龍が出よったぞ!


・【02 放課後】


 結果的に言えば、屋上は焦げただけで済んだらしい。
 とは言え、全校生徒は出入り口を全開にした体育館に移動となり、いつでも校舎の外に出られる状態で待機となった。
 勿論巨大な龍が上空をうろついていたので、外に出ることもできない、という状態が続いていたが、結局巨大な龍はその一発で帰ったらしく、全校生徒は無事グランドの外に出て、なんとか屋上の様子を見ようと、角度をつけてうろうろしていた。俺も俺の友達もそのクチだ。まああの日よりは全然マシだったか。
 この事件は昼休み前だったわけだけども、昼休みはもうこの避難で全部使って、もったいねぇと思っていたけども、午後の授業は無くなって早上がりになったので、まあいいかとも思った。
 ただし、今日は遊ばずすぐ家に帰れという話。俺の友達は意外とそういうの聞くほうなので、言われた通りに帰るみたいだけども俺は正直気になっていることがあった。
 それは諸橋直人のことだ。
 明らかに諸橋直人がキレたタイミングで雷が落ちたことが何か引っ掛かる。もしかしたらアイツが龍を操っていたりするのでは? なんて荒唐無稽なことを考えてしまう。
 でも俺の直感はよく当たる。だから俺は諸橋直人を尾行することにした。俺は昔から人のことをイジるために尾行みたいなことはよくやっているので、結構上手いのだ。
 諸橋直人は電車に乗って移動し始めた。
 俺もsuicaで即座に対応。いつもの俺の帰宅は徒歩だけだが、これくらい余裕だ。
 諸橋直人と同じ車両に乗っているが、距離は離れているので、全然気付かれている様子は無い。
 まだ帰宅時間には早い時間帯なので、人はまばらだが、俺のテクニックがあればこれくらい余裕だ。
 諸橋直人は三駅行った駅で降りたので、俺も追いかける。
 すると何だか、呑み屋街というか、おおよそ高校生がそこにいたら補導されるような地区に入っていって、おやおや、と興奮してきた。
 優等生風の陰キャがこんなところで遊んでいるとなったらスクープだ。俺はスマホを構えて、ヤバイお店に入っていったら、写真で収めようと思ったところで、なんとバーのような看板が出ているところの階段を降りていき、これは決定的だと思った。
 すぐに写真を撮った。ちゃんと看板も画角に入っている。完璧だ。これで軽く遊び程度にゆするのもアリかなと思っていると、後ろから、
「おい」
 という野太いが、女の声がした。
 俺は振り返ると、そこにはめっちゃデカい女が立っていた。
 身長一メートル八十センチのモデル体型とかではなくて、身長一メートル九十センチのプロレスラー体型といった感じだ。
 その女に俺は軽く持たれてしまい、肩に担がれてしまった。
「おい! やめろよ! おい!」
 と肩の上でじたばたしても全くこの女の体幹はブレない。
 その女は冷静に、
「頭ぶつかもな」
 と言いながら、諸橋直人が降りていったところへ入っていくわけだが、案の定というかなんというか、低い天井が俺の後頭部を擦って、
「いてぇぇええええ!」
 とつい俺は叫んでしまった。
 すると中に既に入っていたのだろう諸橋直人が、中から扉を開けて、俺の顔を覗き込んで目を丸くした。
 デカい女は諸橋直人のほうを見ながら、こう言った。
「直人、君は本当に悪い意味で集中力が高いね」
 諸橋直人は口をわなわなさせてから、
「何でいるんですか!」
 俺は痛みでそれどころじゃなくて、なんとか声を出さずに堪えていると、デカい女が、
「直人、全てはオマエのせいだ」
 すると諸橋直人が声を荒らげた。
「あれは僕のせいじゃないです!」
 デカい女は俺をバーの扉の前で置きながら、
「担当はオマエだ、龍の被害がモロに出たぞ」
 と言ったところで”やっぱし!”と思った。だって今、龍って言ったんだから!
 龍! そうだよ!
 俺は諸橋直人を指差しながら叫んだ。
「諸橋直人! オマエが龍を操っているんだろ! オマエが校舎に雷を落とさせた張本人だろ!」
 諸橋直人は即座に「えぇ?」と声をあげ、デカい女はガハハッと豪快に笑った。