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・【04 親交と侵攻と進行と】
・
次の日から、俺は諸橋直人のことをイジってやることにした。
早めに登校してきたら、もういたので、
「諸橋直人ぉ? 今日からずっと一緒じゃぁーん?」
とニヤニヤしながら近付くと、あからさまというか、何なら首をプイッと振って俺を視線に入れないようにした。何それ、可愛っ。
俺は諸橋直人の前の席に、足を広げて逆になって座って、真正面になり、
「諸橋直人ってイジリ甲斐あるリアクションしてんな」
とハッキリ言ってやると、諸橋直人はかなり嫌そうな顔をした。
そうそう、そうなんだよ、コイツって全部顔に出るんだよ、普通優等生風メガネって結構鉄仮面だったりしねぇ? めっちゃおもろいんだけどもっ。
俺は諸橋直人に顔を近付けながら、
「なぁ、好きな子とかいんの? もしかするとあのオバサンのこと好きぃ?」
すると諸橋直人は、
「オバサンじゃないです! 八千草朱音さんは大切な上司です!」
「た・い・せ・つ・な、上司ねぇ。超意味深長ぅー」
「ただの上司!」
と怒鳴ってきたので、ちょっとどっちが上か威嚇してやらねぇとな思って、
「あん? 舐めた声で叫んでんじゃねぇよ? カス陰キャがよぉ? 俺の指示で上手く行ったことも忘れんじゃねぇぞ? リーダーは俺だ」
さて、半べそかいて泣いちゃうかな? えーん、えーん、したら頭を撫でポンしてやろうと思っていると、諸橋直人は立ち上がり、無言で教室を出て行ったので、トイレの個室で泣くパターンね、と思ったので、俺はついていって、
「トイレの個室で泣くならこっちだよー」
と言ってあげると、諸橋直人は振り返って俺の事を睨みながら、
「ついてきてください」
と言ってきたので、
「やーん、トイレの個室で犯す気ぃー?」
と小バカにする感じで言ったんだけども、それ以降は全然無視で、つまんねぇ、と思いながらも一応ついていってやると、階段をおりて中庭に出て行った。
このまま中庭へは一緒に行かないで、とんずらするイジメもありだな、と思ったんだけども、あまりにも真剣に俺のほうを見ながらベンチに座るから、まあ最初からスカシは辞めるかと思って行ってやることにした。
多少は仲良くしておかないと、ダメなのはダメっぽいからな。俺が上という人間関係をしっかり構築しなければ。
「何だよ、諸橋直人」
と座っている諸橋直人に対して物理的に上からなるように座らずに対峙していると、諸橋直人はこう言った。
「八千草さんから借りたスマホ持ってますよね、このスマホは決闘機能があるんです。これで勝負しましょう」
何その胸アツ展開。決闘で諸橋直人を思い切り負かして主導権握っちゃうとかできるわけ? 俺得過ぎる。
「いいじゃん、やってやるよ」
俺はまあ座ったほうがゲームはしやすいので、隣に座って、スマホを出した。
諸橋直人がスマホを操作し、最後に俺のスマホのほうでも承諾のボタンを押すと、決闘が始まった。
格ゲー風だ。俺が一番得意なゲーム。スト6・マスターランクの俺を舐めるなよ。
格ゲーの基本は間合いだ。別にコンボなんて知らなくても大丈夫。相手の動作を見切って単打を打ち込むだけで充分勝てる。勿論コンボを知っているほうがダメージ量的に得なだけ。
どうやら画面を見る限り、普通に二本先取らしいし、やるべきことは一緒だと思う。
ボタンも当ててしまえば連打するだけでコンボが発動するような簡単なモードみたいで、俺はすぐに一本先取ができた。
「つーか弱ぇよ」
と俺が冷酷そうに言ってあげると、諸橋直人がこう言った。
