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食事が終わると、お次はデザートだ。
一番食べるのが遅いクロの完食を見届けてから、私とルナさんは用意のために席を立った。一階の厨房から、焼き上がった形のままのパウンドケーキと紅茶を持ってくる。
「あれ? それは……」
オーナーがこちらを見て目を丸くした。
何かを言いかけた彼よりも先に、ルナさんが説明を加える。
「本日のデザートは、叶さんが作ってくださいました」
「絵馬が?」
彼は驚いた様子で、こちらの顔をまじまじと見る。
私がお菓子を作るのがそんなに意外だったのだろうか。あんまり見つめられると妙に緊張してしまう。
彼らのやり取りを見る限り、きっと普段はデザートまでルナさんが作っているのだろう。
私の作ったケーキもお口に合うと良いのだけれど……と、ちょっとだけ不安になってくる。
テーブルの真ん中にパウンドケーキを置くと、クロが歓声を上げ、コハクとおじいさんもそれぞれ「おお」と期待の声を漏らす。
それから生地を二センチ程の幅にカットしていくと、クロは待ちきれんばかりに身を乗り出してクンクンと匂いを嗅いでいた。
「おいしそうな匂い! ねえ絵馬、早く早くー!」
上機嫌なクロに急かされる中、私は切り分けたパウンドケーキをお皿に盛り付けていく。そこへ生クリームとイチゴを添えると、クロの瞳がさらに輝いた。
「できました。さあ、どうぞ」
「わーい! いただきまーす!」
夕食を食べ終えた時には満腹だと言っていたクロも、デザートは別腹のようだ。誰よりも早くフォークを手に取った彼女に続いて、他のみんなも各々手をつける。
クロは美味しい美味しいと頻りに呟きながら幸せそうにケーキを頬張る。
白髭のおじいさんもニコニコ顔で、コハクは相変わらずの無表情だけれどパクパクと早いテンポでケーキを口に運んでいく。
その様子からすると、この三人はおおむね満足してくれているようだ。
そして問題は、ルナさんとオーナー。
特にオーナーの口に合わなければ元も子もない——と、恐る恐る二人の顔を窺うと、ルナさんは最初の一口目をじっくりと味わっていた。
「なるほど。材料はシンプルですが生地がしっとりとしていて、かつ膨らみも十分。製菓学校に通っていたというのは確かなようですね」
ルナさんのその評価はつまり、及第点ということだろうか。
内心ホッと安堵しつつオーナーの方を見てみると、
(……あれ?)
当のオーナーの顔は、わずかに曇っていた。
ケーキをゆっくりと咀嚼する口元からは、いつもの笑みが消えている。
「あ、あの。もしかして、お口に合いませんでしたか?」
不安になって私が尋ねると、彼は我に返ったような顔をこちらに向けた。
「ああ、いや。美味しいよ。……うん、すごく美味しい」
そう呟くように言って二口目を頬張る彼の瞳は、私の方を見てはいなかった。
慌てて取り繕ったようなその笑顔も、どこか空虚なものとして私の目に映っていた。



