王都の夜は、まるで星空を地上に降ろしたかのように煌びやかだった。帝が主催する歓迎の宴が開かれる大広間。そこに足を踏み入れた瞬間、私は光と音の奔流に飲み込まれそうになった。
天井から吊るされた無数の水晶灯が、磨き上げられた床を照らし出し、楽団が奏でる優雅な旋律が空気を震わせている。着飾った貴族たちがグラスを片手に談笑する声は、さざ波のように絶え間なく響いていた。
「……すごい」
私は思わず呟き、隣を歩く蒼月の腕をぎゅっと掴んだ。 神域の静寂とは対極にある、欲望と虚飾が渦巻く世界。以前の私なら、このきらめきに目を焼かれ、足がすくんで一歩も動けなかっただろう。
けれど、今は違う。
「顔を上げろ、清野。お前はこの会場の誰よりも美しい」
蒼月さまが、私だけに聞こえる声で囁いた。その腕から伝わる体温と、私の髪に挿された青龍の簪の重みが、私に勇気をくれる。
私は背筋を伸ばし、前を見据えた。自分が身に纏っているのは、蒼月さまが贈ってくださった群青の天衣。
夜空そのものを織り込んだような深い青に、銀糸の龍が舞うこの衣は、会場のどの貴婦人のドレスよりも神々しい輝きを放っていた。
私たちが広間を進むと、それまでの喧騒が嘘のように静まり返った。何百という視線が、一斉に私たちに突き刺さる。その中には、純粋な驚嘆もあれば、妬みや蔑みの色が混じった粘着質なものもある。
(怖い……でも、負けない)
私は心の中で繰り返した。 昨日の陰陽寮での出来事を思い出す。自分は、あの冷酷な陰陽頭の前で誓ったのだ、夫と共に戦うと。ここで俯いてしまえば、あの言葉が嘘になってしまう。
蒼月さまは、周囲の視線など路傍の石ころほどにも気にしていない様子で、悠然と私をエスコートしてくださる。その堂々とした姿は、まさに王者の風格だった。
「帝への挨拶がある。少しだけ退屈な口上に付き合ってもらうぞ」
「はい、蒼月さま」
わたしたちが玉座の方へ向かおうとした、その時だった。
「あら、龍神様ではありませんか」
甘ったるい、けれどどこか棘のある声がして、数人の令嬢たちが私たちの前に立ち塞がった。 扇子で口元を隠し、極彩色のドレスに身を包んだ彼女たちは、一見すると華やかな花園のようだ。しかし、その瞳の奥には、冷たい爬虫類のような光が宿っていた。
(この方たちは……)
私は直感した。彼女たちは、昨日蒼月さまに制裁を受けた沙耶さまの友人か、あるいは陰陽寮に近い筋の者たちだ。敵意が、香水の匂いに混じってむせ返るように漂ってくる。
「ようこそおいでくださいました。田舎から出てこられたばかりで、このような華やかな席は慣れないでしょう?」
先頭に立った、一際派手な深紅のドレスの令嬢が、清野を見て猫なで声で言った。 言葉は丁寧だが、「田舎者」という響きに明確な侮蔑が込められている。
蒼月さまが鬱陶しそうに眉を寄せ、何か言いかけたが、令嬢はそれを遮るように一歩踏み込んできた。
「まあ、素敵な衣。でも、少し色が暗くありませんこと?お祝いの席なのですから、もっと明るい色を差して差し上げますわ」
令嬢の手には、なみなみと注がれた赤ワインのグラスがあった。 彼女の唇が、三日月形に歪むのを私は見た。
「…あら、ごめんなさい。手が滑ってしまいましたわ」
わざとらしい悲鳴と共に、彼女の手首が返る。グラスの中の赤黒い液体が、私の顔と、この大切な群青の衣を目掛けて放たれた。
時間が引き伸ばされたように感じる。 避ける暇はない。このままでは、清野は頭からワインを被り、公衆の面前で「汚れ者」として恥を晒すことになる。蒼月さまがくださった、大切な愛の証であるこの衣が汚されてしまう。
(嫌っ……!)