「この格闘ゲーム風は初めてですよね、だから練習に一本あげたんです」
「はぁ?」
声に出すつもりは無かったけども、出てしまった。
このスト6・マスターランクの俺に舐めプ? 本当腐ってんじゃねぇの? 脳内。
俺は一気に気合いが入った。絶対負けねぇ。そんな甘いことやっているヤツが勝負の世界で勝てるはずねぇだろ。
と、キレたところが俺のハイライトだろう。
間合いは完全に分かったつもりだったが、みるみるうちに俺の体力は減っていき、一本返された。しかもコンボナシの単打だけで。連打すればコンボが起きるだろうに。
ラスト勝負の三本目はさらに酷くて、体力を1ミリも削ることさえできなかった。
負けた……コイツ、ゲーム上手いわ……と思ったその時だった。
「あぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
俺の身体中に激痛が走った。
最初衝撃が強過ぎて何だか分からなかったが、徐々にこれが痛みだということが分かってきた。
正直息もままならない。呼吸は意識しないとできないくらいの状態。一体何が起きたんだ。
諸橋直人は俺のほうを見て数秒、それから無言で立ち上がった。
俺はなんとか声を振り絞り、
「もしや、あの、雷龍が、巨大な、雷を、落とした時……これと、同じ、衝撃が、走ったのか……?」
諸橋直人は俺に背を向けて立っている。
俺はここは喋らなければと思って気合いで続ける。
「それ、なのに、平然と、放送の、指示に、従って、一緒に、体育館へ、行ったのか……?」
何も言わずにその場に立っている諸橋直人。
そうだ、絶対そうだったんだ、負けたほうにはこういう仕打ちがあるんだ、そりゃそうだ、龍をハッキングして闘うんだ、勝ったら追い返せるんだ、じゃあ負けたらそれ相応のペナルティがあって当然じゃねぇか、だから諸橋直人は必死で、やっていたということか……それとも、諸橋直人にも、負けられない理由が、俺のようにあって、真剣にやっていることを茶化すようなことばかり俺はしていて……そもそも最初のあの時、急いでスマホを俺から奪い返したのは、自分がこのペナルティを受けるために……!
「すまなかった! あの時諸橋直人のこと邪魔してゴメン! ついでじゃねぇけど! 今も何かいろいろゴメン! そんな中やってるとは思わなくて! 全部俺が悪かった!」
すると諸橋直人は振り返って、俺に手を差し伸べながら、
「痛さは僕も知っていますから、謝れば別にいいんです」
と優しく微笑み、何で諸橋直人はこんな寛容なのか分からず、なんか涙が溢れてきてしまった。
諸橋直人は申し訳無さそうに、
「そんな痛かったですか? 確かに知らせるべきでしたね。僕が意地悪でした。申し訳御座いません」
「そんなことねぇよ、俺が悪かった、弱かった、それだけだ」
こんな危険なことしているんだ、生半可なわけねぇよな、諸橋直人にも譲れないことがあるんだろうな、絶対に。
陰キャとか思ってさ……きっと嫉妬していたんだ、いつの間にか諸橋直人が選ばれていたことに苛立っていたんだ、俺はガキ過ぎる。
そもそもスト6・マスターランクの俺をフルボッコって、本当にすげぇじゃん、本当にすげぇんだよ、負けたらこの激痛というプレッシャーの中さ、もう終わり終わり。
こんなダサい俺はもうこれで終わりだ。負けた俺が思うことじゃないけども、対等に諸橋直人とはやっていきたい。
俺は改めて、
「全部俺が悪かった。もし諸橋直人が許してくれるなら、俺と対等にタッグを組んでほしい」
すると諸橋直人は、
「え、さすがに何か裏ありますか?」
と言って、手を引っ込めた。
い!
