俺にだけ可愛い幼馴染みの本性は、甘くて重い

「まもなく──駅前、──駅前。お出口は右側です……」

「……どうすっかな、これ」

 電車のアナウンスを右から左へ聞き流し、俺は吊り革に摑まりながら小さくぼやいた。

 正直なところ、面倒な催促をしてしまったから朝になっても返って来ないと思ってた。

 でも日付けが変わってすぐに返信してくれたらしい。
『どうしたの』

 めちゃくちゃ簡潔な文だけど、こういうところはやっぱり聖らしかった。

スマホを持ったまま寝たのに、あれから一度も起きなかったのは俺の落ち度だけど。

 もしメッセージが返ってくるまで起きてられたら、あと二回くらいは会話が続いたんだろうな。

 聖がくれたメッセージは短くて、でも返ってきたことだけが嬉しい。

 だからか、このあとどう返信したものか悩んでしまう。

『なんでもない』って送ると会話は終わるし、思ったことを全部送ったらすっきりするんだろうけど、それじゃあ聖の負担になりそうだし。

 どう返信したものか分からなくて電車に乗ってからずっと、避けられる前のやり取りを何度も読んでいた。

 一人で登校するようになって、今日で一週間になるかな。

 朝起きると聖がいないのには慣れたけど、先週までは確かに聖は俺の隣りにいた。

 あいつはいつも明るくて、俺が黙っていても色々話してくれる。

 話を聞いているだけで飽きないし、聖も楽しそうに聞かせてくれるからちょっとした眠気覚ましにもなってたっけ。

 今は聖がいないから、時間の流れがゆっくりだって余計に思うのかもな。

「ダセェな、ほんと」

 寝る前は意気込んでいたのに、いざ聖からメッセージが来たって分かると何も行動できない。

 そんな自分に八つ当たりしてる自覚はあって、一番に話を聞いてほしい相手は隣りにいないのが悔しい。

 それもこれも、頭がいつもよりすっきりしてるからかな。

 いつもなら眠くて堪らなくて、立っているのもやっとだから。

「まぁ……学校行ったら会えるし。返さなくてもいい……よな」

 聖は俺の返信を後回しにして、他の奴にはすぐに返してたみたいだし。

 既読なだけマシだろ、お前とは違ってちゃんと見たんだから。

 そう心の中で言い訳をして、スマホをポケットにしまう。

 最寄り駅に着くまであと二つ。

 本当ならもう少しスマホを見る時間はあるけど、むかむかした気持ち悪さを誤魔化すみたいに、俺は窓に視線を向けた。