺だから良かったものの、ってそれが全然良くないんだよ。想像すればするほど胸の辺りに靄がかかり、自分には関係ないと言い聞かせてるのに制御がきかない。勝手に俺の心の中まで侵食してきて、もう戻れないところまで連れて行ったのは日原先輩なのに。
「……月宮! どうした? さっきからすげえ顔ばっかしてるけど何かあった?」
「え、あ……別にそういうわけじゃ……てか俺そんな酷い顔してた?」
「月宮くんこわーい、木崎くんもそう思うよね!」
「おい金子、まあ……一理あるかも? 今日テストだけじゃなく部活も頑張ってたしな」
「はは、やっぱ疲れてんのかな……」
「木崎、月宮にだけ判定甘いよ! 俺も頑張ってたし、数学以外は! でもまあ二年の乗り越えなきゃいけない箇所ひとつ終わったーって感じだし。俺も今日ははやく寝よー」
 ごめん、ふたりとも気を使わせて。疲れっていうよりは単純にあの人が原因だ。まだ言えない秘密を抱えながら、駅に着くまではこれ以上不自然な点がないよう注意を払い会話に集中する。例年通りでいくとテストの結果は二、三日経って個別票が配られる。各教科の点数とクラス、学年順位が書いてあるので。それを見れば一旦俺と日原先輩の『決着』はつくはず。まるで試合のようにも思えるが、あながち間違ってない。結果は、どのみち日原先輩には伝えないといけないのだから。
「じゃあ、月宮また明日な」
「しっかり寝ろよー!」
 駅前で金子と木崎を見送って、ひとりになった瞬間、カゴに乗せていたリュックが急に意思を持ったかのように重くなった。実際、何も増やしてないからただの気のせいだけど心理的な状況からきてるのか奥底にしまい込んでいる教科書や問題集が異様なオーラを放っている。結果がわかるまでの数日間。俺にとって待ち遠しいものになるか、息苦しい時間になるかは俺自身の気の持ちよう次第。いくら考えても結果が変わることはないし、終わったんだからもういいか。
 マジックアワーの空の下、夕闇に向かって走る電車を見送りながら大きく息を吐いて、ペダルを踏みこんだ。

 ■

「出た出たー……って、何? 兄貴、湊に勉強教えてんの?」
「お前がゲームの相手してばっかで教えないからだろ。ほら、さっきと同じようにしたら解けると思うんだけどできそうか?」
「えー、この公式ってプラスとマイナスどっちだっけ」
「そこはマイナス。てか空、風呂なげえよ。もう九時すぎてんじゃねえか」
「別に最後だしいいじゃん。湊ー、俺にも見せてみろ。現役中学生だし兄貴よりも覚えてるはずだから」
「お前は覚えてないといけないんだよ。受験生のくせに」
 帰宅してすぐに夕飯を作って食べて。今日は俺がジャンケンで勝ったから一番風呂を浴び終わったところに湧いて出てきた湊の勉強会。まるで予習していたかのようなシチュエーションに、またしてもあの人の影が脳内を過ぎる。ふと俺の口からでた言葉が日原先輩と似たような口調になってしまったのは想定外だったけど、湊が十分理解できそうなら受け売りも悪くはなかったと信じたい。
 風呂上がりの空が俺と湊の座る反対側の椅子へ腰かけた。俺が乗り切ったかと思いきや、空と湊は来週がテスト期間。空は案外学年でも上位らしいが、湊は今回が初めてのテストなので念のため見てあげてと母さんから事前に伝言を受けていた。小一時間見た限り、俺の言ったことをしっかり理解しているようだが、危機感がない様子に若干の不安を覚えるが。
「よし、全問解けたー! 快兄、空兄、ありがと! 数学はもうこれで終わり!」
「え、湊こんなんでいいのか?」
「大丈夫、大丈夫! あと今日はもう暗記系するって決めたんだ! じゃ、部屋で頑張ってくるね!」
「兄貴ふられてやんの。湊ー、ゲームするときは俺にも声かけろよー」
「おい、母さんに怒られんの俺もなんだから少しぐらい真面目にやっとけよ」
「いいじゃん。兄貴今回テスト余裕そうだし、そんな怒んないっしょ。じゃあ俺も部屋で勉強っぽいことしてこよ」
 空の適当加減と湊の無邪気さに呆れつつ、リビングにひとり取り残された俺はテーブルに突っ伏した。
 余裕だったわけがない。振り回されてばっかりなのに、あのタイミングであんな表情を見せられたら誰だって、離れがたくなる。毎日毎日話しかけてきて、俺がどんな気持ちであんたのこと――思い出しただけで耳の奥が熱くなって顔が赤くなるようなことばかりが浮かんでしまい、我に返った。駄目だ、部屋に戻って冷静になろう。目の前に置いてあった水を口に含み喉を潤す。弟たちに続き俺もリビングを後にして自室に向かった。
「あー……疲れた」
 ベッド脇の間接照明をつけて思いっきりダイブをした。スプリングが跳ねて、枕に埋めた顔の角度が少しずれる。横目で見たリュックの前ポケットには日原先輩から貰ったレモンの飴が入っている。食べるタイミングも逃したな、と思いつつ目を逸らして枕元にあるスマホになんとなく触れた。画面には一件の通知。バナーを確認するとタイミングが良いのか悪いのか日原先輩の名前が目に入った。
 テストちゃんとできた?