「いやぁぁああ! ここは何か良い感じで抱き合って終わる感じだろ!」
諸橋直人は小首を傾げながら、
「でも今までのやり口から考えると、さすがに従順過ぎませんか?」
「何でそうなるんだよ! 俺もいろいろ思考してんだよ!」
「それならいいですけども」
と言った刹那、地響きが鳴り響いた。これはまさしく。
どこからともなく生徒の叫び声が聞こえてきた。
「龍が出よったぞ!」
・【04 親交と侵攻と進行と】
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次の日から、俺は諸橋直人のことをイジってやることにした。
早めに登校してきたら、もういたので、
「諸橋直人ぉ? 今日からずっと一緒じゃぁーん?」
とニヤニヤしながら近付くと、あからさまというか、何なら首をプイッと振って俺を視線に入れないようにした。何それ、可愛っ。
俺は諸橋直人の前の席に、足を広げて逆になって座って、真正面になり、
「諸橋直人ってイジリ甲斐あるリアクションしてんな」
とハッキリ言ってやると、諸橋直人はかなり嫌そうな顔をした。
そうそう、そうなんだよ、コイツって全部顔に出るんだよ、普通優等生風メガネって結構鉄仮面だったりしねぇ? めっちゃおもろいんだけどもっ。
俺は諸橋直人に顔を近付けながら、
「なぁ、好きな子とかいんの? もしかするとあのオバサンのこと好きぃ?」
すると諸橋直人は、
「オバサンじゃないです! 八千草朱音さんは大切な上司です!」
「た・い・せ・つ・な、上司ねぇ。超意味深長ぅー」
「ただの上司!」
と怒鳴ってきたので、ちょっとどっちが上か威嚇してやらねぇとな思って、
「あん? 舐めた声で叫んでんじゃねぇよ? カス陰キャがよぉ? 俺の指示で上手く行ったことも忘れんじゃねぇぞ? リーダーは俺だ」
さて、半べそかいて泣いちゃうかな? えーん、えーん、したら頭を撫でポンしてやろうと思っていると、諸橋直人は立ち上がり、無言で教室を出て行ったので、トイレの個室で泣くパターンね、と思ったので、俺はついていって、
「トイレの個室で泣くならこっちだよー」
と言ってあげると、諸橋直人は振り返って俺の事を睨みながら、
「ついてきてください」
と言ってきたので、
「やーん、トイレの個室で犯す気ぃー?」
と小バカにする感じで言ったんだけども、それ以降は全然無視で、つまんねぇ、と思いながらも一応ついていってやると、階段をおりて中庭に出て行った。
このまま中庭へは一緒に行かないで、とんずらするイジメもありだな、と思ったんだけども、あまりにも真剣に俺のほうを見ながらベンチに座るから、まあ最初からスカシは辞めるかと思って行ってやることにした。
多少は仲良くしておかないと、ダメなのはダメっぽいからな。俺が上という人間関係をしっかり構築しなければ。
「何だよ、諸橋直人」
と座っている諸橋直人に対して物理的に上からなるように座らずに対峙していると、諸橋直人はこう言った。
「八千草さんから借りたスマホ持ってますよね、このスマホは決闘機能があるんです。これで勝負しましょう」
何その胸アツ展開。決闘で諸橋直人を思い切り負かして主導権握っちゃうとかできるわけ? 俺得過ぎる。
「いいじゃん、やってやるよ」
俺はまあ座ったほうがゲームはしやすいので、隣に座って、スマホを出した。
諸橋直人がスマホを操作し、最後に俺のスマホのほうでも承諾のボタンを押すと、決闘が始まった。
格ゲー風だ。俺が一番得意なゲーム。スト6・マスターランクの俺を舐めるなよ。
格ゲーの基本は間合いだ。別にコンボなんて知らなくても大丈夫。相手の動作を見切って単打を打ち込むだけで充分勝てる。勿論コンボを知っているほうがダメージ量的に得なだけ。
どうやら画面を見る限り、普通に二本先取らしいし、やるべきことは一緒だと思う。
ボタンも当ててしまえば連打するだけでコンボが発動するような簡単なモードみたいで、俺はすぐに一本先取ができた。
「つーか弱ぇよ」
と俺が冷酷そうに言ってあげると、諸橋直人がこう言った。
