俺にだけ可愛い幼馴染みの本性は、甘くて重い

 ホームルームまではなんとか耐えたけど、一限目が始まってすぐに心配した神尾に付き添われて、俺は保健室に行った。

 案の定、養護教諭からは『薬飲んで一時間寝てなさい』ってちょっと怒られた。

 でも『寝不足から来るストレスかもねぇ』ってのほほんと続けられて、そんなことは俺が一番よく分かってる。

 それもこれも、聖に避けられてるかもって思ったのがそもそもの原因だろう。

 ストレスなんか、今までほとんど無かったんだけどな。

 神尾は痛みに顔を顰める俺を終始気遣ってくれて、なのに俺よりも辛そうに眉を寄せていた。

 友達思いで優しくて、困ってる人を放っておけないのは神尾の長所だと思う。

 まぁ神尾でこれだから、他の奴らにも同じかそれ以上に心配させてるんだろうな。

 こういう時、本当にいい友達に恵まれてるなと思う。

『じゃあね、ゆっくりしてね〜』

 養護教諭は会議があるからと、つい五分前に保健室を出たから今この場には俺一人だ。

「……寝るか」

 誰にともなく言ってベッドに横になると、ぼんやりと天井を見つめる。

 ああ本当に何をしてんだろうな、俺は。

 元々頭痛持ちじゃないのに、涙が出るくらいこめかみから目の奥がズキズキして、このまま死んでしまうのかって思ったくらいだ。

 ……偏頭痛っていうんだっけな、これ。

 つくづく自分の、痛みやストレス耐性の無さが嫌になる。

 はは、と無意識に乾いた笑いが漏れて、一人だからか小さな音すらもよく響く。

 その声がエコーみたいに反響して聞こえてきて、更に(むな)しさが増した気がした。

「……いちじかん、だけ」

 保健室特有のふかふかした毛布を首元まで引き寄せると、次第に身体が温かくなっていって、じんわりと瞼が重くなる。

 薬を飲んで少しマシになったからかな、無くなったと思っていた睡魔が今になって来たらしい。

 神尾からもゆっくり寝てろって言われたっけ。

 まるで聖が言ってるみたいに、あいつらしくない優しい声で。

「ひじり、きて……くれる、かな」

 脳裏に聖のいつもと変わらない笑顔が、ぱっと浮かんでは消える。

 いつもならなんてことないのに、聖とは今まで喧嘩らしい喧嘩をしてこなかったからかな。

 子供の時ならすぐに仲直り出来たと思うけど、理由を聞こうにも意図して避けてるっぽくて、もしそうだったら俺には何もできない。

 あいつが喜ぶ事をしたくても、無視されるって思ったら身体が動かなくなりそうで。

 いや……駄目だ、今は考えるのやめないと。

 睡魔と戦ってまで、急いで結論を出すのは違うだろうし。

 そっと目を閉じると、すぐに意識が遠くなっていって、俺はそのまま睡魔に身を(ゆだ)ねた。