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翌日の朝食はオーナーの体に配慮して、胃に負担の少ない和食のメニューになった。
梅と大葉のおかゆに納豆、温泉卵、ナスとピーマンとひき肉の味噌炒め、ひじきの煮物。
いつもは洋食を作るイメージが強いルナさんだけれど、和食の方も手慣れた様子で優しい味付けに調理する。特に味噌炒めはちょっと甘めで、いわゆる『おふくろの味』っぽさがあった。
「オーナーおはよー! やっと目が覚めて良かったねー!」
オーナーが食堂へ入ってくるなり、クロは声を弾ませて駆け寄った。その途中で体を軽やかに宙返りさせ、黒猫の姿になってオーナーへ飛びつく。
「わっ……と。おはようクロ。迷惑をかけて悪かったね」
彼の腕の中にすっぽり収まったクロは、ゴロゴロと喉を鳴らしてオーナーの頬に頭を擦り付ける。
そこへ朝一の掃除を終えたコハクとおじいさんも合流し、家の中は久方ぶりの明るい空気に包まれた。
「無事で何よりだよ、オーナー。なかなか起きないからみんな心配していたんだ」
「俺は別に心配なんかしてなかったけどな」
四人が談笑している隣で、私とルナさんとで食事を運ぶ。いつもは紅茶がメインの飲み物も、今日は日本茶を用意した。
やがて全ての料理がテーブルの上に並ぶと、上座に着いたオーナーの合図で朝食が始まった。
六人そろっての食事は丸二日ぶりとなる。
「うー……あたし納豆は苦手。リーダー、これ残してもいい?」
クロが渋い顔で尋ねると、ルナさんは表情一つ変えずに即答する。
「納豆は体に良いんですよ。猫の時は食べられないんですから、人間の時にしっかり栄養を摂ってください。特にあなたは偏食家なんですから」
むくれるクロと、彼女に言い聞かせるルナさんのやり取りはまるで親子のようだった。
いつもよりさらに時間をかけてクロが完食するのを見届けてから、私は厨房に戻ってデザートを用意した。
持ってきたのはもちろん、昨夜オーナーと一緒に作ったケーキだ。
白い生クリームとピンクのグラサージュの上に、イチゴとブルーベリーとラズベリーとが乗ったドリップケーキ。
色鮮やかなそれを目にした途端、クロの顔にぱっと花が咲く。
「わぁっ、可愛いケーキ! 絵馬、やっぱりお菓子づくりが上手なんだね!」
予想通り、彼女は飛び上がって喜んでくれた。
そんな彼女の様子に、オーナーも微笑む。
「ケーキの仕上げは、僕も手伝ったんだ」
彼がそう口にした瞬間、ピリッとした空気がその場を駆け抜けた。
クロの隣に座っていたルナさんが、驚きを隠せない様子でオーナーを凝視する。
「……オーナーが手伝った、ですって?」



