伊織先輩の唇は、想像の何倍もやわらかくて、いくらでも欲しくなる甘さだった。
初めての生配信の最中。
曲の終わりと同時に、防音室の窓ガラスから伊織先輩の姿が見えた。
慌てて配信を止め、扉を開ける。
途中でマイクにぶつかり、パソコンが傾いたりしたけど、そんなことに構ってる暇はなかった。
最初は触れるだけのキス。
ずっと待ち焦がれていたのに、緊張で触れるのがやっとだった。
「伊織先輩、大好きです。…ずっと、大切にします」
「俺、も……。…大好き、」
──ちゅ、ちゅ…
気持ちを確認し合って、二度目のキスでようやく少し余裕ができる。
軽く押し付けて、上唇、下唇と、ゆっくり味わうように喰む。
先輩の唇の味は何度も想像した。
白状すれば、その先も、そのもっと先も、何度も何度も妄想してる。
そんなこと、先輩には口が裂けても言えないけど。
「ち、ふ…っ、」
「……」
かわいい。
かわいすぎる。
本当に、本当に先輩が、僕の恋人になってくれたなんて…、まだ夢を見ているみたい。
薄く目を開けて、愛おしい人の顔を観察する。
顔を真っ赤にして、目をぎゅっと瞑って、僕の背中で服を握っている、大好きな人。
「も、…やめっ…」
はぁ、無理だってこんなの。
想像を遥かに上回るかわいさ、それと色気。
本人は自覚無いんだろうけど。
「…無理です…、止められない、です…」
「ちょ、…んっ」
先輩の止める声ごと、唇を食べる。
かわいい声。
ふにふにで、ふわふわな唇…、いつまでもこうしていたい。
「ち…ふゆ、…っお、ねがい……」
「…っ、」
大切な人にお願いされて、理性をフル動員させ、やっと止める。
息をゴクリと飲み込み、心臓を落ち着けようと浅い呼吸を繰り返した。
伊織先輩は、顔を真っ赤にしたままそっぽを向く。
やりすぎた、かも。
「…ごめんなさい…。ちょっと、…舞い上がっちゃいました…」
許して、伊織先輩。
僕から離れないで。
心の中で願い、先輩の顎に指をかけてこちらを向かせる。
一度目が合うけど、さらに顔を赤くして目を逸らす。
「…俺、…そういうの、慣れない、から……。…少しずつ…が、いい…」
胸の真ん中が、ぎゅううっと締め付けられる。
「っ、はい。もちろんです。ゆっくり、僕たちのペースで…」
「……おう、…ありがと」
先輩が安心するように、努めて柔らかく微笑む。
安堵して、照れくさそうに笑う先輩に、また胸の奥がきゅんとする。
本当は、すぐにでも先輩を組み敷いて、その瞳に俺しか映らないようにしてしまいたい欲もある。
でも我慢。
こうやって、恋人として隣にいられる、それだけで十分幸せだから。
「伊織先輩、お腹空きませんか?よかったら、何か作ります」
「千冬のメシ!やった!」
「ふふ、ナポリタンならすぐできますけど、どうですか?」
「食う」
さりげなく手を握り、先輩を連れて作業部屋を出る。
大切な、僕の宝物。
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