白髭のおじいさんは、全身が真っ白な白猫。
コハクはオレンジの毛並みに、茶色いトラのような模様が入った茶トラ。
そしてルナさんは、美しい青灰色の毛に包まれた上品さの漂う猫——おそらくはロシアンブルー?
「う、うそ……。みんな、猫ちゃんだったんですか? ということはオーナーも?」
私の疑問に、ルナさんは再び人間の姿に戻って答える。
「いいえ、オーナーは人間です。そして我々四人は、先代のオーナーの魔法によって人間の姿を与えられた猫なのです」
オーナーを除く四人、つまりここにいる使用人たちの正体は、全員が猫。
「我々はオーナーの身の回りのお世話をしながら、オーナーと生涯を添い遂げることのできるパートナーを捜しています。最低限の家事ができて、オーナーのことを末永く愛してくれる人間の女性……。叶さんのことはまだトライアルのつもりでしたが、我々の秘密を知られたことで事情が変わりました」
生涯を添い遂げることのできるパートナー。
オーナーを愛する女性……。
それらの情報から導き出される人物像に思い当たって、私は息を呑む。
「もしかして、あなたたちが捜しているのは——」
その言葉の先を、再び人間の姿に戻ったクロが引き継ぐ。
「あたしたちはねぇ、オーナーのお嫁さんを捜してるんだよ! あたしたちが居なくなった後も、オーナーがずっと元気に生きていけるように。オーナーのことを幸せにしてくれる人を捜してるんだー!」
どこまでもまっすぐで朗らかなその声は、陽の光に包まれた部屋中に響き渡った。
「えっ……、ええっ!?」
オーナーのお嫁さんを、彼らは捜している。
そして私は、そのトライアルとして選ばれた。
ということは、まさか私もそのお嫁さん候補に挙がっている、ということ?
「ちょ……いやいやいや、ちょっと待ってください! お嫁さん候補だなんて、そんなの聞いてませんよ!」
あたふたする私を宥めるように、今度は白猫のおじいさんが人間の姿に戻って微笑む。
「そう慌てなくても大丈夫さ。何も今すぐに結婚してほしいというわけじゃない。まずはオーナーのことを知ってもらって、少しずつお互いの理解を深めて、ゆっくりと愛を育んでいけばいい」
いやそんな問題じゃなくて、と反論しかけた私を遮り、ルナさんは改めて「叶さん」と私を呼ぶ。
「あなたはすでに我々の秘密を知ってしまいましたから、我々もあなたをこのまま帰すわけにはいきません。それに私の言いつけを破り、オーナーの部屋に勝手に入ったのはあなたです。ですからあなたには、その責任を取ってもらいます」
こちらを捉えて離さない彼女の目は、本気だった。
「そ、そんな……」
もともと仕事を求めてここへやって来たとはいえ、このままではまさかの永久就職することになる……?
ソファに座った青年は、未だ眠ったまま。
魔法と神秘に包まれたこの館で、私の奇妙な新生活は始まったのだった。