私が強く拒絶した、その瞬間だった。
キィン……ッ!
私の髪に挿された簪が、甲高い音と共に熱を放った。視界が青く染まる。自分の意思とは関係なく、簪から展開された見えない障壁が、目の前に出現していた。
「えっ……?」
令嬢の目が点になる。 私に向かって飛んできたはずの赤ワインが、空中で見えない壁にぶつかり、ピタリと静止したのだ。 液体は重力を無視して空中に漂い、赤い球体となって震えている。
そして。
「……お返ししよう」
わたしの隣で、蒼月さまが冷ややかに呟いた。
バシャアアアッ!!
空中で止まっていた赤ワインが、まるで意志を持った生き物のように向きを変え、倍の勢いで令嬢の顔面へと逆流した。
「ぎゃあああっ!?」
耳をつんざくような悲鳴が上がった。 深紅のドレスを着た令嬢は、頭からワインを被り、顔も髪もドレスも、見るも無惨な赤紫色に染め上げられていた。 白い肌を伝って滴り落ちる赤ワインは、まるで血のようだ。
「い、いやぁっ!私のドレスが…これ、特注の……っ!」
令嬢は半狂乱になって顔を拭うが、化粧が崩れてさらに無様な顔になっていく。
取り巻きの令嬢たちも、飛び散ったしぶきを浴びて「きゃあっ!」と悲鳴を上げて逃げ惑った。
一瞬にして、優雅だった空間が修羅場と化す。 周囲の貴族たちは、何が起きたのか分からず、呆然と立ち尽くしていた。
「……手が滑った、と言ったな」
蒼月さまの、氷点下の声が響き渡った。 彼は一歩前に出ると、腰を抜かして座り込んだ令嬢を見下ろした。その瞳孔は金色に収縮し、隠しきれない龍の威圧感が、広間の空気をビリビリと震わせている。
「俺の妻の衣に、その下品な酒を飲ませようなど……随分と高い代償についたな」
「ひっ、うぅ……」
令嬢はガタガタと震え、言葉も出ないようだ。
「その衣は、神域の深層で織らせた国宝級の品だ。貴様の家財を全て売り払っても、糸一本の弁償もできんぞ。……汚さずに済んで、良かったな。貴様の命のためにも」
蒼月さまが指を軽く振ると、見えない風が巻き起こり、ワインの匂いごと彼女たちを遠くへ吹き飛ばした。
周囲からは、『龍神さまの怒りだ……』『やはり、あの方に手出しをしてはならない……』という恐怖の囁きが漏れ聞こえてくる。
蒼月さまは、怯える周囲を一瞥して黙らせると、すぐ私の方を向き、表情を一変させた。
「……清野。怖かったな」
先ほどまでの冷酷さが嘘のように、甘く、優しい声。蒼月さまは懐から絹のハンカチを取り出すと、汚れてもいない清野の頬や手を、愛おしそうに拭ってくださった。
「ああ、すまない。俺がついていながら、不快なものを見せた。……気分は悪くないか?」
「は、はい。私は大丈夫です。簪が、守ってくれましたから」
私が簪に触れると、蒼月さまは私の腰を引き寄せ、皆に見せつけるように、私の額に口づけを落とした。
「そうだ。お前は俺が守る。誰にも、指一本触れさせない」
その口づけは、所有の証であり、絶対的な守護の誓いだった。広間の中心で、私たちは抱き合ったまま、周囲の視線を完全に遮断していた。
やがて、楽団が気を取り直したように、静かなワルツを奏で始めた。
「……踊ろうか、清野」
蒼月さまが、恭しく手を差し伸べてくださる。
「私……踊りなんて、習ったことがありません」
「構わない。俺に身を委ねていればいい。お前の足は、俺が運ぶ」
私はおずおずと、その大きな手に自分の手を重ねた。蒼月さまが優しくリードをしてくださり私の体はふわりと軽く舞った。