「この格闘ゲーム風は初めてですよね、だから練習に一本あげたんです」
「はぁ?」
声に出すつもりは無かったけども、出てしまった。
このスト6・マスターランクの俺に舐めプ? 本当腐ってんじゃねぇの? 脳内。
俺は一気に気合いが入った。絶対負けねぇ。そんな甘いことやっているヤツが勝負の世界で勝てるはずねぇだろ。
と、キレたところが俺のハイライトだろう。
間合いは完全に分かったつもりだったが、みるみるうちに俺の体力は減っていき、一本返された。しかもコンボナシの単打だけで。連打すればコンボが起きるだろうに。
ラスト勝負の三本目はさらに酷くて、体力を1ミリも削ることさえできなかった。
負けた……コイツ、ゲーム上手いわ……と思ったその時だった。
「あぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
俺の身体中に激痛が走った。
最初衝撃が強過ぎて何だか分からなかったが、徐々にこれが痛みだということが分かってきた。
正直息もままならない。呼吸は意識しないとできないくらいの状態。一体何が起きたんだ。
諸橋直人は俺のほうを見て数秒、それから無言で立ち上がった。
俺はなんとか声を振り絞り、
「もしや、あの、雷龍が、巨大な、雷を、落とした時……これと、同じ、衝撃が、走ったのか……?」
諸橋直人は俺に背を向けて立っている。
俺はここは喋らなければと思って気合いで続ける。
「それ、なのに、平然と、放送の、指示に、従って、一緒に、体育館へ、行ったのか……?」
何も言わずにその場に立っている諸橋直人。
そうだ、絶対そうだったんだ、負けたほうにはこういう仕打ちがあるんだ、そりゃそうだ、龍をハッキングして闘うんだ、勝ったら追い返せるんだ、じゃあ負けたらそれ相応のペナルティがあって当然じゃねぇか、だから諸橋直人は必死で、やっていたということか……それとも、諸橋直人にも、負けられない理由が、俺のようにあって、真剣にやっていることを茶化すようなことばかり俺はしていて……そもそも最初のあの時、急いでスマホを俺から奪い返したのは、自分がこのペナルティを受けるために……!
「すまなかった! あの時諸橋直人のこと邪魔してゴメン! ついでじゃねぇけど! 今も何かいろいろゴメン! そんな中やってるとは思わなくて! 全部俺が悪かった!」
すると諸橋直人は振り返って、俺に手を差し伸べながら、
「痛さは僕も知っていますから、謝れば別にいいんです」
と優しく微笑み、何で諸橋直人はこんな寛容なのか分からず、なんか涙が溢れてきてしまった。
諸橋直人は申し訳無さそうに、
「そんな痛かったですか? 確かに知らせるべきでしたね。僕が意地悪でした。申し訳御座いません」
「そんなことねぇよ、俺が悪かった、弱かった、それだけだ」
こんな危険なことしているんだ、生半可なわけねぇよな、諸橋直人にも譲れないことがあるんだろうな、絶対に。
陰キャとか思ってさ……きっと嫉妬していたんだ、いつの間にか諸橋直人が選ばれていたことに苛立っていたんだ、俺はガキ過ぎる。
そもそもスト6・マスターランクの俺をフルボッコって、本当にすげぇじゃん、本当にすげぇんだよ、負けたらこの激痛というプレッシャーの中さ、もう終わり終わり。
こんなダサい俺はもうこれで終わりだ。負けた俺が思うことじゃないけども、対等に諸橋直人とはやっていきたい。
俺は改めて、
「全部俺が悪かった。もし諸橋直人が許してくれるなら、俺と対等にタッグを組んでほしい」
すると諸橋直人は、
「え、さすがに何か裏ありますか?」
と言って、手を引っ込めた。
い!
「いやぁぁああ! ここは何か良い感じで抱き合って終わる感じだろ!」
諸橋直人は小首を傾げながら、
「でも今までのやり口から考えると、さすがに従順過ぎませんか?」
「何でそうなるんだよ! 俺もいろいろ思考してんだよ!」
「それならいいですけども」
と言った刹那、地響きが鳴り響いた。これはまさしく。
どこからともなく生徒の叫び声が聞こえてきた。
「龍が出よったぞ!」