 ただそれだけの内容に、驚くほど気持ちが迫り上がる。簡易的なメッセージ。気づいてから開くまで数十秒。通知時間は二十時四十五分。今から約三十分前のこと。
 外と内の境界線が曖昧になり、日原先輩がもっと深いところまで入り込んでくる。人工的に光る画面があの人の眩しさと重なって、思考がショートした。
 はい、ありがとうございます。これだと形式的すぎるだろうか。あんたのお陰でなんとかなりました。でもこれは少しありがたがりすぎだよな。至って普通の文面なのに上手い返しが見つからない。悩みに悩んで返したのは『ちゃんとかはわかんないけど、できました』というなんとも予防線を張った文章。
 数分後『良かった』と一緒に犬か猫か判別がつかない謎のスタンプがきて、とりあえず文面に間違えはなかったと胸を撫で下ろす。黙ってれば見た目はいいのに、こういうところだけ変なセンスが光ってる人だと思う。既読をつけて俺もリアクションを押し、これで一件落着。久々に溜めていた漫画でも読み進めよう。と安堵した瞬間、ぽこん、とひとつの通知が現れた。
 なんだよ。そう思い、画面を見るとまたしても日原先輩のメッセージ。
 今日あげた飴、美味しかった?
 視線がぎこちなく後ろを向く。スマホから移動した先はもちろん飴が閉まってあるリュックだった。監視でもされてんのかな。ベッドの上でぐるりと一回転するも、充電コードが絡まるし変なところに脚はぶつけるし。食べるタイミングを見失ったと思ったらこのザマだ。
 寝落ちして既読無視、は意識してるのがむしろバレバレすぎて計算高い、かといって嘘をつくのも日原先輩相手だとボロが出てしまいそうで。
 作戦A、正直に食べてないと伝える
 作戦B、文面だけだしバレないと信じて嘘をつく
 作戦C、やっぱり既読無視
 駄目だ、どんなに悩んでもありきたりな作戦しか出てこない。いっそのこと日原先輩もただしくじっただけで送信取り消ししてるとか。と淡い期待を抱いてみても、メッセージは何も変化なし。
「……別にそんな気にしてねえか」
 散々悩んで唸りながら決めたのは作戦A。食べてない。これでいこう。まあ実際食べてないのは本当だし、それ以降返信がきたらアプリは開かず眠ってしまったと言えば問題ない。『食べてません』少し震える指先で打って送って即座にアプリを閉じる。スマホは一旦ベッド端の遠くに投げて傍に置いていた漫画に持ち変えた。
 クラスでも話題になってるバトルものの少年漫画。金子が面白いから読んでみろと太鼓判を押してきて、借りたのは一ヶ月前ぐらいだったっけ。数巻ずつ読んでちょうど良いところでテストが迫って一旦止めて。確か主人公が敵に囲まれてピンチになって――ページを捲り、前巻の記憶を頼りに読み進める。そうだ、ここから大逆転が始まるから、とはらはらしながら次へ、また次へ。
 と、上手いこといけたら良かったのに。
 視界の端にあるスマホが気になって仕方がない。返信きてるかもよ。裏返した黒い端末が俺を呼んでいる、気がするけどさっきから沈黙を守ったままなのでそんなわけもなく。
 返信、そっけなすぎたかも。せっかくくれたのに。文字にすると案外冷たい言葉を投げてしまった自覚があるから、罪悪感が膨らんでくる。
 一回だけ、一回だけ見たらもう確認しない。来てたら返すけど、来てなかったらそのまま寝る。
 己の意志の弱さに飽き飽きしつつ、そっとスマホの画面をタップする。通知は――ない。アプリを開いて恐る恐る確認すると既読はついていたが、返事はなし。まあそうだよな、別に俺だってすぐ返してなかった。当然というか、俺以外とだって日原先輩はやりとりしていると思うし。優先順位とか、きっとあると思うから。
 指先に触れた冷たさが余計に俺を惨めにさせて嫌になる。どれだけ楽観的にいこうとしても今の俺の気持ち的には戦力外だ。誰にも見せたくない、話したくない部分が溢れて止められない。こんなやりとりひとつで俺が俺みたいじゃなくなって、あんたのいう真っ直ぐな俺はいったいどこへ行ってしまったんだろう。
「……寝よ」
 照明も消して、布団も被り目を閉じた。暗くて重くて、落ち着くにはまだ時間がかかりそうだ。誰か俺の霧がかかった心を晴れさせてほしい。そんな相手はひとりしかいないのに、縋るようにまた手を伸ばしてスマホを握りしめる。
