「──痛っ、てぇ……!」
ふと頭に衝撃が走って、俺は涙目になりながらうっすらと目を開けた。
痛みに顔を顰めながら何度か瞬きをすると、部屋の真ん中に置いている丸テーブルの細い脚が十センチ先にあった。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったみたいで、そのまま真横に倒れたらしい。
我ながらガキっぽくて嫌になる。
頭を抑えつつ窓の方に目を向けると、外はすっかり暗くなっていた。
「……もう夜か」
手に持っていたスマホを開くと、すでに十九時を回っている。
数件通知が来ていたけど聖からのメッセージはなくて、ちょっとだけ気持ちが沈む。
「ま、まぁ夕飯食べてるか風呂入ってるかもだし。……多分」
ひどく頼りなくて、虚しい独り言が部屋に響く。
今日、聖はバイトが無いからそのまま家に帰ってるはずだ。
つい先週までは聖と一緒に俺の家で夕飯を食べていたけど、それはもう無いから。
不安になってメッセージアプリを開いてみたけど、やっぱり未読のままで自分で首を締めてる気がした。
いっそ、こっちから送ってみるか? でもなんて言ったら……いや、そもそも迷惑じゃないか。
幼馴染みだってのに、バカみたいに遠慮した言葉しか浮かばない。
「……食べながら考えよう」
少し遅くなったけど、夕飯の準備をしないと。
今日は母さんも父さんも仕事で遅くなるみたいだから、俺一人だ。
料理のレパートリーはそんなに多くないけど、手や身体を動かしていると気分転換になるのは事実だった。
「あれ」
いそいそとリビングへ向かって冷蔵庫を開けると、卵やヨーグルト、サラダ用のレタスしか入っていなかった。
一番上の方には父さんが飲むらしいビールがあって、他には昨日の残り物の野菜炒めくらいだ。
「買いに行くの、めんどくさいな」
自転車を使えば近くのスーパーまで十分ちょっとで着くけど、目当てのものを買ったとしても料理をする体力はあんまり残らないかも。
これなら帰りに寄るんだった、もしくは学校行く前に冷蔵庫見とくんだった。
でも今更過ぎた事を考えても仕方なくて、俺はそのままキッチンの戸棚から備蓄用のカップ麺を取り出した。
ポットに水を入れて、沸騰するまでその場でぼうっと立ちながら待つ。
母さんにカップ麺食べたのがバレたら『もっと栄養摂りなさい』って怒られるだろうけど、そもそも冷蔵庫に何も無かったんだから仕方ないって開き直ろう。
でも半分は面倒くさがってる俺が悪いから、あんまり反論できないかもな。
元々口が上手い方じゃないし、嘘を吐くのが嫌いってのもあるけど。
そうこうしているうちに沸騰して、カップ麺にお湯を入れてから三分が経った。
「もうここでいいか」
行儀が悪いって分かってるけど、シンクの側で立って食べる。
「熱っ!」
時間的に深夜とは言えないけど一人だからかな、背徳感も加わっていつもより美味いかもしれない。
両親、特に母さんが帰ってくる前に食べ終えて、綺麗に片付けておかないと。
「……ごちそうさま」
スープまで飲んで完食すると、軽く手を合わせる。
聖から来てないかな、って思いながら無意識にスマホを手に取って、薄目で画面を見た。
「……ま、来てないか」
最後に画面を見てから十五分くらいしか経ってなくて、そりゃあそうだ、って一人で納得する。
そもそも何を怖がってるんだ、どんなに遅くても寝る前になったらちゃんと返してくれるのに。
「怖がってる……?」
俺が? 何を、って聖からの返信……だよな。
反射的に聖とのやり取りを見ると、やっぱり俺の『おはよう』の挨拶で止まってる。
既読も付いてなくて、というか返信が全部そっけなく感じた。
「あ、れ」
姫村とのやり取りを見たからかな、時間が経っても返してくれるけど俺に対しては塩対応というか。
避けられるようになってからは『わかった』とか、そういう相槌ばかりが目立つ。
もちろん全部が全部じゃないけど、一度気になってしまうとネガティブな感情が蒸し返されて駄目だった。
「俺のこと、嫌いになったから……」
頭に浮かんだ言葉を無意識に呟くと、がばりと素早く口元を押さえた。
「な、いや……そんな、はず」
無いとは言いきれない。
だって、お前はずっと聖に甘えてただろう。
違う、聖にも何か思うことがあったんだ。
避けてるのはちゃんと理由があって、時間が経てば聖の方から教えてくれる。
天使と悪魔が俺の中で喧嘩してるみたいで、もはや何が本当の自分の考えなのか分からない。
でもはっきりと聖を失ってしまう、離れていってしまうっていう恐怖を自覚した。
一度でもそういう事を考えてしまうと、枯れたと思っていた涙がまた目尻に滲んでいく。
もうメッセージの会話もないまま、俺達の関係は自然消滅するのか?
聖が俺を避ける理由も分からないのに?
