◯
昼間の宣言通り、拝観時間が終わってお客の姿が見えなくなると、ルナさんは私を捕まえて本日の反省会を始めた。
「オーナーがこうなってしまったのはなぜか。こうならないためにはどうするべきだったのか。わかりますか、叶さん」
問いただされる度に、自分の不甲斐なさが浮き彫りになる。
あの交差点でのことがあった時に、私にできることは何かなかったのか。なぜ彼の魔法を止められなかったのか。そもそも最初から彼を外へ連れ出したりしなければ……。
後悔の念が次から次へと溢れて、居た堪れなさでルナさんと目を合わせられなくなる。
並行して、彼女と一緒に夕食の用意を進めた。
いつにも増して厳しい目をしたルナさんに味付けや包丁の使い方等で細かく注意され、ただでさえ気まずかった気持ちがさらに追い詰められていく。
「絵馬、元気出して! そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。あたしは毎日リーダーに怒られてるから!」
クロからは何度も憐れみのエールをもらった。
やがてその日の全ての仕事を終えて自室へ戻ろうとした時には、私は内心干からびたボロ雑巾のようになっていた。
オーナーを危険な目に遭わせた上に、家事のスキルも未熟。そんな自分に一体どれ程の価値があるのだろうかと自問自答する。
はぁ……と、半ば無意識のうちに溜め息を吐いたところで、ふと目に入ったのは一際豪華な部屋の扉だった。
階段を上り切った正面、二階の中央に位置するオーナーの部屋だ。
(もう一度だけ、オーナーの様子を見てみようかな)
もしかしたら、今度こそ目を覚ましているかもしれない。わずかな希望を胸に、扉をノックする。
しかし中から返事はなかった。落胆しつつ、そっとドアノブを引く。
室内は暗かった。
手探りで照明のスイッチを探し当て、光を灯すと、ベッドの手前にはまさかの先客がいた。
「ひゃっ!?」
完全に気を抜いていた私は、そこに人がいるとは思わなくて飛び上がった。
改めて見てみると、ベッドの脇に立っていたのは人間の姿のコハクだった。
「あ……なんだ、コハクか。ごめんね、びっくりしちゃって」
似たようなことを、私は前にも彼に言った気がする。
「オーナーならまだ寝てるぞ。この調子じゃ、今日はもう起きないだろうな」
コハクは退屈そうに欠伸をすると、そのまま私の横を通り過ぎて部屋を出ていこうとする。
相変わらず無表情で何にも興味がなさそうに見えるけれど、こうしてオーナーの部屋を訪れていたということは、やはり彼もオーナーのことが気掛かりだったのだろう。
「その……ごめんね。今日は、私のせいでオーナーがこんなことになっちゃって」
「別に。オーナーがどうなろうと、俺は知ったこっちゃないし」
素っ気ない言葉だった。
これは、彼なりの照れ隠しなのだろうか?
一体どこまでが本気なのかわからなくて、私は反応に困る。