 そこから何かが繋がるんじゃないかと、期待して。指先で冷たい画面をなぞった。心のどこかで、まだ希望を捨てきれない俺は、もう。
 やっぱり近くに置いておくのはやめよう。そう思って離そうとした瞬間――手のひらのスマホが震え出した。
 規則的な音が鳴り続けている。画面には映し出されたのはただの文字の羅列じゃない。
『日原晴』
 先輩の名前だった。
 なんで今、さっきまで必死に遮断しようとしてたのに。あんたはいつも俺を自由にさせてくれなくて。馬鹿みたいに従う俺もだけど。
『……もしもし、快くん?』
 耳に当てたスマホから、聞き慣れた声が流れ込んでくる。
「…………はい」
『あははっ、電話しちゃった』
 ぎゅ、っと詰まる胸の奥。こっちがどれだけ悩んだか知らないくせに、暗いなかだと日原先輩の声が研ぎ澄まされ、頭に響いてくる。微かな吐息や生活音、普段は聞き慣れない音が入ってきて耳の裏側が熱い。
『なんか快くん声こもってるね。ベッドいる? もう寝ちゃうの?』
 被っていた布団を片方の手で強く握りしめる。今まさにあんたのせいで寝ようとしてました。「そうですけど」緊張を濁しながら返事をすると『……ほんとに?』と訝しげな追撃がやってきた。
「……嘘じゃないです」
『せっかく電話したのに。ちょっと起きてようよ。まだ九時すぎたばっかだよ?』
「俺、早寝早起きがモットーなんで。明日も朝練あるし……」
『えー、絶対普段こんなに早く寝てないでしょ』
 バレてる、日原先輩には俺の行動なんか全部お見通しだ。膝を折り曲げて隠すように身体を縮めるも、視覚が遮られていつもよりこの人のことしか考えられなくなって、やっぱり俺は簡単に逃げられるわけがないから。
「寝てはない、けど」
『ほら、なんでよ。……もしかして、俺と話したくなかった?』
「そ、そうじゃなくて……てかいちいち言い方が……」
 話したくないわけじゃなかったら、答えは自ずと逆になる。日原先輩の控えめな笑い声がして、『話したかったんだ』と確信めいた言葉が投げられる。
「なっ、」
 なんでそういうこと言うんですか。答えの代わりにスマホを握りしめたら、意図せず声が漏れてしまい口を押さえた。俺の不甲斐ない声に日原先輩は満足がいったようで、まだずっと笑ってる。だから嫌だったんだ。
「……そんなに笑わないでくださいよ」
『ごめんってば、快くんやっぱり面白いなって思って』
「馬鹿にしてんでしょ。もう切ります、先輩もはやく寝てください」
『待って待って! じゃあ最後、俺のお願いひとつきいて』
「お願い?」
『……飴、食べてよ。今日あげたやつ』
 暗闇の中で一層際立った日原先輩からのお願い。ただ飴を食べるだけなのに『お願い』という免罪符を使われたせいか、頭の天から足の先まで動きがぎこちなくなる。「なんで」と勇気を振り絞って聞いてみるも、『嫌?』という答えになってない返しだけ。
 それ以上は何も言えず、ゆっくりとベッドから抜け出して、リュックへ向かう。耳と肩でスマホを押さえながらガサガサとポケットを漁った。出てきた飴はぼんやりとした視界の中でも色濃く見える。日原先輩の言葉ひとつで操られている感覚が、どうしようもなく俺の自我を掻き乱した。
 袋を破って、飴を放り込む。乾いた口内にレモン特有の酸味が広がった。
「……ほら、食べましたよ」
『うん、良い子だね。快くん』
「良い子って……どういう」
『そのままの意味だよ。俺のお願いちゃんと聞いてくれたね』
 全身に熱が巡り、ぎゅうとシャツの襟で口元を覆う。
 触れられてなくて良かった。こんなんじゃ絶対に心臓の音がバレて、また揶揄われてしまうところだったから。
 そうして『おやすみ』のたった一言を伝えられるだけなのに、何度も顔から熱が出てしまうような温度で囁かれ、俺の思考は日原先輩で埋め尽くされていく。
 明日からどんな顔して会えばいいんだよ。
 ようやく電話が終わって、ツーツーという無機質な音が静寂な部屋の片隅で響いている。
 暫く動けない俺に残っているのは今夜のレモンの味だけ。いつもよりずっと、意地悪な酸味はまだ引くことを知らなかった。