4 凌視点
「如月先生、質問いいですか?」
「あら、瀬名くん、何?」
オレは質問するフリをして如月先生(いとこ)を呼んだ。
「今日のために、ずっとメガネをかけていたんですか」
「そうだけど? みんなドキドキしてたでしょ?」
「やってることがヤバすぎます。それと、コンタクトにしたいって思ったらどうするんですか」
「え、誰が? あ、もしかして好きな人?」
最悪だ。
この人は母方の親戚で姉と同い年でもあり、小さいころ俺はよくイジられた。
ずっとおかしいと思っていた。派手だったはずが、黒縁メガネに髪を1つに結わえるなんて。教師になって落ち着いたのかと思ったら、変わってないじゃないか。
「とにかく、教科委員に余計なこと吹き込まないでください」
「私からも。私がいとこだってことは絶対言わないで。あと生徒に自信を持たせるのが私の仕事だから」
ふふっと笑った顔にイライラした。
放課後は、一緒に映画でも観ようと誘うと蒼葉はOKしてくれた。心の中でガッツポーズをして、部屋に連れて行く。
開始早々、眠そうだ。だんだん俺の方へ体が傾いてきて、そっとメガネを外した。
メガネを外した蒼葉をじっとみる。はっきりとした二重まぶたが閉じられているのが残念だ。でも、見られるだけでもよしとしよう。
幼いころ、お昼寝の時間に少し厚みのある唇にキスをしたのは俺しか知らない。
蒼葉を好きになった瞬間をはっきりと覚えている。
転園した幼稚園で俺を仲間外れにしようとした奴がいた。俺は早生まれで体が小さく、何をやってもトロかった。そんな俺を守ってくれたのは体の大きい蒼葉だった。
中学では、蒼葉と同じバスケ部に入った。俺の背が一気に伸び、蒼葉を超えたとき「今度は俺が蒼葉を守れる」と嬉しかった。
ある日、蒼葉が試合でメガネを破損しコンタクトにした。そしたら先輩たちから蒼葉のことを聞かれるようになり、「これはマズイ」と思った。
蒼葉のことを聞いて来た先輩に、
「俺、先輩のこと好きなんですけど」
そう言ったら、あっさり付き合うことになった。
なんて軽薄なんだ。って、俺もゲスいか……。
結局、蒼葉は酷いドライアイですぐにメガネに戻って安心した。
なのに、高校の入学式。
「イメチェンしてみた。どうかな?」
可愛いとカッコいいがせめぎ合う顔で見上げて来た。
「前髪、目にかからないように短くしたんだけど、変じゃない?」
ぜんぜん変じゃない。むしろヤバい。蒼葉の魅力がダダ漏れしていて危険だ。絶対、式に参加している先輩女子たちの「守りたくなる本能」みたいなのをくすぐる。
予感は的中し、次の日から一緒に登校すると蒼葉をチラ見する人が多数。
「何かさ、視線を感じるんだけど。凌といるとオレまで見られてるみたいで。モテる奴は大変だな」
今みんなの視線を集めてるのは俺じゃない。
俺は形だけ3年女子と付き合うことにして、速攻振られてきた。
蒼葉も「コンタクト無理だわ」とメガネに変えて、平穏な毎日に戻った。
なのに、あのいとこが赴任して来たせいで早見さんといい感じになってる。
調理実習で蒼葉と早見さんが同じ班になった。どうしてもふたりが気になっていると、早見さんが蒼葉の顔に触れた。一気に顔が赤くなる蒼葉に我慢出来なかった。持っていたボウルと泡立て器を他の奴に渡して、調理室を出て行く蒼葉を追いかけた。
少し強引なのは許して欲しい。手を引いて生徒会室へ閉じ込めて壁に追いやった。
ポケットに準備していた新しい目薬をすかさず差してやる。充血した目が痛々しい。数滴差していると蒼葉の鼻の頭が赤らんで、両目から涙がこぼれた。
「凌。どうしてずっと怒ってるの」
胸が締め付けられるように苦しい。今すぐ抱きしめたい。でもそんなことしたら、今までみたいに過ごせないかもしれない。
「凌、本当は如月先生のことが好きなの?」
いやいやいやいや、違う違う、ぜんぜん違う!
「言うな」って言われてるから言えないだけなんだ!
