この日の私は気分でいつもと違う道の帰路を歩いていた。


隣町の高校だっただろうか。


その中心にいたのが和泉だった。


同級生に囲まれながら楽しそうに話す男子。


それはまさに漫画に出てくるヒーローみたいだった。


すっかりその男子にくぎ付けになっていた。


自分でもばかばかしいと思った。


これでは、心良と同じじゃないか、とも思ったがどんどん彼を追いかけていた。


なぜだろうか。


彼を見ているともっともっと彼を知りたくなった。


日曜日の夕方だった。


病院に入院する祖母のお見舞いに来ていた時のこと。


「おばあちゃん」


「ああ……理沙…」


ベットに横たわりながら少し苦しそうに笑ったおばあちゃん。


「お母さんは……」


そう言葉を発するとおばあちゃんは笑った。


たいてい答えなど決まっている。


「……そっか」


「ごめんね、理沙……おばあちゃんのせいで」


「何言ってるの、おばあちゃんのせいじゃないでしょ……」


そういいながらどんどん声が小さくなった。


怖い…から。


そういうとおばあちゃんはまた寂しそうに笑った。


こんなに外は明るいのに…私たちにはいつまでも日が、差さないね。


人の心には誰にでも『陰』と『陽』があり、私たちはたとえ『陰』があったとしてもなんとか『陽』に見せかけながら生きている。


それに気づく人間はごく一部であり、その人はたいていその人の特別な存在。


「理沙、最近学校はどう?」


「楽しくやってるよ」


「…そう、よかったわ」


そういうと今日初めてほっとしながら笑った。


「あ、これ…はい」


朝家で作ってきた料理を渡す。


「いいのに……ごめんね、ありがとう」


悲しそうにしながらも嬉しそうに笑うおばあちゃん。


そんな顔しかさせてあげらないのが辛い。


ふと時間を確認すると六時を回っていた。


「じゃあ、おばあちゃん、帰るね。また明日」


「うん、ありがとう…気を付けてね…」


病室のドアを静かに閉める。