一歩、二歩。 最初はぎこちなかった足取りも、蒼月さまの瞳を見つめているだけで、不思議とリズムに乗ることができた。
群青の衣が、回転するたびに美しく広がり、銀の龍がまるで生きているかのように煌めく。
「……きれいだ」
蒼月さまが、熱っぽい瞳で私を見つめる。
「周りの雑音など気にするな。今、世界には俺とお前しかいない」
「……はい、蒼月さま」
私は幸せに包まれていた。 意地悪な貴族たちの視線も、ワインの匂いも、今は何も感じない。 ただ、愛する夫の温もりと、彼と共にいる喜びだけが、私の胸を満たしていた。
けれど。
ふと、蒼月さまの肩越しに、上の階…バルコニーの方角が目に入った時、私の背筋に冷たいものが走った。
暗がりの中に、一人の男が立っていた。 銀色の長い髪。祭服に身を包んだ、美しいけれど温度のない男。 陰陽頭、土御門晴明
彼は、騒ぎの最中も、私たちが踊っている今も、ずっとそこから見下ろしていたのだ。
そして、私と目が合うと彼は扇子で口元を隠し、ニヤリと目を細めた。 その目は、楽しんでいるようでもあり、獲物が罠にかかるのを待つ狩人のようでもあった。
(……見ている)
簪の熱とは違う、嫌な寒気が清野の首筋を撫でた。 蒼月さまとの幸せなワルツの裏側で、見えない歯車が、音を立てて回り始めている気がした。
私は恐怖を振り払うように、蒼月さまの手に力を込めた。 離さない。離れてはいけない。 この手が離れた瞬間、あの闇が清野たちを飲み込もうと待っているのだから。
華やかな音楽が鳴り響く中、私の心に落ちた一滴の不安は、消えることなく黒い染みのように広がっていった。
天井から吊るされた無数の水晶灯が、磨き上げられた床を照らし出し、楽団が奏でる優雅な旋律が空気を震わせている。着飾った貴族たちがグラスを片手に談笑する声は、さざ波のように絶え間なく響いていた。
「……すごい」
私は思わず呟き、隣を歩く蒼月の腕をぎゅっと掴んだ。 神域の静寂とは対極にある、欲望と虚飾が渦巻く世界。以前の私なら、このきらめきに目を焼かれ、足がすくんで一歩も動けなかっただろう。
けれど、今は違う。
「顔を上げろ、清野。お前はこの会場の誰よりも美しい」
蒼月さまが、私だけに聞こえる声で囁いた。その腕から伝わる体温と、私の髪に挿された青龍の簪の重みが、私に勇気をくれる。
私は背筋を伸ばし、前を見据えた。自分が身に纏っているのは、蒼月さまが贈ってくださった群青の天衣。
夜空そのものを織り込んだような深い青に、銀糸の龍が舞うこの衣は、会場のどの貴婦人のドレスよりも神々しい輝きを放っていた。
私たちが広間を進むと、それまでの喧騒が嘘のように静まり返った。何百という視線が、一斉に私たちに突き刺さる。その中には、純粋な驚嘆もあれば、妬みや蔑みの色が混じった粘着質なものもある。
(怖い……でも、負けない)
私は心の中で繰り返した。 昨日の陰陽寮での出来事を思い出す。自分は、あの冷酷な陰陽頭の前で誓ったのだ、夫と共に戦うと。ここで俯いてしまえば、あの言葉が嘘になってしまう。
蒼月さまは、周囲の視線など路傍の石ころほどにも気にしていない様子で、悠然と私をエスコートしてくださる。その堂々とした姿は、まさに王者の風格だった。
「帝への挨拶がある。少しだけ退屈な口上に付き合ってもらうぞ」
「はい、蒼月さま」