姫村の予想していた『俺の誕生日が近いから』ってやつを、大人しく受け入れる信じる余裕はとうに無い。
「っ……」
衝動のままに、俺は思ったことを素早くメッセージ欄に打ち込んだ。
『俺何かした?』
『怒ってるなら教えてほしい』
まぁ当たり前だけどすぐには既読が付かなくて、寝る前になっても聖から返信は来なかった。
ふと頭に衝撃が走って、俺は涙目になりながらうっすらと目を開けた。
痛みに顔を顰めながら何度か瞬きをすると、部屋の真ん中に置いている丸テーブルの細い脚が十センチ先にあった。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったみたいで、そのまま真横に倒れたらしい。
我ながらガキっぽくて嫌になる。
頭を抑えつつ窓の方に目を向けると、外はすっかり暗くなっていた。
「……もう夜か」
手に持っていたスマホを開くと、すでに十九時を回っている。
数件通知が来ていたけど聖からのメッセージはなくて、ちょっとだけ気持ちが沈む。
「ま、まぁ夕飯食べてるか風呂入ってるかもだし。……多分」
ひどく頼りなくて、虚しい独り言が部屋に響く。
今日、聖はバイトが無いからそのまま家に帰ってるはずだ。
つい先週までは聖と一緒に俺の家で夕飯を食べていたけど、それはもう無いから。
不安になってメッセージアプリを開いてみたけど、やっぱり未読のままで自分で首を締めてる気がした。
いっそ、こっちから送ってみるか? でもなんて言ったら……いや、そもそも迷惑じゃないか。
幼馴染みだってのに、バカみたいに遠慮した言葉しか浮かばない。
「……食べながら考えよう」
少し遅くなったけど、夕飯の準備をしないと。
今日は母さんも父さんも仕事で遅くなるみたいだから、俺一人だ。
料理のレパートリーはそんなに多くないけど、手や身体を動かしていると気分転換になるのは事実だった。
「あれ」
いそいそとリビングへ向かって冷蔵庫を開けると、卵やヨーグルト、サラダ用のレタスしか入っていなかった。
一番上の方には父さんが飲むらしいビールがあって、他には昨日の残り物の野菜炒めくらいだ。
「買いに行くの、めんどくさいな」
自転車を使えば近くのスーパーまで十分ちょっとで着くけど、目当てのものを買ったとしても料理をする体力はあんまり残らないかも。
これなら帰りに寄るんだった、もしくは学校行く前に冷蔵庫見とくんだった。
でも今更過ぎた事を考えても仕方なくて、俺はそのままキッチンの戸棚から備蓄用のカップ麺を取り出した。
ポットに水を入れて、沸騰するまでその場でぼうっと立ちながら待つ。
母さんにカップ麺食べたのがバレたら『もっと栄養摂りなさい』って怒られるだろうけど、そもそも冷蔵庫に何も無かったんだから仕方ないって開き直ろう。
でも半分は面倒くさがってる俺が悪いから、あんまり反論できないかもな。
元々口が上手い方じゃないし、嘘を吐くのが嫌いってのもあるけど。
そうこうしているうちに沸騰して、カップ麺にお湯を入れてから三分が経った。
「もうここでいいか」
行儀が悪いって分かってるけど、シンクの側で立って食べる。
「熱っ!」
時間的に深夜とは言えないけど一人だからかな、背徳感も加わっていつもより美味いかもしれない。
両親、特に母さんが帰ってくる前に食べ終えて、綺麗に片付けておかないと。
「……ごちそうさま」
スープまで飲んで完食すると、軽く手を合わせる。
聖から来てないかな、って思いながら無意識にスマホを手に取って、薄目で画面を見た。
「……ま、来てないか」
最後に画面を見てから十五分くらいしか経ってなくて、そりゃあそうだ、って一人で納得する。
そもそも何を怖がってるんだ、どんなに遅くても寝る前になったらちゃんと返してくれるのに。
「怖がってる……?」
俺が? 何を、って聖からの返信……だよな。
反射的に聖とのやり取りを見ると、やっぱり俺の『おはよう』の挨拶で止まってる。
既読も付いてなくて、というか返信が全部そっけなく感じた。
「あ、れ」
姫村とのやり取りを見たからかな、時間が経っても返してくれるけど俺に対しては塩対応というか。
避けられるようになってからは『わかった』とか、そういう相槌ばかりが目立つ。
もちろん全部が全部じゃないけど、一度気になってしまうとネガティブな感情が蒸し返されて駄目だった。
「俺のこと、嫌いになったから……」
頭に浮かんだ言葉を無意識に呟くと、がばりと素早く口元を押さえた。
「な、いや……そんな、はず」
無いとは言いきれない。
だって、お前はずっと聖に甘えてただろう。
違う、聖にも何か思うことがあったんだ。
避けてるのはちゃんと理由があって、時間が経てば聖の方から教えてくれる。
天使と悪魔が俺の中で喧嘩してるみたいで、もはや何が本当の自分の考えなのか分からない。
でもはっきりと聖を失ってしまう、離れていってしまうっていう恐怖を自覚した。
一度でもそういう事を考えてしまうと、枯れたと思っていた涙がまた目尻に滲んでいく。
もうメッセージの会話もないまま、俺達の関係は自然消滅するのか?
聖が俺を避ける理由も分からないのに?
姫村の予想していた『俺の誕生日が近いから』ってやつを、大人しく受け入れる信じる余裕はとうに無い。
「っ……」
衝動のままに、俺は思ったことを素早くメッセージ欄に打ち込んだ。
『俺何かした?』
『怒ってるなら教えてほしい』
まぁ当たり前だけどすぐには既読が付かなくて、寝る前になっても聖から返信は来なかった。