最初から、変なヤキモチで意地悪しないで「あんな先生好きじゃない」って言えばよかった。
もうこうなったら、全部ぶちまけて楽になりたい。
きっとアオは隠れてしてきた俺の振る舞いも、アオのことが好きだと言っても軽蔑するような奴じゃない。
「ずっと、好きだった。でも言えるわけないだろう」
もう泣きそうだ。かっこ悪いな、俺。
アオがじっと見つめてくる。
「オレもずっと凌のことが好きだったんだよ」
全身に衝撃が走った。今すぐ腕に閉じ込めて俺だけのアオにしたい。
「アオ、嫌なら避けて」
見つめ合い距離を縮めていく。
15センチ……10センチ…5センチ。
目を閉じた蒼葉の唇にそっと触れるだけのキスをした。
「如月先生、質問いいですか?」
「あら、瀬名くん、何?」
オレは質問するフリをして如月先生(いとこ)を呼んだ。
「今日のために、ずっとメガネをかけていたんですか」
「そうだけど? みんなドキドキしてたでしょ?」
「やってることがヤバすぎます。それと、コンタクトにしたいって思ったらどうするんですか」
「え、誰が? あ、もしかして好きな人?」
最悪だ。
この人は母方の親戚で姉と同い年でもあり、小さいころ俺はよくイジられた。
ずっとおかしいと思っていた。派手だったはずが、黒縁メガネに髪を1つに結わえるなんて。教師になって落ち着いたのかと思ったら、変わってないじゃないか。
「とにかく、教科委員に余計なこと吹き込まないでください」
「私からも。私がいとこだってことは絶対言わないで。あと生徒に自信を持たせるのが私の仕事だから」
ふふっと笑った顔にイライラした。
放課後は、一緒に映画でも観ようと誘うと蒼葉はOKしてくれた。心の中でガッツポーズをして、部屋に連れて行く。
開始早々、眠そうだ。だんだん俺の方へ体が傾いてきて、そっとメガネを外した。
メガネを外した蒼葉をじっとみる。はっきりとした二重まぶたが閉じられているのが残念だ。でも、見られるだけでもよしとしよう。
幼いころ、お昼寝の時間に少し厚みのある唇にキスをしたのは俺しか知らない。
蒼葉を好きになった瞬間をはっきりと覚えている。
転園した幼稚園で俺を仲間外れにしようとした奴がいた。俺は早生まれで体が小さく、何をやってもトロかった。そんな俺を守ってくれたのは体の大きい蒼葉だった。
中学では、蒼葉と同じバスケ部に入った。俺の背が一気に伸び、蒼葉を超えたとき「今度は俺が蒼葉を守れる」と嬉しかった。
ある日、蒼葉が試合でメガネを破損しコンタクトにした。そしたら先輩たちから蒼葉のことを聞かれるようになり、「これはマズイ」と思った。
蒼葉のことを聞いて来た先輩に、
「俺、先輩のこと好きなんですけど」
そう言ったら、あっさり付き合うことになった。
なんて軽薄なんだ。って、俺もゲスいか……。
結局、蒼葉は酷いドライアイですぐにメガネに戻って安心した。
なのに、高校の入学式。
「イメチェンしてみた。どうかな?」
可愛いとカッコいいがせめぎ合う顔で見上げて来た。
「前髪、目にかからないように短くしたんだけど、変じゃない?」
ぜんぜん変じゃない。むしろヤバい。蒼葉の魅力がダダ漏れしていて危険だ。絶対、式に参加している先輩女子たちの「守りたくなる本能」みたいなのをくすぐる。
予感は的中し、次の日から一緒に登校すると蒼葉をチラ見する人が多数。
「何かさ、視線を感じるんだけど。凌といるとオレまで見られてるみたいで。モテる奴は大変だな」
今みんなの視線を集めてるのは俺じゃない。
俺は形だけ3年女子と付き合うことにして、速攻振られてきた。
蒼葉も「コンタクト無理だわ」とメガネに変えて、平穏な毎日に戻った。
なのに、あのいとこが赴任して来たせいで早見さんといい感じになってる。
調理実習で蒼葉と早見さんが同じ班になった。どうしてもふたりが気になっていると、早見さんが蒼葉の顔に触れた。一気に顔が赤くなる蒼葉に我慢出来なかった。持っていたボウルと泡立て器を他の奴に渡して、調理室を出て行く蒼葉を追いかけた。
少し強引なのは許して欲しい。手を引いて生徒会室へ閉じ込めて壁に追いやった。
ポケットに準備していた新しい目薬をすかさず差してやる。充血した目が痛々しい。数滴差していると蒼葉の鼻の頭が赤らんで、両目から涙がこぼれた。
「凌。どうしてずっと怒ってるの」
胸が締め付けられるように苦しい。今すぐ抱きしめたい。でもそんなことしたら、今までみたいに過ごせないかもしれない。
「凌、本当は如月先生のことが好きなの?」
いやいやいやいや、違う違う、ぜんぜん違う!
「言うな」って言われてるから言えないだけなんだ!
最初から、変なヤキモチで意地悪しないで「あんな先生好きじゃない」って言えばよかった。
もうこうなったら、全部ぶちまけて楽になりたい。
きっとアオは隠れてしてきた俺の振る舞いも、アオのことが好きだと言っても軽蔑するような奴じゃない。
「ずっと、好きだった。でも言えるわけないだろう」
もう泣きそうだ。かっこ悪いな、俺。
アオがじっと見つめてくる。
「オレもずっと凌のことが好きだったんだよ」
全身に衝撃が走った。今すぐ腕に閉じ込めて俺だけのアオにしたい。
「アオ、嫌なら避けて」
見つめ合い距離を縮めていく。
15センチ……10センチ…5センチ。
目を閉じた蒼葉の唇にそっと触れるだけのキスをした。