わたしたちが玉座の方へ向かおうとした、その時だった。
「あら、龍神様ではありませんか」
甘ったるい、けれどどこか棘のある声がして、数人の令嬢たちが私たちの前に立ち塞がった。 扇子で口元を隠し、極彩色のドレスに身を包んだ彼女たちは、一見すると華やかな花園のようだ。しかし、その瞳の奥には、冷たい爬虫類のような光が宿っていた。
(この方たちは……)
私は直感した。彼女たちは、昨日蒼月さまに制裁を受けた沙耶さまの友人か、あるいは陰陽寮に近い筋の者たちだ。敵意が、香水の匂いに混じってむせ返るように漂ってくる。
「ようこそおいでくださいました。田舎から出てこられたばかりで、このような華やかな席は慣れないでしょう?」
先頭に立った、一際派手な深紅のドレスの令嬢が、清野を見て猫なで声で言った。 言葉は丁寧だが、「田舎者」という響きに明確な侮蔑が込められている。
蒼月さまが鬱陶しそうに眉を寄せ、何か言いかけたが、令嬢はそれを遮るように一歩踏み込んできた。
「まあ、素敵な衣。でも、少し色が暗くありませんこと?お祝いの席なのですから、もっと明るい色を差して差し上げますわ」
令嬢の手には、なみなみと注がれた赤ワインのグラスがあった。 彼女の唇が、三日月形に歪むのを私は見た。
「…あら、ごめんなさい。手が滑ってしまいましたわ」
わざとらしい悲鳴と共に、彼女の手首が返る。グラスの中の赤黒い液体が、私の顔と、この大切な群青の衣を目掛けて放たれた。
時間が引き伸ばされたように感じる。 避ける暇はない。このままでは、清野は頭からワインを被り、公衆の面前で「汚れ者」として恥を晒すことになる。蒼月さまがくださった、大切な愛の証であるこの衣が汚されてしまう。
(嫌っ……!)
私が強く拒絶した、その瞬間だった。
キィン……ッ!
私の髪に挿された簪が、甲高い音と共に熱を放った。視界が青く染まる。自分の意思とは関係なく、簪から展開された見えない障壁が、目の前に出現していた。
「えっ……?」
令嬢の目が点になる。 私に向かって飛んできたはずの赤ワインが、空中で見えない壁にぶつかり、ピタリと静止したのだ。 液体は重力を無視して空中に漂い、赤い球体となって震えている。
そして。
「……お返ししよう」
わたしの隣で、蒼月さまが冷ややかに呟いた。
バシャアアアッ!!
空中で止まっていた赤ワインが、まるで意志を持った生き物のように向きを変え、倍の勢いで令嬢の顔面へと逆流した。
「ぎゃあああっ!?」
耳をつんざくような悲鳴が上がった。 深紅のドレスを着た令嬢は、頭からワインを被り、顔も髪もドレスも、見るも無惨な赤紫色に染め上げられていた。 白い肌を伝って滴り落ちる赤ワインは、まるで血のようだ。
「い、いやぁっ!私のドレスが…これ、特注の……っ!」
令嬢は半狂乱になって顔を拭うが、化粧が崩れてさらに無様な顔になっていく。
取り巻きの令嬢たちも、飛び散ったしぶきを浴びて「きゃあっ!」と悲鳴を上げて逃げ惑った。
一瞬にして、優雅だった空間が修羅場と化す。 周囲の貴族たちは、何が起きたのか分からず、呆然と立ち尽くしていた。
「……手が滑った、と言ったな」
蒼月さまの、氷点下の声が響き渡った。 彼は一歩前に出ると、腰を抜かして座り込んだ令嬢を見下ろした。その瞳孔は金色に収縮し、隠しきれない龍の威圧感が、広間の空気をビリビリと震わせている。
「俺の妻の衣に、その下品な酒を飲ませようなど……随分と高い代償についたな」
「ひっ、うぅ……」
令嬢はガタガタと震え、言葉も出ないようだ。
「その衣は、神域の深層で織らせた国宝級の品だ。貴様の家財を全て売り払っても、糸一本の弁償もできんぞ。……汚さずに済んで、良かったな。貴様の命のためにも」
蒼月さまが指を軽く振ると、見えない風が巻き起こり、ワインの匂いごと彼女たちを遠くへ吹き飛ばした。
周囲からは、『龍神さまの怒りだ……』『やはり、あの方に手出しをしてはならない……』という恐怖の囁きが漏れ聞こえてくる。
蒼月さまは、怯える周囲を一瞥して黙らせると、すぐ私の方を向き、表情を一変させた。
「……清野。怖かったな」
先ほどまでの冷酷さが嘘のように、甘く、優しい声。蒼月さまは懐から絹のハンカチを取り出すと、汚れてもいない清野の頬や手を、愛おしそうに拭ってくださった。
「ああ、すまない。俺がついていながら、不快なものを見せた。……気分は悪くないか?」
「は、はい。私は大丈夫です。簪が、守ってくれましたから」
私が簪に触れると、蒼月さまは私の腰を引き寄せ、皆に見せつけるように、私の額に口づけを落とした。
「そうだ。お前は俺が守る。誰にも、指一本触れさせない」
その口づけは、所有の証であり、絶対的な守護の誓いだった。広間の中心で、私たちは抱き合ったまま、周囲の視線を完全に遮断していた。
やがて、楽団が気を取り直したように、静かなワルツを奏で始めた。
「……踊ろうか、清野」
蒼月さまが、恭しく手を差し伸べてくださる。
「私……踊りなんて、習ったことがありません」
「構わない。俺に身を委ねていればいい。お前の足は、俺が運ぶ」
私はおずおずと、その大きな手に自分の手を重ねた。蒼月さまが優しくリードをしてくださり私の体はふわりと軽く舞った。
一歩、二歩。 最初はぎこちなかった足取りも、蒼月さまの瞳を見つめているだけで、不思議とリズムに乗ることができた。
群青の衣が、回転するたびに美しく広がり、銀の龍がまるで生きているかのように煌めく。
「……きれいだ」
蒼月さまが、熱っぽい瞳で私を見つめる。
「周りの雑音など気にするな。今、世界には俺とお前しかいない」
「……はい、蒼月さま」
私は幸せに包まれていた。 意地悪な貴族たちの視線も、ワインの匂いも、今は何も感じない。 ただ、愛する夫の温もりと、彼と共にいる喜びだけが、私の胸を満たしていた。
けれど。
ふと、蒼月さまの肩越しに、上の階…バルコニーの方角が目に入った時、私の背筋に冷たいものが走った。
暗がりの中に、一人の男が立っていた。 銀色の長い髪。祭服に身を包んだ、美しいけれど温度のない男。 陰陽頭、土御門晴明
彼は、騒ぎの最中も、私たちが踊っている今も、ずっとそこから見下ろしていたのだ。
そして、私と目が合うと彼は扇子で口元を隠し、ニヤリと目を細めた。 その目は、楽しんでいるようでもあり、獲物が罠にかかるのを待つ狩人のようでもあった。
(……見ている)
簪の熱とは違う、嫌な寒気が清野の首筋を撫でた。 蒼月さまとの幸せなワルツの裏側で、見えない歯車が、音を立てて回り始めている気がした。
私は恐怖を振り払うように、蒼月さまの手に力を込めた。 離さない。離れてはいけない。 この手が離れた瞬間、あの闇が清野たちを飲み込もうと待っているのだから。
華やかな音楽が鳴り響く中、私の心に落ちた一滴の不安は、消えることなく黒い染みのように広がっていった。

